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“焦点の銀行株決算、欧州株のETFとADRに注目”
“焦点の銀行株決算、欧州株のETFとADRに注目”
2023/4/18
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘
“焦点の銀行株決算、欧州株のETFとADRに注目”
- 14日に発表された大手商業銀行3行の2023年1-3月の決算では、預貸の利ざやに当たる純金利収入が堅調に推移。JPモルガン・チェース(JPM)が前年同期比49%増、シティ・グループ(C)が同23%増、ウエルズ・ファーゴ(WFC)が同45%増と、米FRBの金融引締めによる融資金利上昇、およびシリコンバレー銀行の破綻に伴う金融システム不安から米地銀・中小銀行の顧客が保険対象外預金を大手銀行に移行させる動きの恩恵を受けた格好だ。
- S&P500構成銘柄のうち金融商品を開発・提供する企業株式全体の動向を表す「ファイナンシャル・セレクト・セクター(トータルリターン)指数」の終値は、3/17の2990ポイントの底値から反発し4/14終値ま6.76%上昇。同指数の14日間RSI(14日間の終値前日比での上げ幅合計を、上げ幅と下げ幅の全合計数値で割った比率)では、3/13の17.79から4/14に54.57まで上昇した。RSIは一般に30%以下が「売られ過ぎ」、70%以上が「買われ過ぎ」とされる。
- 更に、3月下旬には同指数のRSIが上昇するなかで終値が下落・横ばいで推移といった「逆行現象(ダイバージェンス)」が見られた。これはテクニカル分析上の買いの好機とされており、今回も有効に機能した可能性があるだろう。同指数の日次変動率の3倍(費用控除前)に連動する投資成果を目指すETFである「ディレクション・デイリー金融3Xシェアーズ(FAS)」の終値は、4/14に3/17から19.5%上昇した。他方、米国の主要な地方銀行株で構成される「米S&P地方銀行セレクト・インダストリー・トータルリターン指数」終値は4/14に3/17を下回るなど明暗を分けることとなった。
- 米国株は当面、中小銀行から預金流出などへの金融システム不安が貸し渋りなどの融資条件厳格化に繋がるのではないか、更にそれが景気への懸念に繋がりやすいのではないかという疑心暗鬼が先立ちやすい環境が続きそうである。その場合、当ウィークリーの先週号でも述べた通り医薬品・バイオを中心としたディフェンシブ銘柄へのシフトが考えられるほか、ETFまたはADR株式を通じた欧州株へのシフトも選択肢と考えられる。ロシアからの天然ガス供給不安といったエネルギー危機からのインフレなどを背景にユーロドル相場の終値は昨年10/10の1ユーロ0.9702ドルまで下落。その後反転して今年4/13に1.1046ドルまで上昇した。これに伴って欧州株の優良銘柄で構成される代表的指数が主要米国株指数のパフォーマンスを上回る傾向が続いている。欧州中央銀行は米FRBが利上げを停止してもまだしばらくの間は金融引締めを継続するのではないかと市場では見られ、米独の長期金利格差も縮小が進んでいる。米国の外にも目を向けることが検討されよう。(笹木)
- 4/18号では、ABB(ABB)、ウィズダムツリー欧州株クオリティ配当成長株ファンド(EUDG)
、SPDRユーロ・ストックス50ETF(FEZ)
、マリオット・インターナショナル(MAR)
、ノバルティス(NVS)
、ユニリーバ(UL)
を取り上げた。
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(4/14現在)
4月18日(火) | インテュイティブサージカル、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス、オムニコム・グループ、ネットフリックス、ゴールドマン・サックス・グループ、プロロジス、ロッキード・マーチン、バンク・オブ・アメリカ、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン |
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4月19日(水) | ZBナショナル・アソシエーション、IBM、エキファックス、スチール・ダイナミクス、F5、ディスカバー・ファイナンシャル・サービシズ、キンダー・モルガン、ラムリサーチ、テスラ、クラウン・キャッスル、ラスベガス・サンズ、モルガン・スタンレー、トラベラーズ、ナスダック、ベーカー・ヒューズ、USバンコープ、シチズンズ・フィナンシャル・グループ、アボットラボラトリーズ、シンクロニー・ファイナンシャル、エレバンスヘルス、ASMLホールディング |
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4月20日(木) | シーゲート・テクノロジー・ホールディングス、WRバークレー、CSX、PPGインダストリーズ、ユニオン・パシフィック、DRホートン、ハンチントン・バンクシェアーズ、マーケットアクセス・ホールディングス、グローブライフ、プール、スナップオン、トゥルイスト・ファイナンシャル、ジェニュイン・パーツ、マーシュ・アンド・マクレナン、アメリカン・エキスプレス、キーコープ、AT&T、コメリカ、アラスカ・エア・グループ、ニューコア、フィリップ・モリス・インターナショナル、フィフス・サード・バンコープ |
