ECB追加緩和後、日米はどう動く!?
日銀金融政策決定会合 |
発表時間 |
3/15(火)昼頃(時間未定) |
FOMC 政策金利
|
発表時間 |
3/16(水)27:00(日本時間) |
直近の米ドル/円の値動き
出所:FX総合分析チャート 日足
ECB追加緩和による日銀政策会合、FOMCへの影響は?
先週3/10のECB理事会では、市場予想を上回る内容の追加緩和策を決定しました。
ECB理事会で決定された追加緩和の内容
1) 金利の引き下げ
中銀預入金利 -0.30% ⇒ -0.40%
貸出金利 0.30% ⇒ 0.25%
政策金利 0.05% ⇒ 0.00%
2) 金融機関以外の社債を購入対象に含める
3) 資産購入額を月間800億ユーロに拡大
4) 新たな長期リファイナンスオペを計画
理事会後の会見でドラギ総裁は金利見通しに触れ、「金利は現行かそれ以下の水準でかなりの期間留まる」と示した一方、日銀が導入したマイナス金利の階層化に関しては、ECBが望む程度まで金利が低下するとのシグナルと捉えられる誤解を招く恐れもあることから、見送られることになりました。
3/10のECBの追加緩和を受けて、今後社債購入やTLTRO(条件付長期資金供給オペ)によるクレジット・スプレッドの縮小が見込まれるものの、資金需要の増加につながるのか、日銀のマイナス金利導入と同様に、そうした効果を疑問視する見方もあるようです。
敢えてドラギ総裁が会見の中で追加緩和に否定的な見解を示したことで、市場からは「マイナス金利も既に限界か?」といった見方も聞こえるだけに、日銀など更なる緩和手法を検討する各国中銀らの金融政策も厳しい立場に追いやられたとの懸念も聞こえます。
主要国の政策方針
金融政策方針 | 2015年の政策 | 2016年の政策見通し | |
---|---|---|---|
FRB | 緩やかな利上げ方向 | 12月に9年ぶりに利上げ | 年数回の利上げ |
日銀 | 緩和政策継続 | 12月にETF3,000億増枠 補完的措置 |
1月一部マイナス金利決定 マイナス金利拡大を含め、更なる緩和の可能性あり |
ECB | 緩和政策継続 | 12月0.1%利下げ | 3月ゼロ金利決定 追加利下げに否定的 |
豪中銀 | 緩和政策継続 | 年2回利下げ 2.00% | 中国経済次第か? |
NZ中銀 | 少なくともあと1回の 利下げの可能性あり |
年4回利下げ 2.50% | さらなる緩和の可能性あり |
トルコ中銀 | 明確な方向見えず | 金利据え置き | 利上げ、利下げか不明 |
出所:SBIリクイディティ・マーケット
ドラギ総裁は会見の中で「一段の利下げが必要となるとは予想していない。新たな事実で状況が変わる可能性がある」として追加緩和に否定的な姿勢を示すなど、金融政策のみに頼ることから財政政策に重きを置いた政策の必要性を暗に示したのかもしれません。
2/26-27に開催された上海G20での共同声明では、『市場の安定化に向けてあらゆる政策を総合的に用いる』との方針が示されましたが、ECB理事会での追加緩和策を見ると、市場の一部で囁かれる『金融政策による景気浮揚の限界』に敢えて挑戦したようにも思えるほどの大胆な内容であったようにも思えます。中央銀行の長として「やれることは何でもやる」といった姿勢が伺えるものだったように評価される内容だとも言われています。
こうした中で迎える3/14-15の日銀政策決定会合、それに続くFOMCへの関心が高まる中、果たして日銀が追加緩和に動くのか注目されます。一部にはECBの大胆な緩和策によって日銀は動き易くなった、あるいは3月決算期末を前に策を講じる、との予想もあるようです。
ただし、ECBが12月の緩和策に続いて追加緩和に動いたものの、日銀は1月末のマイナス金利導入から50日未満であり、効果を見極める段階というのが一般的な見方かもしれません。それだけに何か動いた際のインパクトは想像以上に大きな効果が見込めるとの推進派の意見もあります。果たして、黒田総裁が会見の中でサプライズを示すのかいずれにしても注目です。
一方FOMCは、他の中央銀行と立場を分けており、昨年12月に示された年3-4回の追加利上げの修正にどのような形で言及するのか注目されます。さらには、次回の利上げ時期を巡ってイエレン議長が会見の中で単に経済指標次第とするのか、また海外要因からの影響についてどれだけ掘り下げるのかも注目点の一つかもしれません。
米国では大統領予備選が15日の大票田フロリダ州を巡る争いを経て、共和・民主ともに候補者が絞られてきます。イエレン議長およびFOMCメンバーがこうした政治情勢の風向きを意識するとは思いませんが、今秋に大統領選を控えているというスケジュールは、利上げ時期を探る上で何らかの影響を及ぼすかもしれないだけに6月利上げの可能性にどれだけ含みを持たせる会見になるのかイエレン議長の発言にも注目したいところです。
今後の注目材料
3/15には、今年5月の伊勢志摩サミットに向け、安倍首相を中心に全5回開催される予定の第一回「国際金融経済分析会合」が開催されます。この会合ではアベノミクスを評価している2001年のノーベル経済学賞受賞のスティグリッツ氏を招くほか、黒田日銀総裁などを交えた議論が行われる予定です。当然のことながら金融政策に併せ、5兆円〜7兆円規模の補正予算などの財政出動、さらには来年4月からの消費税増税の先送りなども含めた議論が交わされることが予想され、注目する必要がありそうです。
原油価格や欧米株の持ち直しに比べ、日経平均株価、さらにはそれ以上にドル円の円高からの反発が立ち遅れている最大の要因は何なのか、またアベノミクス以降の円高是正による日本経済への好影響をあらためて検証する場になるかもしれません。
3/10のECB理事会での大胆な追加緩和策の効果を見極めるには時間が必要なことは明らかですが、日銀の階層化を含めたマイナス金利導入もある種の実験的な側面があるかもしれません。アベノミクスの3本の矢である規制緩和や構造改革が物足りないことも、日銀の異次元緩和の効果を持続できなかった要因であるとの反省に立ち、大胆な財政出動など金融政策の効果を引き出すための金融・財政両面からのより効果的な対策が求められているのかもしれません。
過去の米ドル/円の値動き
出所:FX総合分析チャート 日足
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