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テクノロジー株の調整、「5G」関連銘柄を仕込むには良いタイミング!?

2018/11/28
投資情報部 榮 聡

テクノロジー株の調整がきつくなっていますが、2020年にかけて立ち上がる「5G(第5世代移動通信システム)」関連銘柄を仕込むには、良いタイミングとなっている可能性もありそうです。「5G」とは何か、その特徴、関連銘柄投資の考え方、注目分野と関連銘柄をご紹介いたします。

図表1:言及した主な「5G」関連銘柄

銘柄 株価(11/27) 52週高値 52週安値
ザイリンクス(XLNX) 88.89ドル 91.17ドル 62.27ドル
キーサイト テクノロジー(KEYS) 59.40ドル 70.40ドル 41.33ドル
モトローラ ソリューションズ(MSI) 129.30ドル 131.48ドル 89.18ドル
シスコ システムズ(CSCO) 46.12ドル 49.47ドル 36.50ドル
ベライゾン コミュニケーションズ(VZ) 60.65ドル 61.58ドル 46.09ドル
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
1

2020年にかけて盛り上がりが期待される「5G」関連銘柄投資

「情報技術」セクターの株価調整がきつくなっていますが、これまで同セクターの業績を牽引してきたスマホ販売が頭打ちとなり、データセンター増設の勢いが鈍り、また、フェイスブック、アルファベットなどインターネット大手が個別の問題を抱えているなどが調整の背景と考えられます。

一方、「5G」と呼ばれる第5世代移動通信システムは2020年にかけて立ち上がると見込まれ、今後「情報技術」セクターを牽引する材料として注目できるでしょう。「5G」の実現によってIoT(モノのインターネット)が本格化し、自動運転車の実現とも密接に関係しているため、業界全体への波及も大きいと期待されます。

尚、筆者が今回「5G」を取り上げようと思ったのは、11/14(水)に掲載した「不安定な米株式市場、しかし、成長企業への投資を始めるにはチャンス!?」で、スクリーニングで抽出されたザイリンクス(XLNX)について、業績好調の要因が「5G」関連事業とわかったためです。同様に「5G」が要因となって業績に変化が出ている、または、これから出てくる企業があるのではと考えました。

まず、「5G」とは何か、そして、その特徴についてご紹介いたします。

移動通信のシステムは、音声主体の「1G」、パケット通信に対応した「2G」、世界共通の方式となった「3G」を経て、現在ではLTE-Advanced等の「4G」まで実用化されています。これに続く次世代のネットワークとして注目されているのが「5G」、すなわち第5世代移動通信システムです。

「1G」から「4G」にかけて通信速度が向上した結果、データ通信量は飛躍的に拡大してきました(図表2)。「5G」でも高速化が実現して大量のデータ通信が可能となりますが、それだけでなく、「多数同時接続」「超低遅延」を実現するといった特徴が注目されます(図表3)。

「多数同時接続」は、基地局1台から同時に接続できる端末を従来に比べて飛躍的に増やすことです。これまで自宅ではPCやスマホなど数台の接続であったものが、100程度の機器やセンサーと同時に接続できるようになると言われています。

「超低遅延」は、通信ネットワークにおける遅延を極めて小さく抑えられることです。自動運転のように高い安全性が求められるものに必要な機能となります。

「4G」までは基本的に人と人とのコミュニケーションを行うためのツールとして発展してきたのに対し、「5G」はあらゆるモノ・人などが繋がるIoT時代のコミュニケーションツールとしての役割を果たすと言えるでしょう。

「5G」の国際標準仕様は「3GPP」という国際組織で策定が進められています。18年末の「リリース15」で「5G」の基本的な通信規格が設定され、19年末予定の「リリース16」でIoTなど特定のケースにフォーカスした「5G Phase2」が決まる予定です。現行のLTEを発展させたものと、新しい無線通信方式(NR:New Radio)が併存すると見込まれています。

図表4は、国ごとの「5G」の取り組み状況をまとめています。「5G」に“対応する”通信サービスは、地域限定ではありますが、米国で既に始まっています。このほか中国、韓国などが積極的で、日本や欧州などは2020年以降のサービス開始を目指しています。

