ドル指数とコモディティ・新興国株
主要国通貨に対する米ドル相場を指数化した「ドル指数」も10月中旬の113台から11/16に106台まで下落している。
21世紀初からドル指数下落に伴い際立って上昇したのは商品相場と新興国株価。商品相場全体を表す指数として世界経済の全般的商品価格動向を示す「S&P GSCIトータルリターン指数」が、新興国株価では「MSCIエマージング・マーケット指数」が代表的指数として挙げられる。ドル指数が2002年から2007年にかけて120付近から約70まで低下した際、これら2指数が急騰した。
ドル指数とコモディティ・新興国株〜ドル高一服で動意しやすい投資対象
米ダウ平均株価構成銘柄が好調
米ダウ平均株価は29日終値の昨年来騰落率が▲6.8%とS&P500の▲17.0%を上回る。構成銘柄のうち29日終値で昨年来騰落率プラスが13銘柄。上位10銘柄は、@エネルギー需要増が恩恵のシェブロン(CVX)、Aがん治療薬や新型コロナ経口治療薬が好調なメルク(MRK)、Bリウマチ・骨粗鬆症治療薬等が好調のアムジェン(AMGN)、C損害保険料率引上げ奏功のトラベラーズ(TRV)、D世界的に旺盛な建機需要のキャタピラー(CAT)、E企業の基幹業務向けメインフレームが好調なIBM(IBM))、F値上げが奏功のコカ・コーラ(KO)、Gネット販売による食料品買付が好調なウォルマート(WMT)、H公的医療保険拡大でユナイテッドヘルス・グループ(UNH)、I抗がん剤拡大で医薬品事業が好調なJ&J(JNJ)だ。
米ダウ平均株価構成銘柄が堅調〜昨年末来騰落率プラスの13銘柄に注目
インフレ抑制法と米国株投資
今年8月に米国で成立の「インフレ抑制法」は、気候変動対策に今後10年間で3690億ドル、「オバマケア」の医療保険補助金延長に係る630億ドルの支出から構成。他方、法人税の最低税率15%、処方箋薬価改革、自社株買いへ1%課税等歳入面の改革も盛り込まれた。
特にエネルギー安全保障・気候変動対策は、再生可能エネルギー、エネルギー貯蔵(蓄電池)、米国製と認められる電気自動車(EV)、グリーン水素、石油・ガスのインフラ施設からのメタン排出量削減、太陽光発電や風力発電に使われる部品の国内製造業者およびエネルギーに係る「重要鉱物資源」の国内生産者への支援などが盛り込まれた。クリーンエネルギー関連は今後の米国成長株投資にとって主役と位置付けられよう。
インフレ抑制法と米国株投資〜向こう10年を見据えた成長株投資の源泉
バークシャー・ハサウェイ増減株
著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社バーク社・ハザウェイが14日に米証券取引委員会(SEC)届け出た9月末時点の保有株リストによると、7-9月に半導体受託製造(ファウンドリ)最大手の台湾積体電路製造[TSMC](TSM)のADR株式41億USD余り購入していたこと、および石油などエネルギー銘柄を買い増していたことが明らかになった。半導体サプライチェーンの要としての競争力が株価に反映されていない面に着目した可能性があろう。
建設資材のルイジアナ・パシフィック(LPX)の新規取得や映画のパラマウント・グローバル(PARA)などは割安株投資の表れだろう。一方、金融引締めによる預貸利ざや改善で足元の業績が相対的に好調な金融株を圧縮している。
バークシャー・ハサウェイ増減株〜TSMC新規買い、生活関連の低PERも
TSMCの各種セグメント別収益
著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイは7-9月に半導体受託製造(ファウンドリ)最大手の台湾積体電路製造[TSMC](TSM)のADR株式41億USD余りを新規買付。同社の2022年7-9月期決算では、5nm(ナノメートル、ナノは1ミリの百万分の1)の半導体ウェハーの比率が28%まで上昇するなど微細化技術の競争力で他社と差を広げているほか、スマホ需要が伸び悩む中でHPC(高性能コンピュータ)やIoTといった成長分野が伸長。
地域別で中国の比率低下に対し、北米の比率上昇。同社CEOは21日、3nmの最先端品生産の新工場建設を米アリゾナ州で検討と述べた。同社ADR株はSOX指数構成銘柄だが、業界内の競争優位が株価に反映されていない面もあろう。
TSMCの各種セグメント別収益〜半導体微細化・HPC・北米重視など変化
中国原油輸入と某中銀の金買い
7日発表の中国の10月貿易統計で輸入が同0.7%減と、2020年8月以来の減少となった。その中で原油の輸入は同43.8%増と、8月の28.0%増、9月の34.1%増から伸びが加速。ゼロコロナ政策転換に向けた準備との見方のほか、今年3月にサウジアラビアが検討と報じられていた原油の人民元建て取引構想との関連の可能性も考えられよう。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると中央銀行全体で今年7-9月に399トンとこれまでの最高記録の2倍近くの金購入があった。その大半は公に名前が明かされていないものの、大量の金購入能力を持つ中銀は限られていることから買い手は中国人民銀行ではないかと噂されている。同国は金準備の変化について2019年以降は報告していない。