今年も残り2ヵ月となったところで、年初来および過去3ヵ月の株価好調業種、株価好調銘柄を確認してみました。業種では、ソフトウェア・サービス、半導体・同製造装置、テクノロジー・ハード・機器などが好調、個別銘柄では、歯列矯正システムのアラインテクノロジーが年初来の上昇率トップでした。両期間ともにパフォーマンス上位で、物色が継続しているとみられる銘柄をご紹介いたします。
図表1:注目銘柄
銘柄 | 株価(10/31) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
アライン テクノロジー(ALGN) | 238.98ドル | 243.27ドル | 83.77ドル |
ペイパル ホールディングス(PYPL) | 72.56ドル | 72.74ドル | 38.06ドル |
アドビ システムズ(ADBE) | 175.16ドル | 177.58ドル | 98.00ドル |
ケイデンス デザイン システムズ(CDNS) | 43.16ドル | 43.23ドル | 24.15ドル |
FMC(FMC) | 92.86ドル | 95.08ドル | 45.91ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
年初来、過去3ヵ月の株価好調業種は? |
年初来、米国株式は15%上昇と好調ですが、どんな業種が牽引しているでしょうか?年初来および過去3ヵ月の業種指数騰落率を確認してみましょう(図表2)。
大きな傾向としては、テクノロジー関連の企業が好調と言えるでしょう。年初に期待が高まったトランプ政権の経済政策の実現が遅れたことから、独自に成長要因をもつ企業が評価されたと言えそうです。
また、年初来と過去3ヵ月を比べると、年初来で好調な業種は過去3ヵ月でも好調な傾向があり、物色傾向は大きくは変わっていないと言えそうです。好調業種について、状況をコメントしています。
〇年初来、過去3ヵ月とも上昇が目立つ業種
ソフトウェア・サービス(時価総額上位銘柄:アルファベット、マイクロソフト、フェイスブック)
世界経済の成長率が低水準となる中でも(リーマンショック以前に比べて)、インターネット市場は高成長が続いていることから、ソフトウェア・サービスの株価好調が続いています。マイクロソフトは、クラウドやソフトウェアの「オフィス」売上が好調の一方、携帯電話などこれまで業績の足を引っ張っていた事業がなくなって、株価は上昇基調が続いています。フェイスブックは今年売上成長が減速する見込みですが、四半期決算は市場予想を上回る推移が続いて株価は順調に上昇しています。一方、アルファベットについては、欧州で独禁法違反の罰金を受けて、さらに調査が継続していることから、物色はやや抑制されているとみられます。
半導体・同製造装置(時価総額上位銘柄:インテル、エヌビディア、ブロードコム)
AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、インターネットTVなど新しい技術の波が到来していますが、いずれも半導体の需要を拡大するものと考えられ、半導体の需要サイクルは通常のサイクルを超えて成長する「スーパーサイクル」に入っている可能性が高いとみられます。さらに、9/27(水)にマイクロンテクノロジーが「18年は健全なメモリー市場を想定している」、アプライドマテリアルズは「20年の半導体製造装置市場も大きな落ち込みを想定していない」と述べたことから、業種全体に物色が広がっています。また、これまで株価の出遅れが目立っていたインテルの株価が動意付いている点に注目できるでしょう。
テクノロジー・ハード・機器(時価総額上位銘柄:アップル、シスコ システムズ、HP インク)
時価総額が圧倒的に大きく指数に影響が大きいアップルは売上が大きく伸びた「iPhone6」の反動減を抜けて増収増益に転じてきたことから、年前半は安定的に上昇しました。一方、新型iPhoneへの思惑で夏場は株価が不安定となる場面がありました。9/22(金)に発売したiPhone8の販売が低調の一方、11/3(金)に発売予定のiPhoneX(テン)の人気は非常に高いものの生産が遅れているとの報道もあり、11/2(木)の7-9月期決算発表が注目されています。HPはPCとプリンターのサプライが堅調で、株価は安定的な上昇が続いています。一方、シスコシステムズは、主力のスイッチ、ルーターなどの減収が続いており、株価は横ばい圏となっています。
〇過去3ヵ月で上昇が目立つ業種
自動車・自動車部品(時価総額上位銘柄:ゼネラル モーターズ、フォード モーター、デルファイ オートモーティブ)
