銀行株指数・ナスダック100と14日RSI
米国株市場は相次ぐ地銀破綻により金融株を中心に売られた一方、FRBによる流動性供給を背景とした長期金利低下を追い風に大型ハイテク株が買われた。
14日間の終値の上昇幅合計を、上昇幅と下落幅の合計で割った割合の「相対力指数(RSI)」を見ると、主な銀行株ETFが連動する指数の「S&P地銀セレクト・インダストリー・トータルリターン(TR)指数」および「金融セレクト・セクターTR指数」は終値の反発が鈍い中でRSIが20%割れから30%超えまで反発。このような逆行現象の際に終値も遅れて追随しやすく、注目されよう。
銀行株指数・ナスダック100と14日RSI〜銀行株は終値とRSIの逆行も
グローバル・マネーサプライ指数
米FRB(連邦準備制度理事会)は、昨年6月に量的引き締め(QT)を開始してバランスシートを段階的に縮小してきたなか、銀行預金流出対応のため連銀窓口貸出等を通じて民間銀行に大量の流動性を供給していることから17日時点で8.69兆ドルと1週間で約3千億ドル近く増加。これが株価上昇に繋がる期待が高まるも、パウエルFRB議長は22日のFOMC(連邦公開市場委員会)後の定例記者会見で「保有資産の削減という中核的な取り組みについていかなる変更も考えていない」と述べた。
S&P500株価指数、金先物価格を見ると、FRBのバランスシートよりも米欧中日を含む12地域のマネーサプライ(M2)合計額を表す「グローバル・マネーサプライ指数」との相関性が高い。同指数は昨年のドル高反転した昨年10月以降に増加傾向。
グローバル・マネーサプライ指数〜FRBバランスシートよりも説明力が高い
実質金利低下とグロース銘柄
米地銀のシリコンバレー銀行、シルバーゲート銀行、シグネチャーバンクの連鎖破綻により利上げ観測が後退し、預金保護のための流動性供給が求められている。そのような中で長期金利が低下し、期待インフレ率を差し引いた実質金利を表す米10年物価連動国債利回り(TIPS)も足元で低下傾向にある。実質金利低下は資金調達コスト低減に伴いグロース銘柄へのメリットが相対的に大きいとみられる。
エヌビディア(NVDA)、メタ・プラットフォームズ(META)、セールスフォース(CRM)といった人工知能(AI)関連やグロース系ハイテク銘柄も実質長期金利低下時に株価が堅調に推移している。ネットフリックス(NFLX)は1月は堅調も値下げが嫌気されて足元はやや軟調気味だ。マイクロソフト(MSFT)もAIで再評価の余地大だろう。
実質金利低下とグロース銘柄〜金融不安に伴う流動性供給加速恩恵も
エヌビディアのAI向け半導体
エヌビディア(NVDA)の22年11月-23年1月期決算はコロナ禍で買替え需要が一巡したゲーム用GPU(画像処理半導体)の在庫調整が続いたことが響き、売上高が前年同期比21%減、純利益が53%減。主力2部門はゲーム部門が同46%減収、データセンター部門が同11%増収。前四半期比ではゲーム部門が16%増収、データセンター部門が5%減収。調整後粗利益率が改善傾向だ。
データセンター部門については顧客の間で経済減速を警戒する動きが出ている一方、人工知能(AI)の演算に使う半導体には強い需要があり、同社CEOも「AIは転換点を迎えた」と指摘。チャットボットのChatGPTなどに使われる「生成AI」の活用が様々な産業で広がるとの見通しを示した。押し目買い候補銘柄となり得よう。
エヌビディアのAI向け半導体〜対話型AIのChatGPTがもたらす商機
セールスフォースは復活グロース
クラウド型ソフトウェアのセールスフォース(CRM)の22年11月-23年1月期決算は、同社が複数のアクティビストから圧力を受ける中で経営方針が従来の成長重視から収益性を最優先するものへの転換として投資家にサプライズを与えた。調整後営業利益率が過去最高の27%台(過去5年間平均18%)に上るとともに売上高および売上未計上の残存履行義務(RPO)ともに伸びが加速。更に自社株買い枠を200億USD拡大するなど、成長性、利益率、自社株買いといった投資家の主要な投資基準を全てクリアした。
同社株は21年11月の過去最高値311ドルから今年1月にかけて約60%下落。株価大幅下落を経て、利益率や効率性重視への転換により進化を遂げていいるグロース株は有望投資対象となろう。
セールスフォースは復活グロース〜成長と利益率の両立、自社株買いも
大統領選挙近づくトルコ債市場
トルコの大統領選挙が5/14に実施されることが正式決定。世界的な資産運用会社の中には、現職のエルドアン大統領が敗北すれば投資家に長く敬遠されてきたトルコ債が魅力的な投資対象となるのではないかと見込む向きもある。トルコの経常赤字が過去最大に膨らむなか、トルコ中央銀行は政策金利を2月に0.5ポイント引き下げて8.5%とした後3/23に同金利を維持。2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比55.18%上昇、前月比で3.15%上昇の一方、10年国債利回りは11%台にとどまっている。
エルドアン大統領は「低金利こそが物価安定に繋がる」という独自の理論を掲げて中銀に圧力をかけているとされる。新興国債券型EFTの投資を検討する場合には注意すべきイベントだろう。