図表2:米国のモバイルデータ通信量

  • 注:ペタバイトはデータ量を表す単位で、2の50乗(=1,125兆)バイトに相当します。
  • ※アメリカンタワー説明会資料(18年4月)をもとにSBI証券が作成

図表3:5G(第5世代移動通信システム)の特徴

  • ※総務省「30年版 情報通信白書」より

図表4:主要国の5Gサービス開始計画

米国

大手4社とも18年後半または19年前半でのサービス開始を発表。

中国

2018年6月の商業サービス開始を目指す。
(現時点でサービス開始は確認されていません。)

韓国

2019年に一部市場でサービス開始を計画。

日本

ドコモが2020年までのサービス開始を計画。

ドイツ

2020年の商業サービス開始を計画。

英国

EEが2022年のサービス開始を計画。

  • ※アメリカンタワー説明会資料(18年4月)をもとにSBI証券が作成
2

「5G」関連銘柄への投資の考え方

「5G」関連銘柄への投資のポイントとして、[1]業績に表面化する時期、[2]基地局の数が増える、[3]アナログ半導体の使用が増える、の3つがあげられます。

[1]については、国際標準仕様がまだ決まっておらず、サービスの本格的な立ち上がりが2020年と見込まれるため、業績に表面化する時期を意識しておく必要がありそうです。【研究開発】 → 【インフラ投資】 → 【サービス開始】 → 【応用ビジネスの展開】、と進みますが、現在は【研究開発】が盛り上がり、【インフラ投資】は立ち上がりつつある段階にあると見られ、当面はこの関連が注目できるでしょう。

[2]については、「4G」やから「5G」への移行に伴って使用する電波の周波数帯が高くなることが背景です。高い周波数により伝達できる情報量を増やすことができる一方、デメリットは電波の直進性が強くなって障害物を回り込みにくなることで、基地局の数を増やす必要があります。

このため、(1)移動通信の鉄塔を運営している会社の価値が高まる、(2)基地局の数が増えるため、そこに使用される半導体やアンテナの需要が増えることが考えられます。(1)は「5G」関連で最も恩恵が確実な投資先と考えられます。ただ、残念なことにこれらの鉄塔会社は「REIT」となっているため、新規買付の取扱いができません。このため、米国のREITに投資するETFなどが投資手段として考えられます。

[3]については、半導体大手のテキサスインスツルメンツが決算説明会で、「5Gの通信規格によって、無線通信の複雑さは増すものの、デジタルの観点からは大きな変化はない。つまり、アナログ半導体の使用構成比が高まるため、(アナログ半導体を主力とする)当社は良いポジションにあると言える。」としています。

また、アナログデバイセズの決算説明会では、「5Gシステムのイノベーションの多くは、無線のサブシステムで起こっている」としています。基幹の伝送システムには大きな変化がない一方、サブシステムに様々な変化があるようです。サブシステムの一例としては、「マッシブMIMO」があります。

これは、複数のアンテナを使ってデータの送受信を行う無線通信技術である「MIMO」を発展させたもので、多数のアンテナを使って通信速度が遅くなりがちな駅や繁華街など人が多く集まる場所でも快適なモバイル通信を実現するものです。「マッシブMIMO」は、5G時代に利用が増えると考えられますが、4Gでも効果が高いため、韓国などでは既に展開が進んでいるようです。

図表4には、10/1(月)〜11/21(水)の決算リリースまたは会社説明会資料で「5G」に言及したS&P500指数採用企業を列挙しています。一般的な事業環境として言及されたものも含まれており、関連性の薄いものもありますが、33社というのは意外に多い印象です。

次節では、このリストを中心に分野ごとに関連銘柄をあげ、「5G」にどのように関連しているかをご紹介いたします。

図表5:直近の決算説明会で「5G」に言及した企業(S&P500指数採用)

