COVID-19のパンデミックを背景に、年初来ヘルスケアETFへの資金流入が目立っています。これまで薬価高批判がヘルスケアセクター株価の重石となってきましたが、業界に対する世間の期待が高まっていることで、このような批判が後退する可能性がありそうです。そこで今回は、当社で取り扱うヘルスケアETFをご紹介いたします。
図表1:注目銘柄
銘柄 | 株価(6/16) | 52週高値 | 52週安値 |
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ヘルスケアセレクトセクターSPDRファンド(XLV) | 100.23ドル | 105.08ドル | 73.54ドル |
iシェアーズ NASDAQ バイオテック ETF(IBB) | 132.33ドル | 136.20ドル | 92.15ドル |
iシェアーズ グローバル ヘルスケア ETF(IXJ) | 68.64ドル | 71.09ドル | 51.07ドル |
ヴァンエック ベクトル バイオテックETF(BBH) | 157.67ドル | 164.69ドル | 112.03ドル |
DirexionデイリーS&Pバイオ株ブル3倍ETF(LABU) | 49.00ドル | 64.35ドル | 12.64ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今回はCOVID-19で注目を集めている米国市場に上場するヘルスケアのETFをご紹介いたします。
年初来で株式ETFの資金流入上位銘柄をみると、ステート・ストリートのヘルスケアセレクトセクターSPDRファンド(XLV)が38億ドルで7位に位置して、セクター別のETFでは資金流入が最も大きくなっています。
同ETFの資金流出入の推移が図表2になります。16年から昨年までは流入と流出が拮抗していましたが、20年に入って2月5.2億ドル、3月9.1億ドル、4月33.2億ドル、5月14.6億ドルと、COVID-19が株式市場の中心的材料となった2月以降は流入が定着しています。
一方、6月に入ってからは経済活動の再開に対する期待が高まり、株式市場の物色がこれまで売り込まれていた景気敏感株に向かったため、さすがに同ETFの資金も流出超に転じています。
しかし、COVID-19の治療薬やワクチンの開発がこれから最盛期を迎えること、足もとでは感染第2波への警戒が高まっていること、感染第2波が来なくとも北半球の冬にかけて再び警戒が高まるだろうことなどを考えると、引き続き注目できるセクターとみられます。
また、6/3(水)掲載の外国株式特集レポートでCOVID-19の治療薬・ワクチンを開発する企業群をご紹介しましたが、新薬の開発を理由に個別企業に投資するのはリスクが高い面もあるため、銘柄分散ができているETFで投資するというのも一法でしょう。
そこで、第2節でヘルスケアセクターのこれまでの動きを振り返り、第3節で当社取り扱いのヘルスケアETFをご紹介いたします。
図表2:ヘルスケアセレクトセクターSPDRファンド(XLV)の資金フロー
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
ヘルスケアセクターの株価パフォーマンスは図表3の「ヘルスケア業種指数の対S&P500指数相対株価」の通り、16年にアンダーパフォームした後、19年まで大勢として相場全体並みの動きが続きました。
16年のアンダーパフォームは、米大統領選挙でクリントン候補が医薬品の価格が高すぎるとの批判を展開し、当時のトランプ候補も同調したことから、薬価引き下げの懸念が台頭したことが主因です。
18年には薬価引き下げの影響が限定的として見直し買いが入る場面がありましたが、これも一時的なものとなりました。引き続き薬価引き下げに対する懸念が相場の重石になっているとみられます。
一方、COVID-19のパンデミックが発生したことで、この懸念が緩和する可能性がありそうです。現在世界の主要国でCOVID-19による経済活動休止から再開へ向かっていますが、経済活動の完全な回復には、COVID-19に対する強力な治療薬やワクチンの開発が必須と考えられます。
ヘルスケア業界に対する世間の期待がこれほど高まった局面は近年ありません。薬価の引き下げ懸念がある間は、EPSが伸びてもPERの縮小が相殺して株価が伸び悩む心配がありました。しかし、薬価高批判が後退する場合、業績の伸びが株価に素直に反映されるようになる可能性があるでしょう。
ヘルスケアセクターの業績は堅調です。図表4はS&P500指数のヘルスケア業種指数に含まれる企業の業績の推移を集計したものですが、増収増益が続いていることが確認できます。
