アメリカのIPO市場が活況だ。1-3月期としては2000年以来の件数を記録したようだ。
今後についても大型案件が続々と登場する見通しで、当社でも4日(金)から新たに2銘柄を取り扱う予定だ。
アイエムエスヘルスホールディングスは医薬品業界の優良プレーヤー、グラブハブはオンラインフードデリバリーで急成長中の新興銘柄である。
アメリカのIPO市場が活況を呈している。例年だとこの時期はややおとなしいものなのだが、今年は事情が異なるようで、1-3月期としては2000年以来のIPO件数を記録しているらしい。当社でも、昨年11月のツイッター(TWTR)、ライスエナジー(RICE)、キングデジタルエンターテインメント(KING)などの注目銘柄を上場初日から取り扱ってきたが、いずれも投資家の皆様からの反応は上々であった。今後についても、多くの銘柄の上場が予定(あるいは予想)されている。
そこで今回は、本日上場予定のアイエムエス ヘルスホールディングス(IMS)とグラブハブ(GRUB)を紹介したい。
アイエムエスヘルスホールディングス(IMS):着実な成長が見込める医薬品業界の有力プレーヤー
アイエムエスヘルスホールディングス(IMS)はメディカル業界向けリサーチとコンサルティングが主な業務で、すでに50年以上の歴史があり世界100ヶ国以上で事業を展開している。専門性の高い業界でネットワークやノウハウを蓄積してきたことから、当社はすでに業界内で確固とした地位を築き上げていると考えるのが自然だろう。
図1は、当社の過去3期分の業績推移となるが、売上が着実に伸びていることと、営業利益率がかなり高いことが特徴だ。すでに十分な地位を確立した企業であるため、歴史の浅いIPO銘柄がしばしば見せるような爆発的な業績拡大は期待しづらいが、今後の業界自体の成長にあわせて当社の業績も堅実に伸びていくことが予想できる。また、営業利益率が高いのは、新規参入が難しい業界の中で、当社が十分なシェアを握っていることの証左と言えそうだ。ただし、依然高水準とはいえ、利益率が徐々に低下傾向にある点については精査が必要かもしれない。
図2は、医薬品業界の過去と将来の5年間の成長率を示したものである。世界全体で見ると2007-12年の業界の成長率と2012-17年の業界の成長率はそれぞれ+5.3%になると予想されている。ご覧のように、けん引役は引き続き新興国となるが、日本についても(おそらくは高齢化の進展が背景だが)欧米を上回る市場成長率が予想されているのは興味深い。いずれにせよ、医薬品業界自体の成長に沿って当社の業績も順調に伸びていく可能性が高いだろう。
図1:アイエムエスヘルスの業績推移

