日米政治リスクが金融市場に影響を及ぼす
トランプ米大統領の主要閣僚の辞任・解任が相次ぐ中、大統領は今秋の中間選挙に向けての対策の一つとして、保護主義的姿勢を強めており、こうした事案を巡る政権内での不協和音が更なる主要閣僚の辞任・解任の噂に発展するなど、政権運営の先行き懸念が金融市場に影響を及ぼしています。
一方、国内では森友問題を巡る公文書の書き換えが問題視される事態が続いています。佐川国税局長(元理財局長)の辞任では沈静化せず、新たな事実が連日のように明らかになるなど、公文書管理について政治家の関与・忖度があったのではとの疑惑が安倍政権の支持率急低下につながっているようです。
こうした日米の政治リスクが経済のファンダメンタルズ以上に株式市場や為替市場に大きな影響を及ぼす状況が続いており、双方の問題が落ち着きを取り戻すまでには、なお時間を要すると思われます。
4月末の南北会談や、5月中とされる米朝首脳会談の行方、さらには4月上旬とされる日米首脳会談の具体的スケジュールも定まらない状況は、北朝鮮の非核化に向けた協調体制にも影響しかねないだけに、タイミングを損なうことにならないか懸念する声も聞こえ始めています。
利上げ回数の見通しは!?
3/9の米2月雇用統計では、時間給賃金(前年比)が2.6%と前月から鈍化したほか、米2月消費者物価指数(コア)も前年比+1.8%と前月から変わらずの結果に落ち着いたことから、インフレの急速な拡大に対する懸念が後退しました。
こうした結果を受けて、NY株式市場ではナスダックが1ヵ月半ぶりの史上最高値を更新するなど、「適温相場」への回帰を期待させる反応を示しました。しかしながら、こうした矢先、政治的な不透明感が上向きかけた金融市場に影を落としました。
今週のFOMCは、パウエル議長が議長就任後初めて臨む委員会だけに、市場との対話はもちろん、従来からの年3回の利上げ見通しを年4回へと上方修正させるのか注目されます。
昨年9月時点でのFOMC委員16名の内、5名が年4回の利上げを支持していたものの、12月には4名へと減少しており、今回FOMCではイエレン前議長が退任したことで委員15名の内、何名が年4回を主張するのか、またその際の株式・為替市場の反応が注目されます。
FOMC委員によるドットチャート(年末金利見通し)
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット
米小売売上高は伸び悩む
昨年12月の税制改革に対する企業収益の一段の改善や、賃金増による個人消費への効果が期待されたものの、3/14に発表された米小売売上高(前月比)は、3ヵ月連続でマイナス0.1%と伸び悩んでいることが確認されました。
これは、2/2に発表された1月雇用統計での時間給賃金の上昇を機に、急速なインフレの加速が懸念されたことで、個人消費の低下に影響を及ぼした可能性もあるだけに、今後の統計を見極める必要がありそうです。
米小売売上高 前月比(%)
- ※出所:米国勢調査局
また、JOLT求人件数が過去最高を更新したほか、3月ミシガン大消費者景況感指数が14年2ヵ月ぶりの高水準を記録し、インフレ期待も2.9%へ上昇しています。
一方、住宅着工件数が伸び悩むなど強弱交錯する米国の経済指標を踏まえて、パウエル新議長がインフレや景気見通しにどのような認識を示すのか、さらには保護主義的貿易が米国のみならず世界経済へ及ぼす影響について言及するのか、注目されます。
引き続き、トランプ政権の政治的問題が金融市場に及ぼす影響から神経質な値動きが予想される中で、FOMCでどのような景気・インフレ見通しを示すのか注目です。