20年はCOVID-19の影響で病院への来訪に影響が出ていることから、マイナスのインパクトが見込まれます。ただ、他の多くの業種に比べてその度合いは小さい見込みで、いまのところ20年も増収増益が維持される予想です。
世界の処方薬市場は、人口増、長寿命化、新興国での中間層の増加などを受けて2019年推定の8,770億ドルから2024年予想の1兆2,090億ドルへ、年平均成長率7%で成長すると見込まれています(EvaluatePharmaの予想)。
これは同期間に特許切れによる1,000億ドルの売上喪失を考慮したうえでの成長見通しであり、ヘルスケア企業にとって良好な事業環境が予想されています。
図表3:ヘルスケア業種指数の株価推移
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4:ヘルスケアセクターの業績推移
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
当社では以下のとおり、米国市場に上場する9つのヘルスケアETFを取り扱っています。米国の大手医薬品、バイオテクノロジーを組み入れたETF、欧州の大手医薬品も加わったグローバルのETFのほか、COVID-19のワクチン開発で注目されているモデルナを上位に組み入れたETFもあります。
ヘルスケアセレクトセクターSPDRファンド(XLV) 純資産:229.4億ドル
S&Pヘルスケア・セレクト・セクター・インデックスに連動を目指すETFで、ヘルスケアETFで最大の純資産を誇ります。上位の組入銘柄は、ジョンソン&ジョンソン10.2%、ユナイテッドヘルスグループ7.4%、メルク5.3%、ファイザー5.1%、アッヴィ4.5%です(6月12日時点)。
バンガード 米国ヘルスケア・セクターETF(VHT) 純資産:106.3億ドル
MSCI USインベスタブル・マーケット・ヘルスケア指数に連動を目指すETFです。上位の組入銘柄は、ジョンソン&ジョンソン8.6%、ユナイテッドヘルスグループ6.3%、ファイザー4.6%、メルク4.5%、アボットラボラトリーズ3.7%です(5月31日時点)
iシェアーズ NASDAQ バイオテクノロジー ETF(IBB) 純資産:86.3億ドル
ナスダック市場に上場するバイオテクノロジーと医薬品銘柄を集めたナスダックバイオテクノロジー指数に連動を目指すETFです。上位の組入銘柄は、バーテックスファーマシューティカルズ7.8%、アムジェン7.7%、ギリアドサイエンシズ7.5%、リジェネロンファーマシューティカルズ7.1%、バイオジェン5.5%です(6月12日時点)。
iシェアーズ グローバル ヘルスケア ETF(IXJ) 純資産:21.2億ドル
S&Pグローバル・ヘルスケア・セクター指数に連動を目指すETFです。上位の組入銘柄は、ジョンソン&ジョンソン6.9%、ユナイテッドヘルスケアグループ4.9%、ロッシュ4.4%、ノバルティス3.9%、メルク3.6%(6月12日時点)。
ヴァンエック ベクトル バイオテックETF(BBH) 純資産:4.5億ドル
マーケット・ベクトル米国上場バイオテク25インデックスへの連動を目指すETFです。上位の組入銘柄は、アムジェン12.1%、ギリアドサイエンシズ8.5%、モデルナ7.3%、イルミナ6.1%、リジェネロンファーマシューティカルズ5.5%です(5月31日時点)。
ヴァンエック ベクトル医薬品ETF(PPH) 純資産:2.3億ドル
マーケット・ベクトル米国上場医薬品25インデックスへの連動を目指すETFです。上位の組入銘柄は、アッヴィ5.8%、テバファーマシューティカル5.6%、アストラゼネカ5.4%、ファイザー5.3%、ノボノルディスク5.1%です。
【ブル・ベア型】
DirexionデイリーS&Pバイオ株ブル3倍ETF(LABU) 純資産:4.2億ドル
S&P バイオテクノロジー セレクト インダストリー指数の300%のパフォーマンスに連動した投資成果(手数料および経費控除前)をあげることを目指すETFです。
DirexionデイリーS&Pバイオ株ベア3倍ETF(LABD) 純資産:1.0億ドル
S&P バイオテクノロジー セレクト インダストリー指数のインバースの300%のパフォーマンスに連動した投資成果(手数料および経費控除前)をあげることを目指すETFです。
Direxion デイリー ヘルスケア株 ブル3倍 ETF(CURE) 純資産:1.2億ドル
S&Pヘルスケア セレクト セクター指数の300%のパフォーマンスに連動した投資成果(手数料および経費控除前)をあげることを目指すETFです。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。