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“昨年10月下旬より出遅れディフェンシブが相場を牽引”
“昨年10月下旬より出遅れディフェンシブが相場を牽引”
2024/1/10
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘
“昨年10月下旬より出遅れディフェンシブが相場を牽引”
新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
- 2023年の米国株相場は代表的株価指数のS&P500指数の年間騰落率が24.2%に達するなど、堅調に推移した。生成AI(人工知能)を中心としたイノベーションに後押しされて「マグニフィセント7」と呼ばれる主要大型ハイテク・半導体銘柄が上昇を牽引。S&P500が2022年初来の安値水準にあった22年10月〜23年1月に株価底打ち反転から1年以上の上昇基調を辿っている。
- 米国ウィークリー2023年11月7日号「リスクと悲観の巻き戻しで年末高へ〜視界良好か?」で述べた通り、全米アクティブ投資マネージャーズ協会(NAAIM)による会員の株式エクスポージャーを表した「NAAIM指数」は昨年10/25に昨年来最低水準の24.82に低下。その後、長期国債先物の投機筋売りポジションにおける歴史的な積み上がりからの米国債買戻しとともに同指数は上昇。歩調を合わせてS&P500の日次終値も10/27の4117ポイントから反転上昇した。以降、インフレ率減速とともに利上げ打ち止め・利下げ観測が台頭し、米国株市場は「サンタクロース・ラリー」を伴う年末高となった。
- 10/27は上昇相場の延長への起点となった日というよりも、相場牽引役が大型ハイテク株から出遅れ銘柄へと交代していく流れの起点日だったと見る余地もあろう。たとえば、S&P500構成銘柄の内、22年末から昨年10/27終値までの騰落率がマイナス、かつ、10/27から12/29終値までの騰落率が30%以上上昇した銘柄数は59に上る。その中には利下げ観測への感応度が高い不動産関連・資産運用会社も含まれるものの、各種医療機器、その他ヘルスケア関連、ディスカウントストア、情報サービスなど景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄も多い。米経済のソフトランディング(軟着陸)シナリオが相場を支える一因となる中でその通りにならないリスクもあるだろう。「出遅れディフェンシブ銘柄」はここからの投資対象として魅力的な面もありそうだ。
- 5日発表の12月の米国雇用統計は非市場予想よりも強い数字となった。他方、ISM(供給管理者協会)の12月製造業・非製造業の景況感指数は低調と米国経済は「まだら模様」だ。欧州のインフレ動向を見ると、12月の消費者物価指数(CPI)速報値がドイツ、フランス、ユーロ圏ともに伸び率鈍化傾向から反転しつつある点は要注意だろう。また、12日より大手銀行を皮切りに米企業の昨年10-12月期決算発表が始まる。商業用不動産担保証券(CMBS)などを手掛ける米不動産投資信託(REIT)のJERインベスターズ・トラストが12/29、連邦破産法11条に基づく会社更生手続きの適用を申請しており、特に地銀決算に対しては警戒の目線も必要かもしれない。(笹木)
- 1/10号では、バス&ボディワークス(BBWI)、ジェネラック・ホールディングス(GNRC)、インテュイティブサージカル(ISRG)、シェニエール・エナジー(LNG)、マーケットアクセス・ホールディングス(MKTX)、オン・ホールディング(ONON)を取り上げた。
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(1/5現在)
1月12日(金) | シティグループ、ウェルズ・ファーゴ、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー、バンク・オブ・アメリカ、ユナイテッドヘルス・グループ、デルタ航空、ブラックロック、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン |
1月9日(火) | - テクノロジー見本市「CES」(ラスベガス、12日まで)、米貿易収支 (11月)
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1月10日(水) | - 米ニューヨーク連銀総裁講演、米SECによるビットコイン現物投資型ETFについて承認の是非を判断する期限、米卸売在庫 (11月)
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1月11日(木) | - 米CPI(12月)、米新規失業保険申請件数 (1月6日終了週)、米財政収支(12月)
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1月12日(金) | |
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1月15日(月) | |
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- 1963年設立の家庭用フレグランス、石鹸、消毒剤製品の専門小売店運営企業。北米で「Bath & Body Works」、「White Barn」などのブランド名で直営・フランチャイズ・ECサイトを通じて事業展開。
- 11/16発表の2024/1期3Q(8-10月)は、売上高が前年同期比2.6%減の15.62億USD、非GAAPの調整後EPSが同20.0%増の0.48USD。マクロ環境悪化が響き減収も効率化重視の経営戦略が奏功し、粗利益率が同1.7ポイント上昇の43.7%、売上高販管費率が同0.2ポイント低下の29.5%と改善した。
- 通期会社計画は、売上高を前期比4.0-2.5%減(従来計画:3.5-1.5%減)と下方修正の一方、調整後EPSを同15-9%減の2.90-3.10USD(同:2.80-3.10USD)へ上方修正。店舗とECサイトのオムニチャネル戦略強化の年末商戦への成果が期待される。同社株価の騰落率は、22年末以降S&P500が反転上昇した10/27までが31%下落に対し、同日から昨年末までが約51%上昇と反発継続が期待される。
