米中貿易摩擦の長期化が懸念される中、影響を受けにくいソフトウェア銘柄に対する物色が強まっていますが、その一種と言えるゲームソフトウェアにも注目できるでしょう。グーグルによるクラウドゲーム「Stadia」の構想も発表され、年後半から来年にかけてゲーム企業への注目が高まると考えられます。そこで米国市場に上場する米中大手6社をご紹介いたします。
図表1:言及した銘柄
銘柄 | 株価(7/9) | 52週高値 | 52週安値 |
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ジンガ A(ZNGA) | 6.22ドル | 6.55ドル | 3.32ドル |
エレクトロニック アーツ(EA) | 92.05ドル | 151.26ドル | 73.91ドル |
網易(ネットイーズ) ADR(NTES) | 257.55ドル | 289.69ドル | 184.60ドル |
ビリビリ ADR(BILI) | 16.60ドル | 21.50ドル | 9.09ドル |
テイクツー インタラクティブ ソフトウエア(TTWO) | 115.09ドル | 139.91ドル | 84.41ドル |
アクティビジョン ブリザード(ATVI) | 46.37ドル | 84.68ドル | 39.85ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
米中貿易摩擦の長期化が懸念される中、株式市場の物色は摩擦から影響を受ける銘柄を避ける一方、ソフトウェア銘柄などそこから遠い銘柄に資金が回っていると見られ、S&P500の「ソフトウェア・サービス指数」は年初来32.5%の上昇と24業種中トップのパフォーマンス(S&P500指数は18.7%の上昇)をあげています。
ビデオゲームは業種としては「メディア」に分類されますがソフトウェアの一種と言え、ソフトウェア銘柄が買われているのと同様の観点から注目できるでしょう。
ビデオゲームの米国上場5社の平均パフォーマンスを見ると、18年はS&P500指数にアンダーパフォームしたものの、19年は市場並みに戻りつつあるように見えます(図表2)。
昨年は中国のゲーム規制強化や未上場企業が提供する「フォートナイト」のヒットで上場企業にとっての事業環境は厳しめでした。しかし、中国の規制の影響は徐々に緩和しつつあるほか、「フォートナイト」の影響も一巡すると想定されます。
さらに、6月に発表されたグーグルのクラウドゲーム「Stadia」は、ビデオゲームの利用を手軽にするもので、市場の拡大に繋がる可能性が高いと見られます。年後半から来年にかけてゲーム業界に対する市場の注目が高まると期待できそうです。
以下、ゲーム業界を動かしている上記の重要トピックについて、それぞれ簡単にご紹介いたします。
グーグルのクラウドゲーム「Stadia」
アルファベット A(GOOGL)の子会社であるグーグルは、19年6月にゲーム・ストリーミング・サービスの「Stadia」の構想を発表、ゲーム業界の革命になる可能性が注目されています。
ゲームのストリーミングは、負荷が高い処理をクラウドに任せることで、専用のゲーム端末がなくとも気軽にクオリティの高いゲームが楽しめるようになることを意味します。
従来からあるサービスであるものの、世界中にデータセンターを配置して、Youtubeとの連携が可能なアルファベットだからできる事業と考えられます。
「Stadia」は19年11月に先行提供が始まり20年に本格展開の予定です。ゲーム市場の拡大に繋がる可能性のある事業としてゲームの制作企業には恩恵が期待されるでしょう。
当初提供が予定されているタイトル31本には、米国の上場企業ではテイクツー インタラクティブ ソフトウエア(「NBA 2K」「ボーダーランズ3」)、エレクトロニックアーツ(タイトルは未定)が参加する予定です。
一方、マイクロソフト、テンセント、エレクトロニックアーツなどは独自にプラットフォームを開発しているとされ、その面では競合事業となります。
「フォートナイト(Fortnite)」のヒット
「フォートナイト」は米国のEpic Games社(未上場)が17年7月から販売・配信してるビデオゲームで、欧米では社会現象と言われるほどの大ヒットとなりました。18年4月の月間売上が2.96億ドルに達したとされ、米国の上場ゲーム企業の業績にも影響が出たと見られます。
同ゲームはアクションビルディングゲーム、サードパーソン・シューティング、バトルロイヤル、プレイヤー対モンスターゲームなどからなりますが、基本的に無料で始めることができてゲーム内課金で収益を得るのが特徴で、上場ゲーム会社のビジネスモデルを揺るがしているとの評価もあります。
Epic Gamesの株式は投資会社KKRが主導するコンソーシアムが所有していますが、いずれ株式市場に上場してくることが見込まれそうです。
中国のゲーム規制
2018年に中国では習近平国家主席が子供の近視率の高さを憂慮する談話をしたことを受けてオンラインゲームの新作やゲーム全体の本数を規制する方針が打ち出され、ゲーム認可は一時凍結されました。
昨年12月に認可作業は再開されたものの未処理案件の対応に追われたために新規の受け入れは中止され、今年4月に再開されています。
これに合わせて、麻雀やポーカーといったギャンブルゲームや死体や血だまりが出るゲームは不許可とする方針が示され、また、2017年には8561本承認されていたものが、2019年には5000本程度になると伝えられ、ゲーム業界には厳しいものとなっています。
当局による規制によって中国市場の成長性は従来よりも低下したと見られますが、認可作業がストップしたことによるマイナスの影響は徐々に小さくなると見込まれます。
図表2:米国上場ゲーム5社の株価(単純平均)
- 注:「米国上場ゲーム5社」は、アクティビジョン ブリザード、エレクトロニック アーツ、テイクツー インタラクティブ ソフトウエア、ジンガ、網易(ネットイーズ)の指数化した株価を単純平均したものです。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
ゲームで有名な海外企業と言えば、香港市場に上場するテンセント(00700)があり、同社は時価総額が4,000億ドルを超える巨大企業です。ただ、同社のゲーム関連の売上比率は18年12月期に33%まで低下しており、必ずしもゲームが主力事業でなくなっています。
そこで今回は、(1)直近期のゲーム関連売上比率が50%以上、(2)時価総額が50億ドル以上、(3)当社で取り扱いのある外国銘柄、の条件を満たす銘柄を図表3に抽出しています。
アクティビジョンブリザード、エレクトロニックアーツ、テイクツーインタラクティブソフトウエア、ジンガは米国のゲームソフト企業で、ジンガを除く3銘柄はS&P500指数にも採用されています。