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4月21日(金) | プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、リージョンズ・ファイナンシャル、シュルンベルジェ、HCAヘルスケア、フリーポート・マクモラン |
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4月24日(月) | コカ・コーラ、ワールプール、パッケージング・コープ・オブ・アメリカ、ブラウン・アンド・ブラウン、ケイデンス・デザイン・システムズ、ファースト・リパブリック・バンク、アメリプライズ・ファイナンシャル |
4月18日(火) | - G7外相会合で林外相が議長国として記者会見(長野県軽井沢町)
- 米住宅着工件数(3月)
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4月19日(水) | |
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4月20日(木) | - 米ウォラーFRB理事・クリーブランド連銀総裁・アトランタ連銀総裁が講演
- 米新規失業保険申請件数(4月15日終了週)、フィラデルフィア連銀製造業景況指数(4月)、中古住宅販売件数(3月)、景気先行指標総合指数(3月)
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4月21日(金) | - S&Pグローバル米製造業・サービス業・総合PMI・速報値(4月)
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4月24日(月) | - シカゴ連銀全米活動指数(3月)、ダラス連銀製造業活動(4月)
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ABB(ABB)市場:NYSE・・・2023/4/25に2023/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定
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- 1883年設立。スイスを拠点に電力とオートメーション分野で事業を展開。送配電や電力設備の自動化用製品を提供。電動化、モーション、プロセス自動化、ロボティック自動化などの事業を営む。
- 2/2発表の2022/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比3.4%増の78.24億USD、営業EBITA(利払い税引き償却前営業利益)が同16.0%増の11.46億USD。為替および事業売却・スピンオフ、買収の影響を除く調整後ベースで売上高が同16%増、受注高が同2%増、営業EBITAが同28%増。
- 2023/12通期会社計画は、調整後の売上高が前期比5%以上の伸び率、営業EBITAマージンが同15%以上(前期実績15.3%)。同社は現CEOの下、事業部に権限移譲して起業家精神を高める「自立分散型」経営への構造改革により営業EBITAマージンが2019年度から4.1ポイント向上。それに加え、事業ポートフォリオの継続的な見直し・入替えも長期にわたる持続的成長に貢献している。
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- 欧州市場にて配当支払を行う成長性ある企業に投資することを目的とし、高配当利回り・大型優良株で構成。ウィズダムツリー欧州株クオリティ配当成長インデックスに連動する投資成果を目指す。
- 4/14終値で時価総額71.5百万USD、過去1年間の分配金単価合計額(ネット)は0.7186USD。組入れ上位5銘柄は仏ファッションコングロマリットのLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン、スイス製薬バイオのノバルティス、スイス食品メーカーのネスレ、仏製薬・バイオのサノフィ、独通信のドイツテレコム。
- 昨年末終値から4/14終値までの騰落率(インカムゲインを除く)は、同ETFが+14.1%に対し、ダウ工業株30種平均が+2.2%、S&P500株価指数が+7.8%、ナスダック100が+19.6%。また、比較的高配当を支給する米国企業で構成される指数に連動した投資成果を目指すiシェアーズ・コア米国高配当株ETF(HDV)
は▲0.1%。当ETFはバリューとグロースの両面を兼ね備えている点に特徴。