年初からの米自動車販売の減速を受けて自動車メーカーの株価は低調に推移していましたが、8月末のハリケーン被害による買い替え需要によって過剰在庫が一掃されるとの期待で株価が動き始めました。その後発表された7-9月期決算はゼネラルモーターズ、フォードモーターとも市場予想を上回ったことから、株価は一段高となっています。一方、自動車部品のデルファイオートモーティブは、その事業内容から自動車の情報化、電気自動車へのシフトへの対応力が高いと考えられ、年初来上昇基調が続いています。
銀行(時価総額上位銘柄:JPモルガン チェース、バンク オブ アメリカ、ウェルズ ファーゴ)
トランプ政権の経済政策への期待が後退したことを主因に米長期金利が低下基調となったために、8月まではパフォーマンスは比較的低調でした。しかし、9月に税制改革案への期待が高まり米長期金利が上昇に転じたことを受けて、銀行セクターの株価も上昇に転じています。銀行は消費者の預金で資金を調達して、これを企業に貸し付けることで収益をあげています。貸付金利は長期金利に連動することから、長期金利の上昇は銀行収益の改善に繋がります。
図表2:米国24業種の業種指数騰落率(年初来、過去3ヵ月)
- 注:S&P500指数の業種指数(24業種)で、10/27(金)時点です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
年初来、過去3ヵ月の株価好調銘柄は? |
S&P500指数採用銘柄について、年初来の株価上昇率、過去3ヵ月の株価上昇率のランキングを、それぞれ、図表3と図表4に示しています。
年初来の上昇率トップは、歯列矯正システムを提供しているアラインテクノロジーです。年初来で2.4倍になっている上、過去3ヵ月でも2位となる36%上昇しています。
また、同様に年初来の上昇率が高く、かつ、過去3ヵ月でも2桁増以上の上昇率となっているものについては、物色の動きが年初来継続していると考えられ、特に注目できるでしょう。
今回はこの中からテクノロジーをもつ企業を中心に、5銘柄を注目銘柄として次節でご紹介いたします。
図表3:年初来騰落率上位20(S&P500指数採用)
コード |
銘柄名 |
年初来 |
過去 |
株価 |
事業概要/株価上昇要因 |
---|---|---|---|---|---|
ALGN |
アライン・テクノロジー |
145.4 |
36.3 |
235.94 |
透明で目立ちにくいマウスピース型の歯列矯正システムを提供する企業で、世界的に採用が広がっている。 |
NRG |
NRGエナジー |
106.7 |
0.7 |
25.34 |
電力企業。7月12日に発表した、最大40億ドルにおよぶ資産売却と債務削減計画が好感されて株価が上昇した。 |
VRTX |
バーテックス・ファーマシューティカルズ |
103.8 |
-2.6 |
150.11 |
医薬品メーカー。欧米白人に多い嚢胞性線維症の治療薬の「Orkambi」と「Kalydeco」で成長している。 |
LRCX |
ラムリサーチ |
96.7 |
28.7 |
208.00 |
半導体製造装置で大手の一角。AI、IoTなどを支える半導体市場の拡大から、製造装置への需要が拡大している。 |
NVDA |
エヌビディア |
89.1 |
22.8 |
201.86 |
GPUを主力とする半導体メーカー。人工知能、自動運転用システム向けに中期的な需要拡大が期待されている。 |
MU |
マイクロン・テクノロジー |
86.4 |
39.5 |
40.85 |
DRAMを中心にフラッシュメモリーも手掛ける半導体メモリー専業。爆発的なデータ量拡大を背景に需要が拡大している。 |
PYPL |
ペイパル・ホールディングス |
80.0 |
20.0 |
71.06 |
全般的な電子決済市場の拡大に加え、個人間送金のスマホアプリ「Venmo」が成長を牽引している。 |
ATVI |
アクティビジョン・ブリザード |
77.6 |
4.4 |
64.14 |
ゲームメーカーで、米国で進展するゲームの「eスポーツ」化から恩恵を受けているとみられる。 |
ISRG |
インテューイティブ・サージカル |
76.8 |
19.1 |
373.78 |
手術支援ロボットの「ダヴィンチ」を展開している企業で、同社製品への需要が世界的に拡大している。 |
AMAT |
アプライド・マテリアルズ |
75.7 |
25.3 |
56.69 |
世界最大の半導体製造装置メーカー。AI、IoTなどを支える半導体市場の拡大から、製造装置への需要が拡大している。 |
RHT |
レッド・ハット |
73.3 |
22.6 |
120.77 |
LinuxOSなどオープンソースソフトウェアを展開、アマゾン、IBMなど大手クラウドサービスプロバイダとの提携で業績を伸ばしている。 |
ADBE |
アドビシステムズ |
72.2 |
20.9 |
177.33 |