コード

銘柄名

回数

VZ

ベライゾン・コミュニケーションズ

5

JNPR

ジュニパーネットワークス

4

PWR

クアンタ・サービシーズ

4

ANSS

アンシス

3

DWDP

ダウ・デュポン

3

JEC

ジェイコブズ・エンジニアリング・グループ

3

KEYS

キーサイト・テクノロジーズ

3

QCOM

クアルコム

3

T

AT&T

3

AMT

アメリカン・タワー

2

CDNS

ケイデンス・デザイン・システムズ

2

FTNT

フォーティネット

2

QRVO

コルボ

2

SBAC

SBAコミュニケーションズ

2

ADI

アナログ・デバイセズ

1

ANET

アリスタネットワークス

1

APH

アンフェノール

1

コード

銘柄名

回数

CCI

クラウン・キャッスル・インターナショナル

1

CSCO

シスコシステムズ

1

CTL

センチュリーリンク

1

DISH

ディッシュ・ネットワーク

1

FFIV

F5ネットワークス

1

GLW

コーニング

1

HON

ハネウェルインターナショナル

1

HPQ

HP

1

INTC

インテル

1

JEF

ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループ

1

MMM

3M

1

NEM

ニューモント・マイニング

1

NTAP

ネットアップ

1

SWKS

スカイワークス・ソリューションズ

1

TXN

テキサス・インスツルメンツ

1

XLNX

ザイリンクス

1

  • 注:10/1(月)〜11/21(水)に公表された決算リリースおよび会社説明資料で「5G」に言及したS&P500指数採用企業。
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
2

注目分野と関連銘柄

半導体

ザイリンクス(XLNX)
FPGAと呼ばれる種類の半導体の世界最大手です。FPGAはfield-programmable gate arrayの略で、計算ロジックが固まっている部分は回路に作り込み、変化する可能性のある部分を「プログラマブル」にして残したもので、CPUとASICの中間的な性質をもちます。

7-9月期の売上は、通信向けが同33%増、データセンター向けが同28%増、自動車、放送、消費者向けが同17%増となって、産業、航空、防衛向けの同5%減をカバーしています。通信向けは5G(第5世代移動通信システム)の展開、データセンターは新製品の投入が背景となっているため、好調は継続する可能性が高そうです。7-9月期決算は売上が前年同期比19%増、EPSが同30%増と好調で、19年6月期の売上ガイダンスは、当初見通しから4%引き上げられました。

アナログ デバイセズ(ADI)
米国の半導体大手の一角で、アナログ半導体を主力としている企業です。産業景気の鈍化を受けて全体の売上は、5-7月期の前年同期比10%増から8-10月期の同4%増、11-1月期の予想は同1%減と伸びが鈍化する見通しです。

一方、8-10月期に売上で22%を占める通信分野は、前年同期比29%増と高い伸びが続き、これを牽引しているのが5G関連事業です。決算説明会では、「5Gシステムのイノベーションの多くは、無線のサブシステムで起こっている。周波数帯、スペース、コスト効率などに対する需要が強まっているため、ミックスシグナル、高周波、マイクロ波、パワーマネージメントなどの総合的な技術ポートフォリオを保有する当社は顧客の要求への対応力が高いだろう。」としています。

テキサスインスツルメンツ(TXN)
米国の半導体大手で、アナログ半導体(17年売上の66%)と組み込み半導体(同23%)を主力としています。7-9月期の売上は、世界的な産業景気の鈍化を受けて前年同期比4%増と4-6月期の同9%増から減速、特に組み込み半導体は同4%減に落ち込みました。

しかし、そのような中でも通信向けは、「5G」向け製品の増産が牽引して前年同期比1桁台の伸びを維持したとしています。同社CEOは、「5G製品は主要な成長機会だ」として、同分野への期待を表明しています。

クアルコム(QCOM)
無線通信分野に特化した半導体メーカーです。現在の無線通信の規格は同社が考案したCDMA(Code Division Multiple Access、符号によって通信を多重化する方法)が基礎になっており、これは5Gになっても大きくは変わりません。このため、同社は引き続きスマホなどの端末からロイヤルティ収入を得ると考えられ、5Gでも技術的に中心的な企業であり続けます。

ただ、ハードウェア事業の主力であるスマホ向けモデムチップセットの主要顧客は中国のスマホメーカーであるため、米中関係悪化の影響が非常に大きくなる可能性があって投資しにくい部分があります。

計測機器・ソフトウェア

キーサイト テクノロジー(KEYS)
電子計測器メーカーです。無線通信、航空、宇宙、防衛、半導体の幅広い市場に、電子計測機やシステム及び、関連ソフトウエア、ソフトウェア設計ツール、電子機器を提供しています。分野別の売上は、コミュニケーション・ソリューションが52%、エレクトロニック・インダストリアル・ソリューションが25%、サービス・ソリューションが12%、イクシア・ソリューション(買収したネットワークの可視化、セキュリティ技術をもつ会社の事業)が11%と、通信向けが主力です。

