マーケット > レポート > 米国ウィークリー・マンスリー >
“スーパーチューズデー週を抜けて風景が変わる米国株市場”
“スーパーチューズデー週を抜けて風景が変わる米国株市場”
2024/3/12
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘
“スーパーチューズデー週を抜けて風景が変わる米国株市場”
- 5日の「スーパーチューズデー」、6-7日のパウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長による議会証言、8日発表の2月雇用統計など一連の重要イベントを潜り抜けた後の米国株市場は、以前と風景が変わったのだろうか?
- 米国ウィークリー2023年12月26日号では、「予備選挙・党員集会が集中する3月第2火曜日(スーパーチューズデー)を控えて2月頃までは年末ラリーの勢いが持続する可能性があるものの、過去の大統領選年の主要株価指数動向からすると、その後は選挙本番の秋ごろまでこう着状態へとシフトする可能性も高そうだ。」とした。(2023年12月28日発行の米国マンスリー2024年1月号の中の「米大統領選挙年のS&P500推移」もご参照ください。)。
- 更に、米国ウィークリー2024年2月27日号では、「半導体相場から『もしトラ(ほぼトラ)相場』へ移行も?」とした。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)をS&P500指数で割った「SOX/S&P500倍率」の過去推移(週次終値)を見ると、3/8は0.967倍(3/1に0.959倍)に達し、「IT(ドットコム)バブル」に踊った2000年の3/10に付けた0.955倍を24年ぶりに超えた。奇しくもその3/10はナスダック総合指数のITバブルにおけるピークを付けた日だった。この意味は軽視できないだろう。これ以上は、生成AI(人工知能)の将来有望性に疑いを挟む余地が小さいとしても、S&P500指数とのバランスを失してまで半導体関連銘柄の株価が高騰すると見るのは無理があるように思われる。
- 米大統領選への注目が高まるに連れて生成AIとの関連でAIを使ったサイバー攻撃、あるいは偽の画像・音声・動画を生成する悪意ある「ディープフェイク」への対策が重要性を増すだろう。バイデン政権は2/21、港湾施設や設備に関するサイバーセキュリティ対策を強化する大統領令を出した。補助金を含めて5年間で200億ドルを投じてクレーンの国産化や貨物管理、クレーン操作などを担うシステムの安全対策向上を図るとしており、AIに強いサイバーセキュリティ関連銘柄が次の相場の主役を窺う可能性もあろう。
- その他の分野では、商業用不動産融資に係る引当金積み増しが嫌気されてニューヨーク・コミュニティー・バンコープ(NYCB)の株価下落が続くなか、KBW地銀株指数は落ち着いた動きだ。それでも、同様に厳しい状況にある地銀の存在も想定され、財務基盤に余裕ある「勝ち組」地銀がM&Aで拡大する好機となろう。著名投資家バフェット氏が2/24発表の23年の年次報告書で「銀行、保険、その他金融株」が増えている点も、地銀動向と関係があるかもしれない。
- 更に、新型コロナ禍の供給網混乱対応で膨らんだ在庫が正常化し、値引き販売減少で財務改善が進む小売り大手の動向も注目される。(笹木)
- 3/12号では、シティーホールディング(CHCO)、フォーティネット(FTNT)、ロウズ(LOW)、モデルナ(MRNA)、シーゲート・テクノロジー・ホールディングス(STX)、ターゲット(TGT)を取り上げた。
S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(3/8現在)
3月13日(水) | レナー、ダラー・ツリー |
---|
3月14日(木) | アルタ・ビューティ、アドビ、ダラー・ゼネラル |
---|
3月15日(金) | ジェイビル、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド |
3月11日(月) | - 米予算教書、米緊急貸出制度「バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)」終了、米3年債入札
|
---|
3月12日(火) | - 米大統領選で民主・共和両党予備選(ジョージア州、ミシシッピ州、ワシントン州など)、共和党ハワイ州党員集会、米10年債入札、OPEC月報
- 米CPI(2月)、米財政収支(2月)
|
---|
3月13日(水) | |
---|
3月14日(木) | - 米韓合同軍事演習の最終日