画像処理・文書編集システムの世界的企業。インターネットの広がり、コンテンツの高度化から、同社製品への需要拡大が続いている。 |
CDNS |
ケイデンス・デザイン・システムズ |
70.8 |
16.4 |
43.08 |
電子機器や半導体の設計ツールを提供する企業。半導体業界の盛り上がりを受けて成長が高まっているとみられる。 |
CNC |
センティーン |
67.1 |
14.2 |
94.41 |
メディケイド(米国の公的医療保険制度)とメディケイド関連プラグラムを提供する企業で、展開地域の拡大によって成長している。 |
ADSK |
オートデスク |
67.0 |
10.8 |
123.58 |
CAD(コンピュータ支援設計)のメーカー。世界的な景気回復によって製品への需要が拡大しているとみられる。 |
WYNN |
ウィン・リゾーツ |
65.5 |
11.3 |
143.15 |
ラスベガスとマカオでカジノリゾートを運営する。マカオで昨年オープンした「Wynn Palace」が成長を牽引する。 |
BA |
ボーイング |
64.7 |
6.3 |
256.46 |
17年12月期は生産性改善によって利益が回復、ユーロ安の修正により、欧州のエアバスに対する競争力低下懸念も後退。 |
ILMN |
イルミナ |
64.0 |
20.1 |
210.04 |
遺伝子の解析を行う機械であるシーケンサーのメーカー。17年4-6月期決算が市場予想を上回り、業績成長が回復しつつある。 |
PHM |
パルトグループ |
63.6 |
23.5 |
30.07 |
住宅建設大手の一角。住宅建設市場が堅調に推移する中、低いPERに修正の動きがあるとみられる。 |
FMC |
FMC |
63.6 |
20.7 |
92.51 |
化学メーカーで、EVシフトで需要拡大のリチウムイオン電池に使用されるリチウムを生産している。 |
- 注:S&P500指数採用企業で、10/27(金)時点です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4:過去3ヵ月騰落率上位20(S&P500指数採用)
コード |
銘柄名 |
過去 |
年初来 |
株価 |
事業概要/株価上昇要因 |
---|---|---|---|---|---|
MU |
マイクロン・テクノロジー |
39.5 |
86.4 |
40.85 |
DRAMを中心にフラッシュメモリーも手掛ける半導体メモリー専業。爆発的なデータ量拡大を背景に需要が拡大している。 |
ALGN |
アライン・テクノロジー |
36.3 |
145.4 |
235.94 |
透明で目立ちにくいマウスピース型の歯列矯正システムを提供する企業で、世界的に採用が広がっている。 |
KORS |
マイケル・コース |
34.1 |
14.1 |
49.02 |
米国のファッションブランド。既存店売上は減少ながら、4-6月期の実績、7-9月期ガイダンスとも予想を上回った。 |
ABBV |
アッウ゛ィ |
30.5 |
46.8 |
91.93 |
研究開発型バイオ医薬品企業。業界随一と言われる新薬パイプラインの充実への評価が高まっているとみられる。 |
DLTR |
ダラー・ツリー |
29.8 |
20.8 |
93.21 |
日用品を扱うディスカウントストアチェーン。17年5-7月期決算が市場予想を上回ったことから、株価の回復が続いている。 |
FLIR |
フリアーシステムズ |
29.2 |
30.3 |
47.17 |
赤外線カメラなどのセンサーシステム・メーカー。セキュリティ、監視需要の拡大により製品への需要が増加しているとみられる。 |
LRCX |
ラムリサーチ |
28.7 |
96.7 |
208.00 |
半導体製造装置で大手の一角。AI、IoTなどを支える半導体市場の拡大から、製造装置への需要が拡大している。 |
CF |
CFインダストリーズ |
28.0 |
17.9 |
37.11 |
肥料製造の企業。農産物価格の低迷から肥料業界の業況は思わしくないものの、17年4-6月期決算は市場予想を上回った。 |
INTC |
インテル |
25.7 |
22.4 |
44.40 |
半導体の世界最大手。PC販売の低調から売上の伸びは鈍いが利益は伸ばせており、割安の見直しが進みつつあるとみられる。 |
AMAT |
アプライド・マテリアルズ |
25.3 |
75.7 |
56.69 |
世界最大の半導体製造装置メーカー。AI、IoTなどを支える半導体市場の拡大から、製造装置への需要が拡大している。 |
GM |
ゼネラル・モーターズ |
24.8 |
28.1 |
44.64 |
米国最大の自動車メーカー。米自動車販売の減速を受けて減収減益ながら、市場予想を上回る業績を達成している。 |
