“雇用統計、QT、ジャクソンホール、CPI、アクティビスト”
- 5日発表の7月の雇用統計は、非農業部門就業者数が前月比52万8千人と6月改定後39万8千人から伸びが拡大。失業率は前月比0.1ポイント改善の3.5%、平均時給が前年同月比5.2%増と6月の5.1%増から伸びが加速と、堅調な雇用を示した。CMEグループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウォッチ」によれば、7日現在、FRB(米連邦準備制度理事会)が次回9月のFOMCで0.75ポイントの大幅利上げを実施する確率が約7割に上った。
- 更に、9月はFOMCだけでなく、FRBによるバランスシート縮小による量的引き締め(QT)の加速が実施される予定であることも重要だろう。FRBは6月月初よりQTを開始。計画によれば、縮小の上限額は、財務省証券と政府機関債、住宅ローン担保証券(MBS)の合計で、当初は月475億ドル、9月からその2倍の月950億ドルとなる。2017年10月より開始された前回のQTでは、上限額が当初は月100億ドルで3ヵ月毎に増額されて最終的に月500億ドルだった。今回のQTは前回よりも強い引締め効果を及ぼすと考えられよう。
- 毎年8月に開催されるワイオミング州ジャクソンホールでの経済シンポジウムが今年は25-27日に開催予定だ。パウエルFRB議長が利上げとQTについてどのような見方を示すのかが大変注目される。今週は10日に7月消費者物価指数(CPI)の発表を控えており、市場では足元のガソリン価格下落を受けて6月の前年同月比9.1%上昇からの減速が予想されている。7月雇用統計が強い数字だった以上、CPIの数字が強く出た場合には、ジャクソンホール・経済シンポジウムに向けて9月以降の利上げとQTのダブルパンチで景気冷え込みが一層警戒され、波乱相場となる懸念は軽視できないだろう。
- 全体としては雇用市場が堅調であるものの、フィンテック企業を中心に人員削減に踏み切る企業が増え始めた。暗号資産のコインベース・グローバル(COIN)は6月に従業員18%削減を発表。オンライン証券のロビンフッド・マーケッツ(HOOD)は今月、従業員23%削減を発表。動画配信のネットフリックス(NFLX)も5-6月で計450人を解雇。オンライン決済のペイパル・ホールディングス(PYPL)の株式20億ドルを取得したアクティビスト(物言う株主)のエリオット・インベストメント・サービスは人員削減とオフィス閉鎖などの経費削減加速を迫っている模様だ。エリオットは、4-6月決算で最終赤字に転落した画像共有サイトのピンタレスト(PINS)の筆頭株主となったと1日に発表。これらは人手が掛かる性質の事業を行っているわけではない。業績不振に対して思い切った人員削減が逆に株価押し上げ要因になると期待される。経営への介入も視野に入れたアクティビストの役割への期待も高まろう。(笹木)
- 8/9号では、ケマーズ(CC)、ハネウェルインターナショナル(HON)、ペイパル・ホールディングス(PYPL)、スターバックス(SBUX)、シノプシス(SNPS)、ユナイテッド・セラピューティクス(UTHR)を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄の騰落率(8/5現在)
主要企業の決算発表予定
8月9日(火) | アカマイ・テクノロジーズ、ウィン・リゾーツ、ラルフローレン、ノルウェージャンクルーズライン・ホールディングス、エマソン・エレクトリック、シスコ、トランスダイム・グループ |
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8月10日(水) | ウォルト・ディズニー・カンパニー、フォックス |
8月11日(木) | レスメド、イルミナ、カーディナルヘルス |
8月12日(金) | ブロードリッジ・ファイナンシャル・ソリューションズ |
主要イベントの予定
8月9日(火) |
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8月10日(水) |
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8月11日(木) |
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8月12日(金) |
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8月13(土)-14日(日) |
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8月15日(月) |
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- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
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- (※)決算発表の予定は8/5現在であり、変更される可能性があります。