(上場申請書類を基にSBI証券作成)
図2:医薬品業界の地域別成長率

(IMS Japanホームページを基にSBI証券作成)
今回のアイエムエスヘルスホールディングスのIPOは調達額としては今年2番目の大きさなのだが、仮条件(18-21ドル)の上限株価を適用して医薬品業界の大手4社と比較してみたのが表1である。売上高の規模こそ差はあるが、当社の営業利益率が医薬品大手と同水準にあることが確認できるだろう。今後、ヘルスケア業界全体の成長力と同程度の業績成長が期待できる上、新規参入によって地位を脅かされるリスクが小さいことから、アイエムエスヘルスホールディングスは中長期的に着実な成長が期待できる医薬品業界における、有力なプレーヤーとして捉えるのが良さそうだ。PERで比較した場合には一見割高に映るが、これは当社の純利益の水準が極端に低いためであろう。一方で、PSRで見た場合には大手4社と比較してもやや割安であるため、十分に納得感のある株価だと考えられる。
表1
銘柄 |
コード |
時価総額 |
売上高(百万ドル) |
営業利益率 |
PER |
PSR |
|||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
11年度 |
12年度 |
13年度 |
14年度予 |
11年度 |
12年度 |
13年度 |
|||||
IMS |
7.0 |
2,364 |
2,443 |
2,544 |
- |
29.5% |
27.6% |
25.5% |
85.0 |
2.7 |
|
JNJ |
277.8 |
65,030 |
67,224 |
71,312 |
74,073 |
24.8% |
25.3% |
26.6% |
16.8 |
3.9 |
|
PG |
218.5 |
81,104 |
83,680 |
84,167 |
85,155 |
19.1% |
17.8% |
17.6% |
18.3 |
2.6 |
|
PFE |
205.4 |
65,259 |
54,657 |
51,584 |
49,989 |
32.4% |
31.2% |
31.7% |
14.3 |
4.0 |
|
MRK |
166.9 |
48,047 |
47,267 |
44,033 |
43,034 |
21.7% |
22.6% |
17.4% |
16.4 |
3.8 |
(Bloomberg、上場申請書類を基にSBI証券作成)
(アイエムエスを除き、PER/PSRは14年度アナリスト予想ベース)
グラブハブ(GRUB):オンラインフードデリバリーで業績急拡大中の新興銘柄!
グラブハブ(GRUB)はオンラインフードデリバリーを手掛ける企業である。日本におけるいわゆる宅配ピザのようなデリバリーサービスは、人口密度が低く効率が悪いためか、アメリカにおいてこれまであまり発達していない印象だった。とはいえ、当社の本拠地であるシカゴは寒さと強風により体感温度がマイナス20-30度になることも珍しくなく、デリバリーの潜在ニーズは強かったのだろう。事実、当社の業績は現在急速に拡大しつつある。
当社の工夫の一つは、地元のレストランをまとめて表示できるようにしたことだろう。サイトやアプリから自分の現在地と食べたいジャンルを入力すると、その場所にデリバリーをしてくれるレストランのリストが表示される仕組みなのだが、これにより、思わぬレストランを発見できるため、選択肢がぐっと広がることになる。
また、レストラン側に対してはインターネットを通じた注文を管理するソフトウェアを提供している。このことにより、レストラン側は注文の整理に煩わされることなく、調理と宅配に集中することができるのだ。もちろん、新しい顧客層の発掘にもつながるだろう。以上のように、グラブハブは顧客側にもレストラン側にもメリットをもたらすことができるのである。
図3は、当社の業績推移だが、まだビジネスとして成長軌道に乗り始めたばかりの段階にあるため、売上高の成長率が高いのが特徴である。にも関わらず、既に営業利益を計上している点も評価できよう。
この業績を支えているのがアクティブユーザーの伸びだが、図4で当社のアクティブユーザー数と日次平均注文件数が順調に伸びていることを確認頂けるだろう。2013年において、アクティブユーザー数が前年比で約3.4倍に増えているにも関わらず、日次平均注文件数の伸びは前年比で+74%にとどまっているが、これは昨年にライトユーザーが急激に流れ込んできたことを意味している。彼らを今後リピーターに転換することで、さらなる売上の拡大が期待できる。
図3:グラブハブの業績推移

(上場申請書類を基にSBI証券作成)
図4:グラブハブのユーザー/注文数推移

(上場申請書類を基にSBI証券作成)
表2ではグラブハブと関連がありそうな銘柄を幅広くピックアップしている。グラブハブはまだ若い企業で業績の拡大期にあたることから、既にある程度成熟している企業よりも、成長期にあるインターネット企業の評価などを参考にするべきだろう。人気の高さからIPOの仮条件は23-25ドルに引き上げられているが、このレンジの上限の25ドルを適用した場合、前年度ベースのPSRは14倍となる。これはネット企業の中でも一見高い数字に映るが、これは上の図4で述べたアクティブユーザ数の増加ペースなどを鑑み、今後の当社のビジネス拡大に自信を持つ投資家が多い事の表れだろう。
表2
銘柄 |
コード |
時価総額 |
売上高(百万ドル) |
PER |
PSR |
概要 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
11年度 |
12年度 |
13年度 |
14年度予 |
||||||
GRUB |
2.0 |
61 |
82 |
137 |
- |
290.4 |
14.3 |
オンラインでの食料品デリバリーサービスを提供 |
|
DPZ |
4.4 |
1,652 |
1,678 |
1,802 |
1,905 |
26.8 |
2.3 |
宅配ピザチェーンを展開 |
|
YUM |
34.1 |
12,626 |
13,633 |
13,084 |
14,546 |
20.4 |
2.3 |
ケンタッキーフライドチキン、ピザハット、タコベルをチェーン展開 |
|
EXPE |
9.9 |
3,449 |
4,030 |
4,771 |
5,568 |
19.0 |
1.8 |
オンライン旅行サービス最大手 |
|
Z |
3.7 |
66 |
117 |
198 |
295 |
1342.2 |
12.4 |
住宅価格情報サイトを運営 |
(Bloomberg、上場申請書類を基にSBI証券作成)
(グラブハブを除き、PER/PSRは14年度アナリスト予想ベース)
- ※上記実績は過去のものであり、将来の運用成果等を保証するものではありません。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。