“ITバブル崩壊後とのPER比較、インフレ率減速可能性”
- 米国株が下落に見舞われている。S&P500、ダウ平均株価、および、ナスダック上場のうち時価総額と流動性が最も高い100銘柄で構成されるナスダック100について、いずれも5/12に付けた年初来安値は、S&P500が1/4の過去最高値から20%、ダウ平均が1/5の同最高値から15.5%、ナスダック100が昨年11月の同最高値から30%の下落となった。米国で時価総額首位のアップル(AAPL)は同様に今年1/4の史上最高値から24%の下落だ。FRB(連邦準備制度理事会)が政策金利の利上げをまだ2回しか行っていないことから、更に下落するのではないかと懸念が高まりやすいのは無理もないだろう。
- 現在の株価調整局面は、サブプライムローン・ショックからリーマンショックに至るような金融システム危機に起因するものではなく、コロナ禍救済のための過剰流動性供給に伴うハイテク・グロース銘柄の買われ過ぎに起因するものと考えられる。その意味では、現在の株価のバリュエーションを「ドットコム(IT)バブル」が崩壊した2000年以降と比較することは有用と考えられる。
- ブルームバーグによれば、2000年初〜04年末までの株価収益率(PER)の最小値はS&P500が17.4倍、ダウ平均が15.7倍、ナスダック100が29.5倍である。これに対し、5/13終値での21年末の市場予想PERは、S&P500が17.7倍、ダウ平均が16.9倍、ナスダック100が22.1倍。今年度の企業業績次第とはいえ、PERの尺度からみれば現在のS&P500およびダウ平均はITバブル崩壊後の底値水準と大差なく、ナスダック100に至っては当時より割安とも言えよう。
- 足元の米国株市場は、11日発表の4月の消費者物価指数、12日発表の4月の卸売物価指数、および13日発表の4月の輸入物価指数ともに物価上昇率の減速・ピークアウトの可能性・兆しを示唆する内容だった。4月に入って原油価格の上昇が一服していた点を割り引いて見るべきとしても、S&P500やナスダック100の過去最高値からの下落率が心理的節目に達したこともあり、13日の主要株価指数・主力銘柄は軒並み反転上昇する展開となった。
- 今週は、17日に4月の小売売上高の発表のほか、17日と18日にウォルマート(WMT)、ホーム・デポ(HD)、ロウズ(LOW)、ターゲット(TGT)といった小売りやホームセンター大手の2022年2-4月期の決算発表を控える。供給制約やインフレによる利益率悪化圧力を値上げや効率化で吸収できる見通しが立てられるならば、株式相場全体の底打ちからの反転上昇を後押しする可能性もあろう。19日・20日も、半導体製造装置、サイバーセキュリティ、農業機械関連の代表的企業の決算発表を控えており、注目されよう。(笹木)
- 5/17号では、アッヴィ(ABBV)、アリゲニー・テクノロジーズ(ATI)、FMC(FMC)、PPGインダストリーズ(PPG)、ターゲット(TGT)、サーモフィッシャーサイエンティフィック(TMO)を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(5/13現在)
主要企業の決算発表予定
5月17日(火) | キーサイト・テクノロジーズ、ウォルマート、ホーム・デポ、JDドットコム |
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5月18日(水) | バス&ボディワークス、シノプシス、シスコシステムズ、TJX、ロウズ、ターゲット、アナログ・デバイセズ |
5月19日(木) | アプライド・マテリアルズ、パロアルトネットワークス、VF、ロス・ストアーズ |
5月20日(金) | ディア |
5月23日(月) | アドバンス・オート・パーツ、ノードソン、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ |
主要イベントの予定
5月17日(火) |
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5月18日(水) |
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5月19日(木) |
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5月20日(金) |
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5月21日(土)・22日(日) |
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5月23日(月) |
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- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
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- (※)決算発表の予定は5/13現在であり、変更される可能性があります。