“VIX指数、ディフェンシブ銘柄、グローバル景気敏感株”
- 「米国ウィークリー2022年11月15日号」において、@米国株市場がグロース株を中心に上昇の戻りの度合いを試す局面であり、戻り局面のバロメーターとしてVIX指数が有効であること、A年初以降S&P500指数が上昇から反転下落した日に着目するとVIX指数が20ポイントを下回ると株価指数の上昇圧力が減衰して売り圧力に押される傾向がみられ、当面はVIX指数20ポイント割れが戻り上昇一服に向けての鍵を握ること、および、B11/24からの感謝祭のお祭りムードとその後の「祭りのあと」が心理的に戻り高値を形成しやすい面について触れた。実際には、11/30にパウエル米FRB(連邦準備制度理事会)議長が講演で「早ければ12月にも」利上げペースを縮小する可能性に言及したことを好感して主要株価指数が大きく上昇。その2日後にVIX指数が一時19.0ポイント割れまで低下したものの9日終値は22.83ポイントとなっている。VIX指数は8/12に19.12まで低下後に反転上昇した際は、9/28に34.88ポイント、10/12に34.53ポイントと上昇期間が約2ヵ月近く続いた。今年1年のようにVIX指数が20ポイント割れ〜35ポイント近辺までのレンジ推移を再び繰り返すならば、年末年始の米国株相場は弱含みとなりやすく要注意だろう。
- 米銀大手JPモルガン・チェース(JPM)のダイモンCEOが6日、「コロナ禍の間に膨らんだ家計の貯蓄がインフレと金利上昇によって浸食されて来年半ば頃には底を付き、個人消費の勢いが弱まるだろう」と述べた。また、同日にバンク・オブ・アメリカ(BAC)のモイニハンCEOは来年に米国経済が3四半期にわたって緩やかなマイナス成長が続くと予想。米FRBがタカ派からハト派にシフトしたとしても景気減速・後退と企業業績悪化懸念の高まりから、米国株市場にとって来年前半は楽観できる相場となりにくい面もあろう。業績が景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄(医薬品・バイオ、ヘルスケア、保険、生鮮食料品など)に物色が集中する可能性もあるだろう。
- 他方、海外売上比率の高い多国籍企業は今年、@20年ぶりの米ドル高、A物流・供給網の混乱に伴う部品不足、および、B世界2位の経済規模を誇る中国のゼロコロナ政策に伴う経済の落ち込みといった「三重苦」の逆風に見舞われていた。既にこれらの業績下押し要因はそれぞれ改善に向かう兆しも見られ始めている。海外売上比率の高い「グローバル景気敏感株」や「グローバル消費関連株」はセクターで売買するタイプのファンドからは米国の設備投資や個人消費の悪化懸念から一律に景気敏感、消費関連として売られやすい面がありそうだが、それは相対的に景気面で優位な海外市場の恩恵を受ける銘柄を割安に投資できる好機とみなす余地があるだろう。(笹木)
- 12/13号では、ブラウン・フォーマン(BF/B)、ダウ(DOW)、iシェアーズ・ラテンアメリカ40ETF(ILF)、ナイキ(NKE)、ノースロップ・グラマン(NOC)、エクソンモービル(XOM)を取り上げた。
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(12/9現在)
12月14日(水) | ノードソン、レナー |
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12月15日(木) | アドビ |
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12月16日(火) | アクセンチュア、ダーデン・レストランツ
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12月13日(火) | - 米FOMC(14日まで)、米アフリカ首脳会議(ワシントン、15日まで)、OPEC月報、ウクライナ支援に関する国際会議(パリ)、米下院金融委員会でFTX破綻巡る公聴会(ハイブリッド形式)
- 米CPI (11月)
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12月14日(水) | - 米FOMC声明発表・FRB議長記者会見と経済予測
- 米輸入物価指数(11月)
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12月15日(木) | - ECB政策金利発表・総裁記者会見、英中銀・スイス中銀ほか政策金利発表
- 米小売売上高(11月)、米新規失業保険申請件数(10日終了週)、米鉱工業生産(11月)、米企業在庫(10月)、対米証券投資(10月)、米ニューヨーク連銀製造業景況指数 (12月)
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12月16日(金) | - 米つなぎ予算期限
- S&Pグローバル米製造業・総合・サービス業PMI・速報値(12月)
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12月19日(月) | |
ブラウン・フォーマン(BF/B)市場:NYSE・・・2023/3/3に2023/4期3Q(11-1月)の決算発表を予定
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- 1870年にジョージ・ガーヴィン・ブラウンが設立した歴史あるウィスキー会社。ジャックダニエル(テネシー)、グレンドロナック(スコッチ)、ウッドフォードリザーブ(アメリカン)など代表的銘柄を擁する。
- 12/7発表の2023/4期2Q(8-10月)は、売上高が前年同期比10.1%増の10.94億USD、営業利益が同2.8%減の3.13億USD。ドル高の影響を除く売上高が同16%増、更に一時的要因の影響も除いた営業利益は同8%増だった。ドル高とインフレの逆風も強いブランド力を背景に需要が堅調だった。
- 通期会社計画を上方修正。ドル高と一時的要因の影響を除く調整後売上高伸び率を前期比1桁台後半(従来計画:1桁台半ば)、調整後営業利益伸び率を同1桁台後半(同:1桁台半ば)とした。熟成技術を背景とした高い参入障壁業界で高利益率を誇り、強固なブランドでインフレに伴う利益率悪化も限定されよう。積極的にブランド買収を手がけつつ前四半期比9%増配など株主還元強化。
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ダウ(DOW)市場:NYSE・・・2023/1/26に2022/12期4Q(10-12月)の決算発表を予定