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- ユーロ・ストックス50指数(米ドル建て)の値動きに連動する投資成果を目指す。同指数は流動性の高いユーロ圏先進11ヵ国の優良大型株50銘柄から構成された時価総額加重平均指数である。
- 4/14終値で時価総額27.4億USD、過去1年間の分配金単価合計額(ネット)は1.218214USD。組入れ上位銘柄順にオランダASMLホールディング(ASML)、仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン、仏エネルギーのトタルエナジーズ、独ソフトウェアのSAP、仏サノフィ、独テクノロジーのシーメンス他。
- 昨年末終値から4/14終値までの同ETFの騰落率(インカムゲインを除く)は+20.7%と、米国の主要株価指数を上回る。現地通貨建てで見るとユーロ・ストックス50指数は昨年末来のパフォーマンスが米ドル高ユーロ安基調だった昨年9月末頃まで米S&P500指数とほぼ連動していたのに対し、昨年10月以降の米ドル安ユーロ高への反転に伴いS&P500指数をアウトパフォームするようになった。
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- 1927年設立の世界首位ホテルチェーン。マリオットホテル、シェラトンホテル、セントレジス、ザ・リッツ・カールトン、ウェスティンなどの主要ブランドを擁する。2/14時点で世界30ブランド、8300施設。
- 2/14発表の2022/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比33.2%増の59.23億USD、非GAAPの調整後EPSが同2.3倍の1.80USD。既存チェーンホテル客室の世界販売可能客室1室当たり平均宿泊売上(RevPAR)が同29%上昇の113.83USD、追加22,589室の内6900室が他社ブランドから転換。
- 2023/12通期会社計画は、既存チェーンホテル客室に係る世界RevPAR(為替一定)が前期比6-11%増、純客室数が同4-4.5%増、調整後EPSが同8.1-18.2%増の7.23-7.91USD。22年度4Qの大中華圏におけるRevPARは前年同期比18.2%減の47.39USDにとどまり、年初以降のゼロコロナ政策終了に伴う業績への貢献が期待される。また、25年までにインドで250ホテルのオープン目標を表明。
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- 1996年にスイス拠点の製薬2社(チバガイギーとサンド)の合併で設立された医薬品・バイオテクノロジー企業。様々な疾患の幅広い領域の医薬品を提供。21年度の製薬会社世界売上高で第5位。
- 2/1発表の2022/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比126.90億USD、非GAAPのコアEPSが同8.6%増の1.52USD。コアEPSはスイスの同業ロシュに対する戦略的出資に係る議決権株式3分の1弱を昨年11月に売却した影響を除く。為替の影響を除けば売上高が同3%増、コアEPSが同23%増。
- 2023/12通期会社計画は、売上高が前期比1桁台前半〜半ば、コア営業利益が同1桁台半ばの伸び率。同社は昨年8月、後発医薬品事業部門サンドのスピンオフ(米国上場)を発表。サンドを除けばコア営業利益が同1桁台半ば〜後半の伸び率に高まる見通し。同社は希少疾患など特定分野の専門化による事業の選択集中戦略に伴い昨年夏以降に従業員の約7%と大規模削減を実施中。
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。
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- 1860年設立のイギリスの一般消費財メーカー。食品、洗剤、トイレタリー、パーソナルケア製品を世界190ヵ国以上で販売。クノール、リプトン、マグナム、ラックス、ダヴなど400超のブランドを展開。
- 2/9発表の2022/12通期は、売上高が前年同期比14.5%増の600.73億EUR、非GAAPの調整後EPSが同2.1%減の2.57EUR。調整後増収率は全体で9.0%。インフレに伴うコスト増を値上げで吸収しビューティ・ウエルビーイング、パーソナルケア、ホームケア、栄養、アイスクリームの5事業とも増収。
- 2023/12通期会社計画は、調整後増収率が前期比3-5%、利益率は上半期は縮小も下半期に改善を見込む。価格引上げについては上半期に加速も下半期に緩やかになるとの見通し。欧州では米国よりも金融引締めが長期化するとみられるなか、生活に密着した領域の製品は価格引き上げによるコスト吸収力が強いだけでなく景気に左右されにくいディフェンシブ性の発揮が期待されよう。
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- (※)決算発表の予定は4/14現在であり、変更される可能性があります。
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