“インド株ADRに注目〜投資本格化前の関門”
- 米国ウィークリー2022年11月29日号「ドル指数低下へトレンド転換想定で有望な投資対象」の中で、2002年以降のドル指数下落時に際立って上昇した資産クラスとしてコモディティ(商品)と新興国株式を取り上げた。世界新興株に係る代表的株価指数の「MSCIエマージング・マーケット指数」日次終値は昨年10月から反転上昇している。新興国市場の中でも牽引・先導役として市場の熱い注目を浴びているのがインド株だろう。
- インドは22年末で中国を抜いて人口世界一になったとの報道も出るなか、平均年齢が中国の38歳に対して28歳と若く、総人口に占める生産年齢人口の割合が上昇する「人口ボーナス」期を長期間享受できる。それに加え、IMF(国際通貨基金)の見通しで20年代後半にも名目GDPが日本とドイツを抜いて世界3位に躍り出るとされる。そのような長期見通しの下で、モディ政権は足元で「デジタル・インディア」と呼ばれるデジタル化政策を掲げ、インド版のマイナンバーカード「アドハー」を基に本人確認が容易なデジタルインフラのプラットフォームを整備。インドでは人口14億人超のうち約8億人がスマートフォンを持つことからキャッシュレス決済の拡大とともにオンラインでの買い物増加が見込まれる。また、インド政府は今月1日、23年4月〜24年3月の予算案を発表。インフラ整備が軸の資本支出を前年度当初予算比33%増としたほか、所得税の減税対象を中間層の一部にも広げる方針だ。
- ロシアのウクライナ侵攻後の経済制裁により世界経済の分断化・ブロック経済化が進んでいる。主要先進国の企業はロシアからの撤退を余儀なくされるなか、インドはロシア非難・制裁に同調していないことからロシア市場向けの売上を伸ばすことで業績を押し上げている企業もある。EU諸国は昨年12月よりロシア産原油に上限価格を設定。更に今年2/5よりロシア産の石油製品輸入も原則禁止した。ロシアから割安な原油を輸入し、インド株で時価総額首位の石油化学品メーカーであるリライアンス・インダストリーズを中心にインド国内で精製したうえで一部を欧州に輸出することで利益を得ている。
- 米中対立の地政学リスクが懸念されるなかでインドを世界戦略のために活用する企業も出始めた。アップル(AAPL)はインドへの大規模投資を表明し、関連する部品メーカーがインドに進出。台湾の鴻海精密工業も同様だ。
- モディ政権とも密接な関係があり、インド有数の民間インフラ企業グループであるアダニ・グループが株価操作や不正会計で米投資会社から告発されている。世界の投資マネーの受け皿としてインドが信用に足るのかどうかが問われる、投資本格化の前の関門という面もあろう。(笹木)
- 2/21号では、HDFC銀行(HDB)、ICICI銀行(IBN)、インフォシス(INFY)、ドクター・レディーズ・ラボラトリーズ(RDY)、サイファイ・テクノロジーズ(SIFY)、ウィプロ(WIT)を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(2/17現在)
主要企業の決算発表予定
2月21日(火) | ダイヤモンドバック・エナジー、シーザーズ・エンターテインメント、パブリック・ストレージ、キーサイト・テクノロジーズ、SBAコミュニケーションズ、コスター・グループ、パロアルト・ネットワークス、ウォルマート、モルソン・クアーズ・ビバレッジ、メドトロニック、エクスペディターズInt'lオブワシントン、ホーム・デポ、PSEG、インガソール・ランド |
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2月22日(水) | コテラ・エナジー、ルーシッド・グループ、パイオニア・ナチュラル・リソーシズ、イーベイ、モザイク、ダビータ、アンシス、ネットアップ、エッツィ、APA、エヌビディア、TJX、タルガ・リソーシズ、ガーミン、アレジオン、ナイソース、チャールズリバー・ラボラトリーズIntl |
2月23日(木) | インテュイット、エクストラ・スペース・ストレージ、ワーナーブラザース・ディスカバリー、EOGリソーシズ、セラニーズ、アライアント・エナジー、オートデスク、エジソン・インターナショナル、ライブ・ネーション・エンタテインメント、ブッキング・ホールディングス、アメリカン・タワー、CBREグループ、ニューモント、LKQ、DTEエナジー、ドミノ・ピザ、ジェニュイン・パーツ、PG&E、キューリグ・ドクターペッパー、クアンタ・サービシーズ、モデルナ、アメリカン・エレクトリック・パワー、アイアンマウンテン、テレフレックス、バス&ボディワークス |
2月24日(金) | エバジー |
2月27日(月) | オキシデンタル・ペトロリアム、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ、ユニバーサル・ヘルス・サービシズ、ONEOK、ワークデイ、ピナクル・ウエスト・キャピタル、AES、ビアトリス |
主要イベントの予定
2月21日(火) |
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2月22日(水) |
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2月23日(木) |
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2月24日(金) |
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2月27日(月) |
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- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
HDFC銀行(HDB)市場:NYSE・・・2023/4/13に2023/3期4Q(1-3月)の決算発表を予定
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ICICI銀行(IBN)市場:NYSE・・・2023/4/20に2023/3期4Q(1-3月)の決算発表を予定
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インフォシス(INFY)市場:NYSE・・2023/4/13に2023/3期4Q(1-3月)の決算発表を予定
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ドクター・レディーズ・ラボラトリーズ(RDY)市場:NYSE・・・2023/5/17に2023/3期4Q(1-3月)の決算発表を予定
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サイファイ・テクノロジーズ(SIFY)市場:NASDAQ・・・2023/4/18に2023/3期4Q(1-3月)の決算発表予定
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ウィプロ(WIT)市場:NYSE・・・2023/4/14に2023/3期4Q(1-3月)の決算発表予定
(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
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- (※)決算発表の予定は2/17現在であり、変更される可能性があります。