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【そうだったのか!ETF徹底解剖】 第1回 ETFってそもそも何?
2017/11/08
ETF=上場投資信託
ETFはExchange Traded Fundの略称で、日本語では上場投資信託と表現されます。ですので、形態としては投資信託なのですが、証券取引所に上場されていることで、市場で自由に売買することが可能です。通常の(非上場の)公募投資信託は一日に一回、基準価額での取引となりますが、ETFの場合は市場でいつでも取引を行うことが可能です。
ETFの二面性
ETFは株式と投資信託の両方の特徴を兼ね備えた金融商品です。
例えば、ETFの投資対象(保有銘柄)は多様な銘柄に分散されていますし、もっといえば必ずしも株式である必要もありません。債券に投資している投資信託のように、債券のETFも存在します。また、投資信託と同様に信託報酬(ETFの場合は経費率という用語を使うことが一般的です)もかかります。この辺りの特性は投資信託と同一といえます。
一方で、取引に関しては基本的には株式の性質を持っていて、取引所における市場価格での売買が一般的です。また、株式の発注方法と同じように、成行、指値での発注が可能ですし、信用取引や空売りも可能です。
ETFと株式・投資信託の特徴の比較
このように「投資信託を株式のように売買できる」・・・というのがETFの特徴を最もシンプルに表現したものなのですが、投資家の皆様からするといまひとつピンと来ないというのが実情のようです。
そこで、株式の投資家と投資信託の投資家のそれぞれの視点から見て、感覚的にETFをどのように理解すればよいのかを以下で見てみましょう。
株式の投資家から見たETF
個別銘柄の株式の投資家から見れば、ETFは「個別銘柄のバスケットが小口で売買できるもの」という表現が理解しやすいのではないでしょうか。あるガラスのケースに個別銘柄のバスケットが詰められていて、そのケースそのものを売買するイメージです。(なぜガラスかというと、中に入っている個別銘柄のバスケットは日次で開示されているので、常に中身が確認できるというわけです。)日経平均の225銘柄やS&P500の500銘柄をすべて買い付けるには多額の金額が必要ですが、ETFであれば小額から買い付け可能です。
また、あるテーマ(例えば、新興国やある特定のセクターや高配当など)に沿った株式のバスケットを自分でそろえるのは、その調査や配分の決定、そしてその売買の執行に非常に手間がかかりますが、そのようなバスケットを保有しているETFがあれば、1銘柄でバスケットの株式すべてを保有しているのと同じ効果を得ることができます。
経費率はそのガラスのケースの中身を維持・調整するためのコストとして解釈できるでしょう。
このように株式の投資家からすれば、ETFは個別銘柄と同じように株式のバスケットが売買できるものとして考えると分かりやすいのではないでしょうか。
投資信託の投資家から見たETF
投資信託の投資家から見た場合は、「低コストのインデックスファンドが上場している」と考えたほうが理解しやすいでしょう。(最近はインデックス運用ではなくアクティブ運用のETFもありますが、ここでは除外します。)ある指数に連動するように設計されたインデックスファンドがあり、それが上場していることで、基準価額による一日一回の売買だけでなく、市場での売買を可能したものがETFであるといえます。特に、海外に投資するような投資信託であれば、翌日にならないと自分がいくらの基準価額で売買が出来たのかがわかりませんが、ETFであれば、常に自分がいくらで売買をしたのかを確認することが出来ますし、そもそも発注方法も成行きだけでなく、売買価格を指定(指値)することが出来ます。
また、インデックスファンドはそもそも低コストですが、ETFにすることによって販売会社に対する手数料(販売手数料および代行手数料)がない(切り離されている)ためにその経費率はより低廉となりますし、売買の手数料も株式の売買手数料となります。これが投資信託に比べると、低コストで自由な投資ツールだといわれるゆえんです。
投資信託の投資家は、低コストの投資信託が上場して取引所で取引できることで利便性が高まったと理解するのが良いかと思います。
ETFは急成長している金融商品
株式と投資信託の両方の特性を持ったETFは、証券取引所を通じて誰にでもアクセス可能な金融商品として、「民主的な投資のツール」とされています。そのため、個人投資家だけでなく機関投資家にとっても非常に使い勝手の良い投資ツールであるという認識が広がり、その残高は成長を続けています。2017年9月末時点で、その残高は4.4兆ドルとなり日本円で500兆円に迫りつつあります。
また米国では、ミレニアル世代がETFを積極的に活用するようになってきているということも明らかになってきており、コストや流動性、また多様な資産へのアクセス手段としてのETFの注目度は高まる一方となっています。
グローバルETFの純資産総額と銘柄数の推移
※ETNなどを含みます
ETFは確かに使い勝手のよい商品ではありますが、株式と投資信託の両方の特性を併せ持つことから、個人投資家の方からするといろいろと細かい点についてはよくわからない点もあるかと思います。
この「そうだったのか!ETF徹底解剖」シリーズでは、このETFという金融商品をきちんと理解していただくために、普段はあまり説明されないようなETFの仕組みを分かりやすく解説していきたいと思います。
注:上記および本シリーズはETFの基本的な特性をご理解いただくために、一般的な場合を示したものであり、すべての事象について必ずしも該当するわけではありません。
著者
渡邊 雅史(わたなべ まさふみ)
ウィズダムツリー・ジャパン株式会社 ETFストラテジスト
アクセンチュア株式会社にて金融機関向けコンサルティング業務に携わった後、バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現ブラックロック・ジャパン)にて、ポートフォリオマネジャー、ストラテジスト、及びETF部門専任のストラテジストを歴任。金融ベンチャー企業に参画した後、2016年よりWisdomTree JapanのETFストラテジスト。ETF市場の分析、ETFを用いた運用戦略の立案・提案業務などに携わる。
慶應義塾大学総合政策学部卒、早稲田大学大学院ファイナンス修士(MBA)。
著書に『計量アクティブ運用のすべて』(金融財政事情研究会)(共著)