- 米新規失業保険申請件数(9日終了週)、米小売売上高 (2月)、米PPI(2月)、米企業在庫(1月)
|
---|
3月15日(金) | - 米大統領がアイルランド首相と会談、ロシア大統領選挙(17日まで)
- 米ニューヨーク連銀製造業景況指数(3月)、米輸入物価指数(2月)、米鉱工業生産(2月)、米ミシガン大学消費者マインド指数・速報値(3月)
|
---|
3月17日(日) | |
---|
3月18日(月) | - ニューヨーク連銀サービス活動(3月)、NAHB住宅市場指数
|
|
- 1957年設立。ウェストバージニア州拠点に傘下「City National Bank of West Virginia」を通じて金融サービスを提供。M&Aで業容拡大。2023年に「シチズン・コマース・バンクシェアーズ」を買収。
- 1/24発表の2023/12期4Q(10-12月)は、信用損失調整後純金利収益が前年同期比6.6%増の54.9百万USD、非金利収益が同23.2%減の14.2百万USD、合併の影響を除くEPSが同横ばい2.00USD。純金利マージン(NIM)は同0.09ポイント上昇も、効率性レシオ(経費率)が同2.1ポイント悪化した。
- ケンタッキー州拠点のシチズン・コマース・バンクシェアーズ買収により23年末貸出残高が前期末比6%増。今年1月末にニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)が、商業用不動産向け融資の貸倒引当金を積み増した結果、予想外の赤字決算を発表。他方、同行のように地銀株価全体の下落を地域を超えた再編統合の好機と捉えて積極的に動く地銀もあり、「勝ち組」として評価されよう。
|
|
- 2000年設立。Internet Gatewayに必要なセキュリティ機能を実現する統合脅威管理(UTM)の「FortiGate」、それを効率的に活用する統合管理監視ツールを提供。UTMの出荷額で世界首位。
- 2/6発表の2023/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比10.3%増の14.15億USD、非GAAPの調整後EPSが同15.9%増の0.51USD。請求ベース取扱高が同8.5%増の18.64億。サービス売上と製品売上の内、製品は同9.6%減収の一方、売上比率66%のサービスが同24.8%増収と堅調。
- 2024/12通期会社計画は、売上高が前期比8-10%増の57.15-58.15億USD(内、サービス売上が同16-17%増の39.2-39.7億USD)、調整後EPSが同1-4%増の1.65-1.70USD。同社は昨年12月、40超のAI(人工知能)機能を搭載した製品とサービスを含むポートフォリオに、生成AIアシスタント(Fortinet Advisor)が加わったと発表。米大統領選を控え、サイバーセキュリティ需要増が期待される。
|
ロウズ(LOW)市場:NYSE・・・2024/5/23に2025/1期1Q(2-4月)の決算発表を予定
|
- 1946年設立の米ホームセンター(HC)大手。HCチェーンで世界2位。2018-19年にかけて店舗リストラ・メキシコ撤退を実施のほか23年2月にカナダ事業を売却。米国HC事業に経営資源集中。
- 2/27発表の2024/1期4Q(11-1月)は、売上高が前年同期比17.0%減の186.02億USD、前年同期のカナダ事業売却の影響除く非GAAPの調整後EPSが同22.4%減の1.77USD。既存店売上高は同6.2%減だった。中古住宅販売減少に伴うDIY需要鈍化および1月の冬の寒波に伴う天候不順が響いた。
- 2025/1通期会社計画は、売上高が前期比2-3%減の840-850億USD(内、既存店売上高が同2-3%減)、EPSが同7-9%減の12.0-12.3USD。米中古住宅販売は23年通年でほぼ30年ぶり低水準を記録も、今年1月は住宅ローン金利低下を追い風に約1年ぶり大幅増加。パウエル米FRB(連邦準備制度理事会)も議会証言で利下げに言及。高値売却のため手入れに励むDIY需要復活も期待されよう。
|
モデルナ(MRNA)市場:NASDAQ・・・2024/5/3に2024/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定
|
- 2010年設立のバイオテクノロジー企業。感染症、がん免疫、心血管疾患に係るm(メッセンジャー)RNAによる治療薬とワクチンの発見・開発に注力し、臨床試験段階のバイオテクノロジーに関わる。
