米2月雇用統計 結果を確認!
就業者数が予想を大幅に上回る
先週は、韓国大統領特使団が訪朝、金正恩労働党代表との会談の中で非核化を表明、米朝会談に前向きな意向を示したことで、リスク回避志向が後退しました。
また、トランプ大統領による輸入制限規制を巡る世界貿易戦争への懸念が高まったものの、NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉を進めるカナダ、メキシコを当面猶予することを決定したほか、日本をはじめとする同盟国とも対象除外の協議に応じることが明らかとなるなど、強硬一辺倒の姿勢から軟化が見られたことで、懸案事項を巡る懸念が徐々に後退しました。
こうした中で、インフレ加速への警戒感を持って迎えた米2月雇用統計では、就業者数が予想を大幅に上回る31.3万人増となったほか、前月、前々月がそれぞれ上方修正(総計5.4万人増)されるなど、堅調な景気に支えられた労働市場の拡大を確認することとなりました。
9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | |
---|---|---|---|---|---|---|
非農業部門 雇用者数(万人) | 3.8 | 21.1 | 21.6 | 17.5 | 23.9 | 31.3 |
失業率(%) | 4.2 | 4.1 | 4.1 | 4.1 | 4.1 | 4.1 |
時間給賃金 前月比(%) | 0.5 | -0.1 | 0.2 | 0.4 | 0.3 | 0.15 |
時間給賃金 前年比(%) | 2.9 | 2.3 | 2.5 | 2.7 | 2.8 | 2.6 |
※出所:SBIリクイディティ・マーケット
非農業部門雇用者数(万人)の推移
- ※出所:米労働省
就業者数の内訳を見ても、製造業や建設業、さらには小売業での増加が顕著になっており、税制改革による企業経営者のマインドや個人消費支出などに好影響が徐々に表れてきているのかもしれません。
一方、失業率は市場予想(4.0%)に届かず、昨年10月以降5ヵ月連続で4.1%となりました。
それでも労働参加率が前月(62.7%)から63.0%へ改善、昨年9月(63.1%、就業者数:3.8万人増、失業率:4.2%)以来の高水準となりました。
さらに高い賃金、良質な職を求めて自ら退職する自主的離職率も、11.6%と前月から上昇するなど、景気拡大局面を裏付けるような動きも明らかとなりました。
前月の雇用統計では時間給賃金(前年比)が2009年6月以来の2.9%へ上昇、インフレの加速が懸念されたことで長期金利が上昇、NY株式市場は大幅な調整を強いられました。
来週3/20-21のFOMCが意識される中、急速なインフレ加速は好調な米国経済に水を差しかねないとの懸念から注目されていた2月時間給賃金(前年比)は、前月(速報値2.9%から2.8%へ下方修正)から2.6%へ鈍化、前月比も前月(+0.3%)から+0.15%へ上昇が鈍化しました。
前月は、寒波が労働時間の短縮に影響し、週平均労働時間が34.3時間(前月比0.2時間減)へ減少したことが相対的な時間給賃金の上昇につながるテクニカル的な要因とされただけに、今回の雇用統計では、インフレ加速が本物かを見極めるとの観点からも時間給賃金が注目されました。
米時間給賃金 前年比(%)、 前月比(%)
- ※出所:米労働省
今回、時間給賃金は26.75ドルと前月から上昇したほか、週平均労働時間(34.5時間)も前月から0.1時間増となったことで、前年比、前月比ともに前月から上昇が鈍化しました。
今回の雇用統計で時間給賃金の伸びが鈍化したとはいえ、FRBの年内利上げ回数は年3回もしくは年4回へ上方修正されるのかを見極めるには材料不足と言わざるを得ず、今週発表の米消費者物価指数や小売売上高、さらには輸入物価指数などの指標を待つことになりそうです。
いずれにしても、パウエルFRB議長は、先の議会証言で「物価が上向くとの確信をやや深めている」と発言していることから、いよいよ来週のFOMCが注目されます。
債券・株式市場の動向には注意が必要です。