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経済活性化策が奏功か?ベトナム株は買いチャンス!?

2016/12/21
投資調査部 榮 聡

トランプ氏の勝利を受けて長期金利とドルが上昇、資金の流出が懸念される新興国株式には一般的に逆風です。しかし、新興国の景況も改善傾向となっているため、ファンダメンタルズがしっかりしている国には投資のチャンスとなる可能性もありそうです。その一つとして、ベトナムに注目できるでしょう。昨年来進めた経済活性化策が、足もとで同国製造業の浮揚に繋がっているようです。また、新規上場のサイゴンビールが短期間に株価が倍増しており、国有企業のIPOにも注目できるでしょう。

図表1:注目銘柄リスト

銘柄 市場 株価(円換算値)12/20 52週高値 52週安値
(個別銘柄)
ビナミルク(ベトナム乳業)(VNM) ホーチミン 124,600ドン(650円) 156,000ドン 93,333ドン
サイゴンビール(SAB) ホーチミン 197,200ドン(1,029円) 226,300ドン 132,000ドン
マサングループ(MSN) ホーチミン 61,900ドン(323円) 80,000ドン 58,500ドン
KIDOグループ(KDC) ホーチミン 34,100ドン(178円) 41,000ドン 19,900ドン
ブルボン タイニン製糖(SBT) ホーチミン 26,700ドン(139円) 28,150ドン 15,596ドン
(ETF)
ヴァンエック ベクトル ベトナムETF(VNM) NYSE Arca 12.59ドル 15.72ドル 12.39ドル
db x トラッカーズFTSE ベトナムUCITS ETF(03087) 香港市場 164.80HKドル 196.10HKドル 157.00HKドル
  • 注:株価の円換算値は、12/20(火)終値の100ドン当たり0.5220円で換算しています。
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
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新興国からの資金流出懸念、しかし、ファンダメンタルズが良好な国には買いチャンス!?

ベトナム株式市場は、年初から力強い上昇となり7月には過去2年半のもみ合いレンジを上抜けました。その後は9月末に高値を付けて足もとまで調整気味で推移していますが、上抜けたレンジの上限は維持されています(図表2)。

トランプ氏の勝利が決まった11/8(火)から12/19(月)にかけては、0.3%の下落でした(図表3)。この間日本株は13.6%上昇、米国株は5.7%上昇していますので、多くの新興国市場同様、ドル高を受けた資金流出懸念から低調に推移しました。ただ、新興国株式の中では、年初来の上昇率が高く、11月8日以降の推移も相対的には堅調と言えるでしょう。

トランプ氏の政策による、米国長期金利の上昇とドル高は、一般的に新興国株に対して逆風です。しかし、足もとで新興国の景況感は改善歩調にあり、新興国経済の減速が目立っていた14年〜15年とは環境が異なります(図表4)。

また、来年は米国経済の浮揚が期待されますが、これは米国だけでなく新興国にも恩恵の波及が期待され、新興国株が一方的に売られるという状況ではなさそうです。

資金流出懸念で避けられている今、ファンダメンタルズがしっかりしている新興国については買いのチャンスとなる可能性がありそうです。

図表2:ベトナム株式は反落ながらもみ合いレンジの上限は維持(週足、3年)

  • 注:ベトナムVN指数によります。
  • ※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表3:大統領選挙後に差がついた先進国と新興国の株価パフォーマンス

  • 注:ベトナムはベトナムVN指数、マレーシアはKLCI指数、インドネシアはジャカルタ総合指数、タイはSET指数、フィリピンはフィリピン総合指数、中国は上海総合指数、日本は東証株価指数、米国はS&P500指数によります。
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4:新興国の経済ファンダメンタルズは14年〜15年とは違う

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
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ベトナムは製造業が好調、昨年来の施策が奏功!?

ベトナムは、そのファンダメンタルズがしっかりした新興国の一つと考えられます。

注目できるのは、ベトナムの製造業が足もとで浮揚している点です。「日経ベトナム製造業PMI」は11月に54.0と15年5月来の水準に上昇しています(図表5)。エコノミストは、「各メーカーが新規受注の大幅増加に対応するため生産を強化したことから、前月伸び悩んだ生産量は再び増加に転じた。年末にかけて製造業が力強い伸びを見せる見通しだ」とコメントしています。

また、これを裏付けるように、ベトナムの鉱工業生産のうち、「製造業の生産指数」は9月10.6%増、10月11.9%増、11月13.4%増と前年比の伸び率が加速しています。

原油の採掘など「鉱業の生産指数」が大幅に低下しているため、「鉱工業生産指数」全体では横ばいで目立ちませんが、製造業は好調です。繊維、皮革など同国で重要な輸出産業の生産が加速しており、持続性への信頼も高いと見られます。