- 2/22発表の2023/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比44.7%減の28.11億USD、EPSが同84.8%減の0.55USD。唯一製品の新型コロナワクチン需要減も製品値上げに加え、製造委託契約解除等で総営業費用が同19.9%減(28.05億USD)。EPSは前四半期比で▲9.53USDから黒字転換。
- 2024/12通期会社計画は、売上高が前期比42%減の40億USDも、売上高販売費率が同35.3ポイント低下の35%、研究開発費と販管費の合計額が同9.3%減の58億USD。コスト削減も通期最終赤字見通しのなか、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症向けワクチンが米食品医薬品局(FDA)に5月承認とその後の接種開始を見込む。新型コロナワクチンに続く大型医薬品上市が視界に入ってきた。
|
|
- 1978年設立。アイルランドを登記上本拠とするデータ記憶装置(ストレージ)メーカー。小型HDDを世界初で製品化。HDDの他フラッシュメモリを用いたSSD、小型SSDをHDDに搭載したSSHDも手掛ける。
- 1/24発表の2024/6期2Q(10-12月)は、売上高が前年同期比17.6%減の15.55億USD、非GAAPの調整後EPSが同25.0%減の0.12USD。調整後営業費用の同18.3%減を受けて調整後営業利益率が同2.4ポイント上昇の8.2%。前四半期比は売上高が6.9%増、調整後EPSが▲0.22USDから黒字転換。
- 2024/6期3Q(1-3月)会社計画は、売上高が前年同期比9-25%減の14.0-17.0億USD、調整後EPSが▲0.2〜0.0USD(前年同期▲0.28USD)へ赤字幅縮小。同社は記録密度上の要となる「エネルギーアシスト記録」の中でも究極の「熱アシスト記録(HAMR)」採用のデータセンター(DC)向け3.5インチHDD(ハードディスクドライブ)量産化を今年3月末までに開始する。生成AI(人工知能)向けDC需要の恩恵を受けよう。
|
ターゲット(TGT)市場:NYSE・・2024/5/17に2025/1期1Q(2-4月)の決算発表予定
(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。
|
- 1902年設立。米国でディスカウント百貨店「Target」など2千店舗のほかEコマース「Target.com」を展開。自社ブランド中心に生活必需品、食品等幅広い商品を提供。23年度で52年連続増配更新中。
- 3/5発表の2024/1期4Q(11-1月)は、売上高が前年同期比1.7%増の319.19億USD、非GAAPの調整後EPSが同57.6%増の2.98USD。既存店売上高が裁量消費(衣料品や寝具等)の需要減で同4.4%減も、在庫水準正常化に伴う値引き販売減により営業利益率が同2.1ポイント上昇の5.8%へ改善。
- 2025/1通期会社計画は、既存店売上高が前期比0-2%増、調整後EPSが同▲4〜+7%の8.60-9.60USD。在庫正常化と値引き販売減により2024/1通期営業キャッシュフローも同2.1倍(86.21億USD)へ改善。業績改善の定石通りならば次は収益面の梃入れが期待されるなか、同社は会員向けプログラムに「ターゲット・サークル360」追加を発表。4月より35USD以上注文なら無料で即日配送を可能とした。
|
- (※)決算発表の予定は3/8現在であり、変更される可能性があります。
米国ウィークリー・マンスリー一覧へ戻る
免責事項・注意事項
- 当資料は、情報提供を目的としており、金融商品に係る売買を勧誘するものではありません。フィリップ証券は、レポートを提供している証券会社との契約に基づき対価を得ております。当資料に記載されている内容は投資判断の参考として筆者の見解をお伝えするもので、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。投資に関する最終決定は、お客さまご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、当資料の一部または全てを利用することにより生じたいかなる損失・損害についても責任を負いません。当資料の一切の権利はフィリップ証券株式会社に帰属しており、無断で複製、転送、転載を禁じます。
<日本証券業協会自主規制規則「アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則平14.1.25」に基づく告知事項> 本レポートの作成者であるアナリストと対象会社との間に重大な利益相反関係はありません。
マーケットへ戻る
|