8-10月期の売上で34%を占めるコマーシャルコミュニケーションズ分野が5Gの研究開発向けが牽引して、売上前年同期比28%増加しています。会社は「5G関連事業が11四半期連続で2〜3倍のペースで成長している」とコメント、「5G」の研究開発は最盛期を迎えているようです。

応用システム

モトローラ ソリューションズ(MSI)
米国の通信機器メーカーです。2011年に携帯端末はモトローラ・モビリティとして分離、携帯電話の基地局事業はノキアに売却したことで、官公庁や公共機関に通信機器、セキュリティシステムを提供するほか、企業向けに通信システム構築のサービスなどを提供する企業となっています。17年の売上は、製品が59%、サービスが41%を占めます。

5Gが実現すると、企業による新たなサービスの展開が活発化すると考えられ、同社のビジネスチャンスが大きく広がる可能性が高いと期待されます。

インフラ通信機器

シスコ システムズ(CSCO)
IPベースのネットワーク製品と関連通信製品を世界的に展開する米国大手です。主要製品はLANスイッチ、サービス統合型ルータ、WANルータ、セキュリティーアプライアンス・ソフトウエア、ワイヤレスを含むネットワーク製品、クラウド化製品、オンデマンドコンテンツの視聴可能なソフトウエア「Videoscape」などを含みます。

ベライゾンコミュニケーションズやAT&T向けの無線通信インフラは手掛けていないものの、「5G」の実現によって企業の通信システムの更新が活性化したり、新しいサービス提供に関わる通信システムの構築など、同社事業も活性化すると期待されます。

ノキア ADR(NOK)
ノキアはフィンランドの通信機器メーカーです。かつては携帯端末で世界トップでしたが、端末事業は2014年に売却し、現在は無線技術を中心とする通信インフラ設備が主力となっています。「5G」のインフラ投資では活躍が期待されます。グローバルの無線インフラ市場では、スウェーデンのエリクソン、中国のファーウェイ、ZTEなどと競合しています。

2011年にモトローラ社の無線基地局事業を買収していることから、北米の売上構成比は28%(17年12月期)を占め、「5G」に最も積極的な米国での恩恵が期待されます。

通信サービス

ベライゾン コミュニケーションズ(VZ)
AT&Tとともに米国で最大級の通信サービス企業で、北米のワイヤレス収入シェアは31%でトップを占めます。「5G Home」と呼ばれる、家庭限定の5Gサービスを10月からヒューストン、インディアナポリス、ロサンゼルス、サクラメントの一部地域で提供しています。

「5G Home」は世界初の商用5Gサービスで、ネットワークの平均速度は約300メガビット毎秒(Mbps)、ピーク速度は約1ギガビット毎秒(Gbps)とされます。ただ、同サービスは家庭内に限定されるため、本当の意味での次世代移動通信サービスとは言えません。

AT&T(T)
米国の大手通信サービス企業です。5Gに関しては、16年から複数都市でトライアルを完了しており、18年中に米国12都市の一部地域でサービスを開始、19年前半に7都市の追加を予定しています。

また、同社は警察、消防、救急医療サービスなどが使用する公的な無線ブロードバンド網「FirstNet」の構築を17年から進めているところで、これが将来的に同社の5Gネットワークの基礎になることも期待されています。

無線通信の鉄塔会社

アメリカン タワー REIT(AMT)およびSBA コミュニケーションズ REIT(SBAC)
米国には無線通信に使われる鉄塔を所有する独立企業がREIT(不動産投資信託)として上場しています。無線通信タワー、屋上など無線通信用アンテナを支える構造物を所有、運営し、通信サービス企業にアンテナ空間のリースを行っています。

5Gでは電波の指向性が強くなるため多数のアンテナを設置する必要があり、鉄塔企業の重要性が増して事業の価値が上昇、5Gの関連投資では最も恩恵が期待できる分野と考えられます。

ただ、米国のREITは投信法上「外国投資信託」に分類されて、個別に金融庁への届出がないものについては新規の買い付けができなくなっています。

  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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