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- 1959年設立の発電機設計・製造企業。主力の住宅向けのほか商業・産業向けも手がける。住宅向けはバックアップ用小型発電機に加えてストレージやエネルギー管理ソリューションも取り扱う。
- 11/1発表の2023/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比1.6%減の10.70億USD、非GAAPの調整後EPSが同6.3%減の1.64USD。商業・産業製品が同24%増収(3.84億USD)も、住宅用製品が同15%減収(5.65億USD)。粗利益率が改善も、支払利息が同59%増だったことも利益面で響いた。
- 通期会社計画は売上高が前期比12-10%減、調整後EBITDAマージンが15.5-16.5%(前期16.6%)と従来計画を据え置き。住宅製品は3Qが前四半期比13%増収と改善のほか原材料・物流コスト減、利下げ観測台頭で支払利息の前四半期比減少が期待される。同社株価の騰落率は、22年末以降S&P500が反転上昇した10/27までが約18%下落に対し、同日から昨年末までが約55%上昇。
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- 1995年に設立。腹腔鏡手術のロボット支援システム「ダヴィンチ」や管腔内視鏡肺生検のロボットシステム「イオン」の開発・製造・販売を行う。ダヴィンチの設置台数は2023年9月末時点で8285台。
- 10/19発表の2023/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比12.0%増の17.43億USD、非GAAPの調整後EPSが同22.7%増の1.46USD。ダヴィンチは出荷件数が同7件増(312件)、手術件数が同19%増、9月末時点の合計設置台数が同13%増と拡大。売上高総営業費率も同1.7ポイント改善。
- 3Qの前四半期比は、売上高が0.7%減、調整後EPSが2.8%増。米国に次いでダヴィンチの導入台数が多い日本でロボット支援技術の保険適用範囲が拡大のほか、中国でも医薬品メーカー上海復星医薬集団との合弁事業で昨年10月、中国国産「ダヴィンチXi」公開。同社株価の騰落率は、22年末以降S&P500が反転上昇した10/27までが約3%下落に対し、同日から昨年末までが約30%上昇。
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- 1983年設立の液化天然ガス(LNG)事業者で生産規模は米国首位・世界第2位。世界最大規模のLNG生産施設サビン・パス・ターミナルを所有・運営。パイプライン輸送のほかタンカー輸出も行う。
- 11/2発表の2023/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比53.0%減の41.59億USD、非GAAPの調整後EBITDAが同40.2%減の16.63億USD。LNG輸出量は同2%の小幅減も、天然ガスおよびLNGの国際相場が前年同期にロシアによる欧州への天然ガス供給懸念から高騰した反動で大幅に下落。
- 通期会社計画は、調整後EBITDAが前期比▲28-▲24%の83-88億USD(従来計画80-85億USD)と従来計画据え置き。欧州がエネルギーの脱ロシア依存を進めるなか米国のLNG輸出が2023年、国別で初の世界首位。また、イスラエルとハマスの衝突によりイスラエルの天然ガス生産が止まることで米国からのLNG輸出増加およびLNG輸出価格上昇が見込まれ、同社への追い風が期待されよう。
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- 2000年設立の債券向け電子取引プラットフォーム運営企業。機関投資家・証券ディーラーを顧客とし、米国の投資適格社債やハイイールド債、新興国債券、ユーロ債などの取引効率化に貢献。
- 10/25発表の2023/12期3Q(7-9月)は、総収益が前年同期比0.1%増の1.72億USD、EPSが同7.6%減の1.46USD。収益構成比87%のコミッション収入が同1.7%減も情報サービス収入(同21.5%増)が増収寄与。他方、人件費増に伴い営業費用比率が同5.5ポイント悪化したことが利益面で響いた。
- 昨年10/2にアルゴリズム取引業者のPragma買収完了に伴い、通期会社計画を修正。営業費用を前期比10-12%増の4.32-4.38億USD(従来計画4.18-4.46億USD)とした。平均日次取引金額の3Qが前年同期比7%減(内、クレジット債が前年同期比2%増、米国債・その他政府保証債が同11%減)。米FRBによる利下げ観測に伴い、債券価格上昇期待から取引額拡大と同社収益増が見込まれよう。
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。
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- 2010年設立。スイス・チューリッヒ拠点のランニング・シューズメーカー。着地時の衝撃吸収システムに係る特許を保有し、多方向へのクッショニングを可能にするなど高性能シューズに強みを有する。
- 11/14発表の2023/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比46.5%増の4.80億CHF(スイスフラン)、非IFRSの調整後EPSが同2.9倍の0.20CHF。マラソンやテニス分野で同社製品使用選手の活躍によるブランド浸透、および自社店舗・ネット通販を通じた直接販売が伸長。粗利益率も同2.8ポイント改善。
- 通期会社計画を上方修正。売上高を前期比46%増の17.9億CHF(従来計画:17.6億CHF)とした。スイス出身のテニスのフェデラー選手が「ソフトな着地と爆発的な蹴り出し」という基本コンセプトを気に入って同社へ出資も行ったとされる。新型コロナ禍の時期にランニングへの関心の高まりがブランド拡大に繋がった面があるほか、有力アスリートとの提携積極化と高価格帯での差別化戦略が奏功。
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- (※)決算発表の予定は1/5現在であり、変更される可能性があります。
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