ベトナムについては、恩恵が大きいと期待されたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が米国の離脱で不発となりそうです。しかし、昨年来以下のような経済活性化策が打ち出され、また、中国との賃金格差拡大による生産拠点のシフトも着々と進んでいると見られ(図表6)、これらが足もとの景況浮揚の背景と考えられます。

【ベトナムの経済活性化策】

[1]大河メコン川を渡る「つばさ橋」の完成(2015/4/6)
タイのバンコクからカンボジアのプノンペン、ベトナムのホーチミンを結ぶ「南部経済回廊」の開通が同国への投資を呼び込むと期待されています。

[2]原則禁じられていた外国人による不動産所有を容認(2015/7/1)
[3] 最大49%としてきた上場企業への出資制限を撤廃(2015/9/1)
法律で外資比率の定めがある業種を除いて外資が100%保有可能となりました。

図表5:製造業PMIと製造業の生産指数

  • ※BloombergデータをともにSBI証券が作成

図表6:ベトナムと中国の賃金格差(一般工職、月額)

  • 注:調査時期は16年1月。
  • ※ジェトロ公表資料をともにSBI証券が作成
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大幅高でデビューのサイゴン ビール、今後も要注目の国有企業IPO

ベトナム株式市場では、個別企業にも注目できる動きがあります。

12/6(火)に新規上場した国有企業サイゴンビール(SAB)は、IPO価格の11.0万ドンに対して12/16(金)には22.6万ドンの高値を付け、時価総額でも一躍ビナミルクに次ぐ規模となって、市場の注目を集めています。

・ベトナムのビール市場は過去5年で40%成長し、今後も高成長が見込まれていること
・ベトナムのビール市場で40%のトップシェアを保有すること
などから、同社に対する日本を含む海外ビールメーカーの関心も高いとされ、IPO価格から大幅な上昇となったようです。

ベトナムでは、最近UPCoM(未上場公開株取引市場)に上場したベトナム空港公社(ACV)、ハノイビール・アルコール飲料総公社(BHN)の2社も大幅な株価上昇となって、国有企業の上場案件への注目が高まっているようです。ベトナムのIPO市場は要注目でしょう。

サイゴン ビール上場の成功で、ベトナムの食品・飲料企業に注目が高まる可能性がありそうです。そこで今回は、食品・飲料セクターの時価総額上位5銘柄をご紹介いたします。

新興国では所得の上昇とともに加工食品、パッケージ食品のほか、ビールやお菓子など嗜好的飲料・食品の消費が高まることが知られており、中長期に構造的な成長が期待できる企業群と考えられます。

ビナミルク(ベトナム乳業)(VNM) 時価総額:181兆ドン(約9,400億円)・・・乳製品のメーカーで海外にも進出し、ベトナムで唯一グローバル企業と言えます。時価総額が最大ですが、今回のサイゴン ビールの上場は同業種で規模的にも近くなり、代替資産の登場と捉えられ、株価にはマイナスに寄与したと見られます。しかし、足もとの業績動向や中長期の成長性に変化はなく、押し目買いのチャンスではないでしょうか。

サイゴン ビール(SAB) 同126兆ドン(約6,600億円)・・・IPO価格から大幅な株価上昇となり、ベトナム市場でビナミルクに次ぐ時価総額となっています。詳しくは、「新規取扱銘柄のお知らせ」をご覧ください。

マサングループ(MSN) 同46兆ドン(約2,400億円)・・・魚醤、醤油、チリソースや他の調味料、及び即席めん、即席おかゆ、インスタントコーヒー、シリアルなどの製造販売を主力事業とする企業です。ほかに、タングステン、蛍石、ビスマスなどを産出する鉱業企業およびリテール銀行に出資しています。

KIDOグループ(KDC) 同7.0兆ドン(約360億円)・・・加工食品を主力事業とする会社で、クッキー、レイヤーケーキ、クリームケーキ、ウエハース、クラッカー、スナック、キャンディー、月餅、飲料水、ジュース及びアイスクリームなど菓子とノンアルコール飲料の製造、卸売及び小売業に携わります。

ブルボン タイニン製糖 (SBT) 同6.8ドン(約350億円) ・・・精製砂糖、糖蜜およびその他の派生商品の製造・販売を行うほか、その他の砂糖メーカー向けにサトウキビ工場の管理を行い、技術サービスを提供しています。ビナミルク、マサングループ、ネスレ、ユニリーバ、コカコーラ、ヤクルト、味の素など内外の代表的食品企業を事業パートナーとしています。

  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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