米国企業の1-3月期決算は、大幅増収・増益となって好調です。業種別には、前年同期からの反動増もあって、「エネルギー」「情報技術」「素材」「金融」が増益を牽引しています。今回の注目銘柄は、筆者が5/8(月)までに「決算速報」を作成した43銘柄より、今後も株価上昇が期待できそうな5銘柄を選んでいます。
図表1:1-3月期決算の注目銘柄
銘柄 | 株価 (5/9) | 52週高値 | 52週安値 |
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アルファベット C(GOOG) | 932.17ドル | 937.50ドル | 663.28ドル |
アップル(AAPL) | 153.99ドル | 154.88ドル | 89.47ドル |
ビザ A(V) | 92.00ドル | 92.98ドル | 73.25ドル |
バンク オブ アメリカ(BAC) | 23.98ドル | 25.80ドル | 12.05ドル |
コーチ(COH) | 45.20ドル | 46.56ドル | 34.07ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
大幅増収・増益となった米国の1-3月期決算 |
米国主要企業の1-3月期決算が好調です。
S&P500指数採用企業で5/5(金)までに決算発表した411社の集計では、売上は前年同期比8.6%増、EPSは15.3%増、市場予想に対しても売上は0.8%、EPSは5.6%、それぞれ上回っています。
過去からの推移を見ると、16年2Q(4-6月期)までは停滞していましたが、16年3Q(7-9月期)に前年同期比プラスに転じ、伸び率が高まってきたことがわかります(図表2)。
今回の決算で業績の伸び率が高まった背景には、前年同期の16年1-3月期に原油価格が一時30ドル割れに突っ込み、中国経済への懸念が高まり世界的に株式が急落してEPSが7.9%減少していたため、その反動という面があります。
17年2Q(4-6月期)以降は、この反動増の要因が剥落するため、増収率・増益率とも低下する見通しです。それでも1桁台後半の増益が継続する見通しで堅調と言えるでしょう。
FactSet社の集計によると、1-3月期のEPSが予想を上回った企業は75%で、過去5年平均の68%を上回り、また、翌期(4-6月期)のEPSガイダンスが予想を下回った会社は70%(ガイダンスを発表した83社中58社)で、過去5年平均の74%を下回ったとしています。通常よりも市場予想を上回る比率が高い決算でした。
一方、17年12月期の通期EPS予想については、いまのところ引き上げられる気配は見られません。年初から130ポイント前後でほぼ横ばいとなっているため、S&P500指数の予想PERは18倍台の比較的高い水準が続き、株価の上値を抑える要因になっていると見られます。
株価の一段高には、法人税減税の実現によるEPSの上方修正が待たれるところです。
図表2:1-3月期決算の前年同期比伸び率は売上・EPSとも大幅に加速!!
- ※注:17年2Q(4-6月期)以降はBloomberg集計によるコンセンサス予想です。17年1Q(1-3月期)は5/5(金)までに発表を終えた411社の集計結果です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
業種では、「エネルギー」「情報技術」「素材」「金融」が増益を牽引 |
業種別に見て、17年1Qの増益を牽引したのは、「エネルギー」「情報技術」「素材」「金融」などで、10業種のうち9業種が増益です(図表3の左)。唯一の減益は「電気通信サービス」で、競争激化の影響が出ていると見られます。
増益を牽引した「エネルギー」「素材」は原油価格安・資源価格安からの反動、「情報技術」はドル高による目減りからの反動、「金融」は株式市場の急落からの反動、がそれぞれ増益率が高くなった要因と言えます。
一方、16年1Qの落ち込みからの反動という要素を排除するために、15年1Qの業績と比べたものが、図表3の右図です。これを見ると、2年間のEPS成長が高い業種として、「情報技術」「一般消費財・サービス」「ヘルスケア」などに注目できるでしょう。
個別銘柄で「情報技術」を牽引しているのは、アルファベット、フェイスブック、ビザ、ブロードコム、アドビシステムズなど、「一般消費財・サービス」ではアマゾンドットコム、ネットフリックス、プライスライングループなどのネット小売の企業群、「ヘルスケア」ではユナイテッドヘルスグループ、セルジーン、アッヴィ、アラガンなどです。
一方、ここ2年の利益成長がマイナスになっている「金融」「資本財・サービス」は、トランプ政権の政策実現が近づく局面では注目できるでしょう。
また、今回の決算では、米国内の需要よりも海外需要が伸びて業績を改善した企業が多い印象です。企業の売上を地域別に集計した客観的なデータはありませんが、代表的なケースとしてスリーエムがあげられます。
図表4は同社の地域別売上の伸び率を16年10-12月期と17年1-3月期で比較したものですが、大きく改善したのは「アジア・太平洋」と「欧州・中東・アフリカ」で、米国はほぼ横ばいにとどまっています。
米国はトランプ大統領の登場で、企業も消費者も心理面は大幅に改善しましたが、実際の需要にはまだ結びついていないというのが実態のようです。その分、トランプ政権の政策実現により、今後改善する期待があるとも言えるでしょう。
図表3:増益を牽引する「エネルギー」「情報技術」「素材」「金融」
- 注:「エネルギー」は16年1Qに赤字転換して増益率が計算できないため、図中に含めていませんが増益への貢献度は最も大きくなっています。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4:スリーエムの地域別売上を見ると、アジアと欧州が大きく改善
- 注:売上の伸び率は現地通貨ベースで、為替の影響は排除されています。
- ※スリーエムの決算リリースをもとにSBI証券が作成
「決算速報」を作成した銘柄で目を引くのはコレ!? |
今回注目銘柄をピックアップするにあたり、筆者が5/8(月)までに「決算速報」を作成した43銘柄(当社顧客の保有人数上位50銘柄について作成しています)より、今後も株価の上昇が期待できると考えられる5銘柄を選びご紹介いたします。
事業が順調に拡大して株価評価に割安感が残るアルファベット C(GOOG)、9月発売が噂される「iPhone8」への期待が高まるアップル(AAPL)、市場予想を大きく上回る決算を発表して欧州事業の統合が順調に進むビザ A(V)、金利上昇と金融規制緩和からの恩恵が期待されるバンク オブ アメリカ(BAC)、ブランド価値の再構築が成果をあげつつあり、同業のケイトスペード買収が注目されるコーチ(COH)です。
尚、決算速報については、17年4/20(木)以降に掲載した「アメリカNOW!今週の5銘柄」および「アメリカNOW! フラッシュ」をご覧ください。
銘柄名 |
株価(5/8) |
934.30ドル |
予想PER(倍) |
22.4 |
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ポイント |
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銘柄名 |
株価(5/8) |
153.01ドル |
予想PER(倍) |
17.1 |
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ポイント |
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銘柄名 |
株価(5/8) |
91.92ドル |
予想PER(倍) |
27.4 |
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ポイント |
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銘柄名 |
株価(5/8) |
23.96ドル |
予想PER(倍) |
13.2 |
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ポイント |
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銘柄名 |
株価(5/8) |
44.71ドル |
予想PER(倍) |
18.8 |
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ポイント |
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- ※注目銘柄(5銘柄)の株価週足チャートは、当社のチャートツールを用いて作成(2017/5/8時点)。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。