一方、網易(ネットイーズ)とビリビリは中国企業ですが、投資需要が大きいと考えられる米国市場に上場しています。ちなみに、(1)、(2)の条件を満たす日本の銘柄としては、ネクソン(3659)とコナミホールディングス(9766)があります。
図表3の6銘柄を次節でご紹介いたします。経営再建を果たして業績回復軌道に乗るジンガ、有力タイトルの投入を控えるエレクトロニック アーツ、ゲーム業界での知名度向上に加えeコマースでも伸びる網易(ネットイーズ)、伸び盛りのビリビリなどが注目できるでしょう。
図表3:米国上場のゲーム関連企業(ゲーム関連売上50%以上、時価総額50億ドル以上)
銘柄(コード) | 時価総額 (億ドル) |
ゲーム関連 売上 (百万ドル) |
ゲーム関連 売上比率 (%) |
アクティビジョン ブリザード(ATVI) | 369 | 7,500 | 100 | 網易(ネットイーズ) ADR(NTES) | 335 | 6,071 | 60 | エレクトロニック アーツ(EA) | 277 | 4,950 | 100 | テイクツー インタラクティブ ソフトウエア(TTWO) | 132 | 2,668 | 100 | ジンガ A(ZNGA) | 59 | 671 | 74 | ビリビリ ADR(BILI) | 55 | 444 | 74 |
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- 注:時価総額は7/8(月)時点。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
国籍:米国 | |||||
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決算期 | 売上高(百万ドル) | (前年比) | 純利益(百万ドル) | (前年比) | EPS(ドル) |
18.12 | 907 | 5% | 24 | -35% | 0.03 |
19.12予 | 1,475 | 63% | 221 | 805% | 0.23 |
20.12予 | 1,654 | 12% | 230 | 4% | 0.27 |
株価(7/8): 6.17ドル | 予想PER(19.12期): 26.8倍 | ||||
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国籍:米国 | |||||
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決算期 | 売上高(百万ドル) | (前年比) | 純利益(百万ドル) | (前年比) | EPS(ドル) |
19.3 | 4,950 | -4% | 1,051 | 0% | 3.44 |
20.3予 | 5,151 | 4% | 1,370 | 30% | 4.53 |
21.3予 | 5,479 | 6% | 1,516 | 11% | 5.05 |
株価(7/8): 93.44ドル | 予想PER(20.3期): 20.6倍 | ||||
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国籍:中国 | |||||
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決算期 | 売上高(百万人民元) | (前年比) | 純利益(百万人民元) | (前年比) | EPS(人民元) |
18.12 | 67,156 | 24% | 6,109 | -43% | 46.93 |
19.12予 | 81,163 | 21% | 9,798 | 60% | 77.65 |
20.12予 | 95,229 | 17% | 11,466 | 17% | 89.63 |
株価(7/8): 257.79ドル | 予想PER(19.12期): 22.9倍 | ||||
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国籍:中国 | |||||
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決算期 | 売上高(百万人民元) | (前年比) | 純利益(百万人民元) | (前年比) | EPS(人民元) |
18.12 | 4,129 | 67% | -616 | - | -2.64 |
19.12予 | 6,558 | 59% | -1,130 | - | -3.03 |
20.12予 | 9,519 | 45% | -268 | - | -0.66 |
株価(7/8): 16.56ドル | 予想PER(19.12期): - 倍 | ||||
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国籍:米国 | |||||
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決算期 | 売上高(百万ドル) | (前年比) | 純利益(百万ドル) | (前年比) | EPS(ドル) |
19.3 | 2,668 | 49% | 335.8 | 80% | 2.92 |
20.3予 | 2,683 | 1% | 495.8 | 48% | 4.37 |
21.3予 | 2,793 | 4% | 547.9 | 11% | 4.75 |
株価(7/8): 114.75ドル | 予想PER(20.3期): 26.3倍 | ||||
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国籍:米国 | |||||
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決算期 | 売上高(百万ドル) | (前年比) | 純利益(百万ドル) | (前年比) | EPS(ドル) |
18.12 | 7,500 | 7% | 1,674 | 51% | 2.17 |
19.12予 | 6,371 | -15% | 1,664 | -1% | 2.16 |
20.12予 | 7,088 | 11% | 1,985 | 19% | 2.56 |
株価(7/8): 46.47ドル | 予想PER(19.12期): 21.5倍 | ||||
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- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。