23年6月「銘柄ピックアップ」を振り返る
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今年6月分の米国ウィークリー「銘柄ピックアップ」について掲載直前週末終値から9/25終値までの騰落率上位6銘柄を見ると、ストレージやパソコンを取り扱うデル・テクノロジーズ(DELL)が高い上昇率となった。パソコン市場が不調とされる中でもストレージの回復に加え、AI(人工知能)活用製品への期待が株価を押し上げた。連続増配50年超の「配当貴族」かつ強力な医薬品を擁するアッヴィ(ABBV)、人手不足の中でパイロット等の訓練を手掛けるCAE(CAE)も上位の上昇率となった。外部環境に左右されにくい強さを示した面もあろう。
23年6月「銘柄ピックアップ」を振り返る〜デル・テクノロジーズが好調
S&P500構成銘柄でディフェンシブ
米S&P500指数の年初来騰落率上位銘柄を見ると上位3銘柄(9/13終値)のエヌビディア(NVDA)、メタ・プラットフォームズ(META)、テスラ(TSLA)は2022年の年間騰落率で▲51〜▲65%でいずれも下位5%以内だった。金融引締めや利上げ停止見通しなど外部環境に大きく影響されやすい特徴が反映した面もあるだろう。
外部環境に左右されにくい銘柄に投資しようと考えるならば、業種がディフェンシブかどうかよりも異なる外部環境下で安定した株価推移の実績ある銘柄の選定が検討されよう。S&P500構成銘柄の内、日足終値の昨年の年間騰落率および今年の年初来騰落率(9/13終値)がともに+10%以上は26銘柄ある。エネルギー関連に限らず保険・インフラ関連・バイオ技術・食品など幅広い業種に及ぶ点は注目される。
S&P500構成銘柄でディフェンシブ〜22・23年連続で上昇率2桁銘柄より
大統領選サイクル3年目の米国株
米国株市場には、大統領選挙のサイクル(4年周期)との間に相関関係があるという「アノマリー」(理論的根拠があるわけではないが経験則上よく当たるとされる考え方)の存在が指摘される。選挙に伴い支持率を意識した政策が出されることなどが影響し、米中間選挙の年は安く、大統領選挙の年に向かって上昇するとされる。
21世紀以降の大統領選サイクル3年目の株価推移を年初来ベースで見ると2019年が最も好調。2023年も6-8月は同年をほぼトレースしていたが、9月に入り逸脱気味だ。他方、サブプライムローン関連「パリバ・ショック」の2007年、米国債格下げの2011年、「チャイナ・ショック」の2015年は夏〜秋以降に相場が崩れた。商業不動産ローン、米国債格下げ、中国といった各々のリスクは現在の潜在的リスクでもある。
大統領選サイクル3年目の米国株〜6-8月は4年前トレースも9月は逸脱
ブラックロック Midyear Outlook
9/21まで開催のFOMC(連邦公開市場委員会)でタカ派の姿勢が強調されたなか、資産運用世界最大手ブラックロック(BLK)が6/28発表の「2023 Midyear Outlook」は、中央銀行が長期にわたる金融引締めを維持せざるを得ない見通しが示していた。供給制約によるインフレ圧力加速に加え、高齢化に伴う労働者供給減少が「景気後退局面における完全雇用」をもたらす可能性も言及された。
5つの「メガフォース」として、①デジタルによる創造的破壊とAI、②分断化する世界、③低炭素への移行の追跡、④人口高齢化、⑤金融業界の今後が挙げられた。中でも⑤に関し、米銀行のリスクへの懸念が残る中で、銀行貸出が縮小してもノンバンクやプライベート・クレジットが伸びる余地への言及は要注目だろう。
ブラックロック Midyear Outlook〜「新たなレジーム、新たな投資機会」とは
米国家計は健全だが消費に陰り
米FRB(連邦準備制度理事会)が8日発表の4-6月期の米家計(含む非営利機関)純資産は前四半期比で5.5兆ドル増の154.3兆ドルと過去最高へと増加。1-3月期の米家計負債の対GDP比率も72%台と低下の一途を辿っている。新型コロナ禍時の政府からの多額の生活支援金の貯蓄が尽きるのではないかとの懸念が叫ばれる中、米国の家計はかつてないほど健全であることが示されている。
消費者信用残高の前月比増減額は、今年5月にマイナスとなった後も7月が市場予想(160億ドル増)を下回る104億ドル増にとどまった。米国勢調査局が12日、米国のインフレ調整後の家計所得が2022年に前年比で2.3%減と発表。また、学生ローンの支払い猶予措置が8月末で打ち切られた影響も懸念される。
米国家計は健全だが消費に陰り〜負債対GDP比率と消費者信用残高
稼働リグ数減と在庫不足の原油
原油先物相場は、サウジアラビアが自主減産を年末まで継続すると表明したこと、およびロシアも原油輸出量を減らす措置を年末まで延長すると表明したことを受け、足元で堅調に推移。米原油在庫は今年3月から減少傾向にあるなか、一段と減少するとの見方が広がっている。また、ベイカー・ヒューズ社発表の米国石油掘削装置の稼働リグ数も昨年末比で約2割減少しており、原油先物価格の上昇を後押ししている。
米原油生産がサウジアラビアの減産で需給が引き締まっている市場に追加供給をもたらしているものの、米エネルギー情報局(EIA)の月報で6月の米石油製品需要が今年の最高水準を更新。昨年の最高水準を既に上回るなど、物価高や金利高の影響が見られない状況だ。