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- 2017年に旧ダウ・ケミカルと旧デュポンが合併後、汎用化学部門として19年に分離独立。包装、工業インフラ、消費材が主力。農業のコルテバ(CTVA)、特殊化学のデュポン(DD)も分離独立した。
- 10/20発表の2022/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比4.9%減の141.15億USD、Non-GAAPの調整後1株当たり営業利益が同64.0%減の1.11USD。ドル高が売上高を約4ポイント押し下げた。売上構成比33%を占める欧州・中東・アフリカ・インド(EMEAI)でのエネルギー費用高騰が響いた。
- 2022/12期4Q(10-12月)会社計画は、売上高が前年同期比▲19.9-▲16.5%の115-120億USD。通期の設備投資額を従来計画比2億USD減の19億USDとしたほか、欧州のエネルギー高と迫りくる景気後退に対応し、来年度10億USDコスト圧縮計画も示した。北米以外地域の売上構成比が3Qで約62%と、ドル高反転の際の反動増が期待される。株主還元も3Qに13億USD実施と積極方針を維持。
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- 中南米における主要経済部門の流動性の高い銘柄で構成される「S&Pラテンアメリカ40指数」に連動する投資成果を目指す。代表的サンプリング方式を使用。保有銘柄ウェートは時価総額ベース。
- 12/9終値で時価総額が10.4億USD、過去1年間の分配金単価(ネット)合計は2.70699 USD。組み入れ上位時価総額6社はヴァーレADR(VALE)、イタウ・ウニバンコ・ホールディングADR(ITUB)、ブラジル石油公社ADR(PBR)、ウォルマート・デ・メヒコ(メキシコ)、グルポ・フィナンシエロ・バノルペ(メキシコ)。
- 昨年末終値から12/9終値までの騰落率(インカムゲインを除く)は、同ETFが+5.8%に対し、ダウ工業株30種平均が▲7.9%、S&P500株価指数が▲17.5%、ナスダック100が▲29.1%。主要国通貨に対する米ドル相場を指数化した「ドル指数」の9日終値は104.81ポイントと9/28年初来高値から約8.7%下落。2002年からのドル指数下落時にはコモディティとともに新興国株式の高騰が際立った。
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ナイキ(NKE)市場:NYSE・・・2022/12/20に2023/5期2Q(9-11月)の決算発表を予定
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- 1967年設立のスポーツ用アパレル世界最大手メーカー。スポーツ向けシューズ、カジュアルウェアなど開発販売を行う。ナイキ、コンバース、ハーレー、ジョーダン・ブランド他著名ブランドを擁する。
- 9/29発表の2023/5期1Q(6-8月)は、売上高が前年同期比3.6%増の126.87億USD、EPSが同19.8%減の0.93USD。売上高の内、直販ナイキ・ダイレクトが同8%増の51億USD。ドル高が増収率を約6ポイント押し下げた。粗利益率はドル高のほか運送費増や値下げが響き同2.2ポイント悪化の44.3%。
- 通期会社計画を下方修正。粗利益率を前期比2.0-2.5ポイント低下の43.5-44.0%(従来計画45.5-46.0%)とした。為替調整後の増収率は同2桁台前半の伸び率で据え置いた。米国は金融引き締めの影響で悪化懸念があるものの同社が対応に苦慮してきた港湾混雑・出荷目詰まり、中国政府のゼロコロナ政策による大中華圏の売上落ち込み、およびドル高の「三重苦」に反転の兆しが窺われる。
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- 1927年創業・1939年設立のノースロップが1994年にグラマンを買収。航空システム、防衛システム、ミッションシステム、宇宙システムの4事業セグメントを運営。軍艦メーカーとしては世界最大。
- 10/27発表の2022/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比2.9%増の89.71億USD、Non-GAAPの調整後EPSが同11.2%減の5.89USD。堅調な需要と労働不足緩和が増収に寄与。利益面で非適格年金関連有価証券や非稼働資産の損失が響いたが、営業活動キャッシュフローは同14.8%増加。
- 通期会社計画は、売上高が前期比1.5-2.6%増の362-366億USD、調整後EPSが同▲4.4-▲2.1%の24.50-25.10USD、現金収支に係る調整後フリーキャッシュフローが同▲51.0-▲41.2%の15-18億USDと従来計画を据え置いた。米空軍と同社は2日、第6世代の戦略爆撃機「B21レイダー(Raider)」を公開 。米空軍は少なくともB21レイダーを100機調達し、中国やロシアへの抑止力を強化する見通し。
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。
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- 1999年にエクソンとモービルの合併により設立された石油メジャー最大手。世界で石油とガスの探査・生産を行う上流部門、石油精製を行う下流部門のほか、化学製品の製造・販売も手掛ける。
- 10/28発表の2022/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比51.9%増の1120.70億USD、過去最高となった純利益は同2.9倍の196.60億USD。営業活動キャッシュフローは同22.3%増の244.25億USDと米主要上場企業で首位。欧州向け天然ガス販売とディーゼル燃料の需要急増が好業績に貢献。
- 同社は8日、2024年までの3年間で500億USDの自社株買いを実施すると発表 。一方、設備投資は22年の200億USDに対し、23年に230-250億USDの計画。水素や二酸化炭素の回収・貯留(CCS)といった低炭素投資は27年までに従来計画比15%増の170億USDを投資目標。バイデン大統領は株主還元より増産投資すべきとの批判を展開。更なる低炭素投資の拡大へ舵を切ることが期待される。
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- (※)決算発表の予定は12/9現在であり、変更される可能性があります。
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