2013年に最もダウンロードされたゲームの1つ、「キャンディークラッシュ」を開発したキング社がIPOを予定している。
「キャンディークラッシュ」は日次アクティブユーザーが9,300万人にも及ぶ、まさにお化けゲームである。
次のヒットを産み出し、「キャンディークラッシュ」の依存度を下げられるかどうかが、更なる成長のカギになるだろう。
ゲーム「キャンディークラッシュ」のヒットで有名な「キング デジタル エンターテイメント (以下キング)」の新規上場が迫ってきた。ニューヨーク証券取引所に上場する計画で、ティッカーは"KING"になる予定である。「アングリーバード」で有名なRovio社など、モバイルゲーム業界の大手は非上場企業が多いが、今後の業界動向を占う上でも注目の案件と言える。
本稿執筆時点ではまだ正確なスケジュールは判明していないが、新規公開は3/24の週が有力と言われている。キング社の代表作「キャンディークラッシュ」は、一日のアクティブユーザー数が全世界でなんと9,300万人にも及ぶというが、日本人にとって最もなじみ深いモバイルゲームの一つである「パズル&ドラゴンズ」の全世界における総ダウンロード数が3,100万(うち国内2,500万)であることを考えると、まさにお化けゲームと形容するのにふさわしく、それゆえ投資家の皆様の関心もかなり高まっているようだ。そこで今回は、キング社を中心にゲーム業界のプレーヤーを紹介させて頂きたい。
まず図1だが、当社でお取引が可能なゲームデベロッパーの四半期毎の2011年以降の売上推移を米ドルで比較したものである(キング社はデータ入手が可能な2012年以降の数字のみ)。
図1
(Bloombergデータ、上場申請書類を基にSBI証券作成)
キング、そして「パズル&ドラゴンズ」をヒットさせたガンホーオンラインエンターテイメント(以下ガンホー)の2社の売上の伸びが著しいことがお分かり頂けるだろう。そしてこのキングの売上の伸びを支えているのが、月間アクティブユーザー数の増加である。
キングはスキマ時間により多くの人に遊んでもらうことを狙っており、一回のゲームプレイが数分以内に終わることや、ゲームとしてのひねりを加えつつも難しくしすぎないことなどに腐心している。図2に見られるアクティブユーザー数の増加は、その戦略が支持された結果なのだろう。
図2
(上場申請書類を基にSBI証券作成)
ただし懸念点がないわけではない。
現在のキングの売上は「キャンディークラッシュ」に支えられている。図1におけるキングとガンホーの売上をもう一度ご覧頂くと、両社とも4四半期ほど急激に成長を続けた後、売上増加のペースが鈍化していることがわかる。このように、特定のモバイルゲームが業績を急激に押し上げる期間はだいたい一年程度なのかもしれない。
今後、キングが成長を続けられるかどうかのポイントは大きく分けて3つであろう。1つ目は、図2に見られるアクティブユーザー数の伸びを維持できるかどうか、2つ目は、「キャンディークラッシュ」に続くヒットゲームを産み出せるか、そして3つ目は、今回調達した資金を活かしM&Aなどに踏み切れるか、である。
表1
(ガンホー決算説明書類を基にSBI証券作成)
表1は、2013年のiOS及びGoogle Playにおけるゲームの売上トップ10を並べたものだが、Supercell社、Kabam社のゲームがそれぞれ2本ランクインしている点にご注目頂きたい。またガンホーも、ここにランクインしたのは「パズル & ドラゴンズ」の一つのみだが、「ケリ姫スイーツ」、「ディバインゲート」などの作品の評価もかなり高いようである。
要するに、力のあるゲーム会社は続けてヒットを産み出すことができるのだ。
表2はキングの代表的なゲームを並べたものだが、「キャンディークラッシュ」以外のゲームでも多くのユーザーを抱えていることがわかる。特に「ペット レスキュー サガ」は昨年のリリース以降約半年でここまでユーザー数を増やしており、今後も成長がおおいに期待できるタイトルだと言えるだろう。
表2
(13年12月時点の数字、上場申請書類を基にSBI証券作成)
最後に株価についてだが、IPO仮条件の21-24ドルの上限24ドルを適用した場合、キングの時価総額は75億ドル強になる。表3では大手ゲーム会社を比較しているが、時価総額やバリュエーション面などは、かなりガンホーに似た値付けになりそうだ。ただし、ここで示したキングの予想PER、予想PSRは昨年10‐12月期の数字をベースに算出したものである(キング以外の7社は今年度のアナリスト予想がベース)。従って、今後更なる成長を予想される投資家にとっては、十分に魅力的な価格に映るのではないだろうか。
表3
銘柄 |
コード |
時価総額 |
売上高 |
バリュエーション |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2013年 |
2012年 |
予想PER |
予想PSR |
|||||
キング デジタル エンターテイメント |
KING |
7,558 |
1,884 |
164 |
11.8 |
3.1 |
||
3765 |
6,811 |
1,666 |
322 |
11.8 |
4.1 |
|||
EA |
9,164 |
3,661 |
3,956 |
22.0 |
1.6 |
|||
ATVI |
14,960 |
4,583 |
4,856 |
15.5 |
2.5 |
|||
ZNGA |
4,788 |
873 |
1,281 |
681.4 |
1.5 |
|||
3632 |
2,420 |
1,469 |
2,051 |
13.3 |
1.6 |
|||
2432 |
2,947 |
1,993 |
2,419 |
9.4 |
3.3 |
|||
9684 |
2,347 |
1,533 |
1,664 |
34.1 |
1.5 |
(3/17時点。Bloombergデータ、上場申請書類を基にSBI証券作成)
(予想データはBloombergコンセンサス、キングのみ昨年10-12月期の数字を使用)
- ※上記実績は過去のものであり、将来の運用成果等を保証するものではありません。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。