23年5月「銘柄ピックアップ」を振り返る
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今年5月分の米国ウィークリー「銘柄ピックアップ」について掲載直前週末終値から8/28終値までの騰落率上位6銘柄を見ると、AI(人工知能)プラットフォームで軍事作戦立案支援まで行うパランティア・テクノロジーズ(PLTR)のほか、画像に関する生成AIで主導権を握るアドビ(ADBE)などAI関連が強い。半導体関連では、後工程受託製造のアムコー・テクノロジー(AMKR)はPERで見ても相対的に割安だ。半導体関連におけるETFの有効性も検討されよう。イートン(ETN)のような産業インフラ関連は政府の政策による下支えが見込まれる。
23年5月「銘柄ピックアップ」を振り返る〜医療機器・インフラ投資関連等
米S&P500株価指数の季節性
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米国株の代表的な株価指数であるS&P500指数について2022年12月までの過去20年間および30年間の平均月間騰落率を見ると、1月を除き4・7・10月と四半期最初の月が相対的に好調。更に8-9月が12ヵ月の中でも相対的にパフォーマンスが良くない。ただ、2023年の実績を見ると、平均では相対的によくない1月と6月が極めて好調であり、平均的な傾向と異なっている点が注目される。ただ、年間を通せば平均回帰的な動きとなる可能性もあり、その場合は平均的には堅調な10-12月のパフォーマンスが悪化する懸念もある。
日経平均株価も同様の月毎平均のデータを見ると、相対的に10月が良くない点と12月が良好な点が米S&P500指数との違いとして挙げられる。平均回帰的な動きの懸念については同様に要注意だろう。
米S&P500株価指数の季節性〜8-9月はパフォーマンス悪化傾向目立つ
バフェット氏は住宅建設株に狙い
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著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイ(BRK/B)の23年6月末保有銘柄リストによると、4-6月期に米大手住宅メーカーのDRホートン(DHI)、レナー(LEN)、NVR(NVR)の株式を新規に取得。バフェット氏は割安なバリュー銘柄への逆張り投資で有名だが、米フィラデルフィア住宅建設株指数の推移を見ると、S&P500指数やフィラデルフィア半導体株指数と比べても足元のパフォーマンスは上回り逆張りとは言えない。それでも予想PER(株価収益率)は割安水準。
住宅メーカー各社の業績好調の背景には、歴史的高水準の住宅ローン金利の高止まりの中でも中古住宅の在庫払拭で新築住宅の需要が堅調なことがある。住宅ローン金利が今後ピークアウトすれば、業績拡大の更なる加速が期待されよう。
バフェット氏は住宅建設株に狙い〜出遅れ感無くローン金利高水準だが
米長期金利は財政の影響強まる
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米国の金融動向を見ると、長期平均期待インフレ率の10年ブレークイーブン・インフレ率が2%台前半で落ち着き、複数の主要通貨に対する米ドルの強さを表す「ドル指数」も昨年9月下旬からの低下基調が続いている。ところが、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利に相当する10年物価連動国債利回りは昨年9月下旬水準を超えて2%に近付いている。本来なら実質金利上昇を受けてドル指数は上昇すべきところ、そうなっていない。変調を来たしている可能性もある。
米国債増発に伴う財政への懸念がドル安要因に作用している可能性のほか国債への資金吸い上げが民間投資を阻害する「クラウディング・アウト」、度重なる政府閉鎖が格付け機関による米国債格下げを誘発することへの懸念もあろう。
史上最高値更新のインドSENSEX〜ADRは銀行・医薬品高くIT関連出遅れ
金先物と原油先物相場の季節性
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CMX金先物およびWTI原油先物相場(どちらも期近物)について2022年12月までの過去20年間および30年間の平均月間騰落率を月毎に算出すると、金先物は1月が安定して好調のほか、夏場と年末も相対的に堅調。その一方、6月と10月のパフォーマンスは良くない。金価格と逆相関の関係が強い米ドル相場の動向に左右されやすい面も考えられる。
これに対し原油先物は年の前半が相対的に堅調な半面、年の後半のパフォーマンスが劣る傾向がみられる。一般的には気候が温暖か暑い時期のほうが外出や旅行などの移動に伴うエネルギー需要が高まりやすく、猛暑のピークから秋風が吹く、冬の寒い時期の前にかけて需要が減少しやすい面もあろう。今年はエルニーニョ現象の動向が鍵を握ろう。
金先物と原油先物相場の季節性〜原油は年後半パフォーマンス悪化傾向
米商業用不動産価格下落に注意
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シンガポール上場で米国所在のオフィス不動産に投資する不動産投資信託(REIT)であるマニュライフUSリアル・エステート・インベストメント・トラスト(MUST)は今年7月、保有物件の価値を引き下げた。それを契機に大幅に投資口価格が下落した。
米国商業用不動産の価格動向について、グリーンストリート・商業用不動産価格指数(CPPI)の中長期の推移を見ると、足元の下落率(前年同月比)は新型コロナ禍の最中だった2020年を超え、今年7月まで9ヵ月連続で同10%超の下落率となった。リーマンショック時は下落率の違いはあるものの、2008年8月から15ヵ月間連続で同10%超の下落率となっていた。テレワークの普及によってオフィスに社員が戻らないことが背景にあるとみられ、当面の改善は期待薄の面があろう。