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アップルの新機種発表とスマートフォン市場の成熟

2013/9/26   SBI証券

スマートフォン市場は既に成熟期に入り、今後は新興国市場に対するアプローチがカギになる。

アップルは、むやみに拡大を追求せず、ブランドと収益性を維持することを選択した。

スマートフォン市場における存在感低下と、新製品の成長性のどちらを重視するかが今後の見方を左右するだろう。

アップルの新機種発表会は、以前ほどではないにしても、今後のスマートフォン業界を占う上で重要なイベントだ。例えば、iPhone4では高解像ディスプレイを採用して私たちを驚かせたが、iPhone4Sでは自動言語処理システムSiriを搭載、そしてiPhone5 では高速通信(LTE)に本格対応するなど業界の新しいトレンドをいくつも産み出してきた。

その一方で、端末発表後に新鮮味がなかったという声が一部から挙がることも恒例となってきたように感じる。巨大な商品であるがゆえに事前に情報が漏れやすくなったということも理由としてはあるだろう。また、これだけ競争が激しい業界内でアップルだけがサプライズを起こし続けるのも難しいに違いない。

しかし、最大の理由はスマートフォン市場がすでに成熟期に差し掛かっているためではないか。

右図はスマートフォンの世界出荷台数と主要各社のスマートフォンの販売平均単価の推移を示している。

2008年には年間1.5億台程度だった出荷台数は驚異的な伸びを続け 2012年には早くも年間7億台を突破したが、その一方で、各社スマートフォンの平均単価は下落し続けてきたことがわかる。

唯一の例外はアップルで、強力なブランド力を武器に価格プレミアムを維持することに成功している。

問題は、この構図が今後も続くかどうかだ。

カギを握るのは新興国向けの戦略だ。最新の予測によれば、2013年のスマートフォンの世界出荷は10億台(前年比+40%程度)を超えるとみられており、そのうち新興国での販売台数が6割を占める。iPhone が登場しスマートフォンというジャンルを確立してから6年、既にスマートフォンは真新しい商品ではなくなってきており、どのように新興国市場に対してアプローチするかに焦点が移りつつあるのだ。

新興国では当然のことながら低価格の端末が好まれる傾向が強いため、携帯電話各社は、@販売台数とシェアを重視して単価と利益率が低い新興国向けの端末に注力するのか、Aいたずらにシェアを追い求めずプレミアム感と収益性を維持するか、の選択を強いられることになる。

そして、今回の発表会でアップルが選んだのは、どちらかと言えば後者であった。

新興国向けモデルと発表前から期待されていたiPhone5c(16GBモデル)の本体価格は、通信キャリアとの2年契約込みで$99と発表された。これは実は、アップルが過去の発表会において一世代前の機種に対して設定してきた値段と同じなのだ。そしてiPhone5c 自体、一世代前にあたるiPhone5 の機能・部品の大半をそのまま受け継いでいる。

要するにアップルは、今回の発表においても、従来からの戦略を大きく転換しなかったのである。

新興国向けの低価格路線に舵を切ることを避けてブランド力と収益性を維持することを選択した判断は、今のところ成功しているように見える。事実、今回発表されたiPhone5s・5cの発売後3日間の販売台数は900万台を超えたと発表された。5s・5cの内訳は不明だが、これはiPhone5の時の500万台を大きく上回っており、改めてiPhoneの築き上げたブランドの大きさを示していると言えるだろう。

ただし今後、Android陣営から新興国をターゲットとした機種が登場し、それに伴い「アップルのスマートフォン市場でのシェアが低下」、「Androidが新興国で大きく販売数を伸ばす」といった刺激的な見出しが再びメディアをにぎわす可能性は高いと見る。したがって、短期的にはアップルに対して弱気な見方をする投資家が増えたとしても決して驚きではない。

ただしそれは、アップルの競争力が衰えたからではなく、スマートフォン市場が成熟期に入ったことによる当然の結果だと考えるほうが自然なのではないだろうか。

スマートフォン市場におけるシェアを追求しない代わりに、アップルは、ブランド力と収益性を維持することに成功するだろう。そしてそれは、「次の」成長商品を展開するうえで何よりも重要なファクターとなり得る。つまり、アップルに対する中長期的な見方は、スマートフォン市場における存在感の低下を重視するか、「次の」商品の成長ポテンシャルを見るかによって、180度変わってくるのである。

(ご参考)

<米国株式>

ティッカー

銘柄(英語)

事業内容

市場

AAPL

パソコン、コミュニケーション機器等の製造販売

NASDAQ

<中国株式>

ティッカー

銘柄(英語)

事業内容

市場

00992

コンピュータメーカー。子会社を通じてPCおよび携帯電話の製造・販売も手掛ける。

香港 メインボード

<韓国株式>

銘柄コード

銘柄(英語)

事業内容

市場

005930

サムスングループの総合電器、電機メーカー。韓国最大の輸出企業。

KOSPI

066570

LGグループの総合電器メーカー。家電製品、PC、携帯電話、CD-ROMなどを生産。

KOSPI

<日本株式>

銘柄コード

銘柄(英語)

事業内容

市場

6758

国内最大手級の総合電器メーカー。

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