DHI |
DRホートン |
23.6 |
62.1 |
44.30 |
住宅建設大手の一角。住宅建設市場が堅調に推移する中、低いPERに修正の動きがあるとみられる。 |
PHM |
パルトグループ |
23.5 |
63.6 |
30.07 |
住宅建設大手の一角。住宅建設市場が堅調に推移する中、低いPERに修正の動きがあるとみられる。 |
NVDA |
エヌビディア |
22.8 |
89.1 |
201.86 |
GPUを主力とする半導体メーカー。人工知能、自動運転用システム向けに中期的な需要拡大が期待されている。 |
RHT |
レッド・ハット |
22.6 |
73.3 |
120.77 |
LinuxOSなどオープンソースソフトウェアを展開、アマゾン、IBMなど大手クラウドサービスプロバイダとの提携で業績を伸ばしている。 |
CHRW |
C・H・ロビンソン・ワールドワイド |
22.3 |
9.0 |
79.82 |
複合輸送サービスの会社で、世界的な景気回復から今後恩恵を享受すると期待されている。 |
URI |
ユナイテッド・レンタルズ |
21.9 |
38.2 |
145.94 |
米国最大の建機レンタル企業。ハリケーン被害の復興で需要が拡大しているほか、米国のインフラ投資が動き出すと恩恵が期待される。 |
JBHT |
JBハント・トランスポート・サービシズ |
21.3 |
12.9 |
109.61 |
物流サービス企業で、米国の景気改善から恩恵を受けることが期待されている。 |
RL |
ラルフローレン |
21.1 |
0.9 |
91.09 |
アパレルメーカー。長らく業績不振が続いているが、17年5-7月期決算は業績見通しの上方修正につながった。 |
GWW |
WWグレンジャー |
20.9 |
-14.0 |
199.76 |
工具など間接材の通販事業者。米国の景気回復、米国への製造業回帰から恩恵が期待される。 |
- 注:S&P500指数採用企業で、10/27(金)時点です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
注目銘柄のご紹介 |
市場:米国(NASDAQ) | |||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
17.12予 |
14.4 |
34% |
2.98 |
57% |
3.66 |
18.12予 |
17.8 |
23% |
3.56 |
19% |
4.35 |
株価(10/30):235.57ドル |
予想PER(18.12期):54.2倍 |
||||
|
市場:米国(NASDAQ) | |||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
17.12予 |
130 |
20% |
22.8 |
63% |
1.87 |
18.12予 |
155 |
20% |
27.6 |
21% |
2.27 |
株価(10/30):71.15ドル |
予想PER(18.12期):31.3倍 |
||||
|
市場:米国(NASDAQ) | |||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
17.11予 |
71.5 |
22% |
20.9 |
79% |
4.22 |
18.11予 |
87.1 |
22% |
27.0 |
29% |
5.47 |
株価(10/30):176.03ドル |
予想PER(18.11期):32.2倍 |
||||
|
市場:米国(NASDAQ) | |||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
17.12予 |
19.4 |
7% |
3.91 |
68% |
1.40 |
18.12予 |
20.4 |
5% |
4.27 |
9% |
1.52 |
株価(10/30):42.90ドル |
予想PER(18.12期):28.2倍 |
||||
|
市場:米国(NYSE) | |||||
---|---|---|---|---|---|
決算期 |
売上高(億ドル) |
(前年比) |
純利益(億ドル) |
(前年比) |
EPS(ドル) |
17.12予 |
27.0 |
-18% |
3.20 |
-11% |
2.43 |
18.12予 |
42.8 |
59% |
6.77 |
111% |
5.01 |
株価(10/30):92.35ドル |
予想PER(18.12期):18.4倍 |
||||
|
- ※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。