FRBの要人発言に注目集まる。12月の利上げの行方は・・・
鍵を握るFRBの要人発言
今週末の金曜日は12/1、今年のカレンダーも残すところわずか1枚となります。通常では12月の曜日は9月と同じ並びになりますが、米雇用統計は8月分が9/1に発表されたものの、11月分は12/8と次週の発表となっています。そのため、12/13-14に予定されている今年最後のFOMCで、追加利上げの有無を占うという観点からは、FRB要人の発言が鍵を握ることになります。
11/28の日本時間午前9時からNY連銀ダドリー総裁の講演、11/29の深夜0時から米議会上院でパウエル次期FRB議長承認のための公聴会が開催され、特に次期議長の発言が注目されます。また、イエレンFRB議長が11/30の深夜0時から上下両院の合同経済委員会で証言を行います。そのほかにも、クォールズFRB副議長の講演(12/1の深夜2時30分)、フィラデルフィア、サンフランシスコ、ダラスの各地区連銀総裁がそれぞれ講演を予定しており、金融政策を巡る発言が注目されます。
イエレン議長は11/21の講演でインフレ率の低迷が長引くことへの警戒感を示しました。さらに、前回のFOMC(10/31〜11/1)議事要旨では「物価の停滞が長期のインフレ見通しの低下につながりかねない」といった意見が示されたことが判明するなど、弱いインフレを理由に複数の委員が当面の利上げに反対を表明していたことが明らかになりました。さらに目標の枠組みの見直しも議論されたことが明らかになるなど、FRBの中には、インフレ率が2%に届かないまま利上げを続けること自体、インフレ見通しの下振れにつながるのではないかといった見方が浮上しているようです。
イエレン議長が退任する来年2月以降、FRB理事の7つの椅子のうち4つが空席となりますが、パウエル新議長率いる新たなFRBの枠組みの中で「物価停滞」が一段と強まる事態となるのか、今後の米経済指標の行方が注目されます。
米国 GDP成長率
- ※出所:米商務省
債券市場への影響は?
11/29に米7-9月期GDP改定値が発表されます。予想通り上方修正された場合、債券市場がどのように反応するのか注目です。好調な米経済指標にもかかわらず、長期金利の上昇は限られているほか、米10年債利回りと2年債利回りとの金利差は10年ぶりの水準に縮小するまで平準化が進んでいます。
景気減速の兆しが見られない中にありながらも長短金利差が縮小している理由として、幾つかの憶測が出ています。
① FRBは債券買い入れでバランスシートを4.5兆ドル(約500兆円)まで拡大したものの、インフレ加速には奏功していないのが現状。ECBや日銀も同様に消費者物価押し上げに向けて導入した金融緩和政策が、米金利を抑える作用をしている可能性を指摘する見方。
政策金利がゼロを下回る中で相対的に利回りの高い米国債に対する需要が高まっているためで、本来であれば堅調な米成長見通しを反映して上昇するはずの10年物米国債利回りが低水準を維持したままというもの。
② 今年初めに長短金利差を示す利回り曲線がスティープ化(長短金利差が拡大)したのは、トランプ大統領が公約として掲げたインフレ投資や法人税・個人税減税が早期に実現するとの期待によるもので、政策実行が難航して債券市場でポジション調整が起こっているのではないかという見方。
米国国債10年利回り
- ※出所:Quants Research Inc.
当初、財政出動や減税を受けて経済成長やインフレが加速するとの見方が強まり、米国債の10年物利回りは2014年以来の高水準となる2.609%をつけたこともありました。しかし先週22日時点での10年債と2年債との長短利回り差は約59bpsと、2007年11月以降の最低水準まで縮小、年初には125bpsだった長短金利差が大きく縮小しています。
利回り差の縮小の大部分は、利上げ見通しの影響を受けやすい2年物利回りの上昇によるものとされていますが、経済成長・インフレ期待を反映されやすい10年債利回りは昨年末の2.446%から2.322%へ低下しています。
さらに11/30に発表される米10月個人消費支出コア・デフレーターは、特にFRBが注目するインフレ指標の一つとなります。
米個人消費支出コア・デフレーター(前年比)
- ※出所:米商務省
感謝祭明けとなった今週は、複数のFRB要人の発言や米経済指標を受けてドルの上値を抑制している要因の一つとなっている長短金利差の縮小が一服、あるいは反転に向かうのか、年末年始に向けての相場を占う上で注目されます。