ツイッターの株価は高値から4割以上下落したが、ファンダメンタルズ上では悲観する要素は見当たらない。
中期的な成長を先に取り込みすぎた株価の是正だったと考えられる。
本日新規上場を果たすウェイボー(WB)は、当社特有のリスクはあるが、他のSNSと比べて手が出しやすそうだ。
17日、中国版ツイッターとして知られるウェイボー(WB)が新規上場を果たす予定である。しかし最近の米国は、昨年市場をけん引したインターネット株やバイオ株が軒並み調整局面にあり、IPOには絶好のタイミングとは言えないかもしれない。また特にツイッターに至っては、昨年12月の高値から40%以上も下落しており動向が気になっている方も多いだろう。そこで今回は、インターネット関連銘柄(特にSNS関連)の動向を確認しながら、ウェイボーの株価についても考えてみたい。
図1は、ウェイボー、ツイッター、フェイスブックの月間アクティブユーザー数の推移である。最新のデータである昨年10-12月期で比べると、フェイスブックはツイッターの約5倍、ウェイボーの約10倍である。この圧倒的なネットワークが、フェイスブックの企業価値を決めていると言える。
また、図2はそれぞれ前年同期と比較した月間アクティブユーザーの成長率である。3社とも成長率が徐々に低下傾向にあるが、これはサービスや商品の普及時にみられる自然な現象であり、特に悲観する要素は見当たらない。この図からは、(1)規模の大きいフェイスブックは、成長の段階として他の2社よりもおそらくは2年程度先に進んでいること、また、(2)ツイッターとウェイボーは成長のステージとしてはほぼ同じ段階にあることなどがわかる。おそらく今後も、徐々に成長率を低下させながらユーザー数を伸ばしていくことになりそうだ。
図1:月間アクティブユーザー推移
図2:月間アクティブユーザーの成長率(前年比)
(上場申請書類、各社開示資料を基にSBI証券作成)
ウェイボーの月間アクティブユーザー数は、ツイッターの約半分の規模だ。これは、ウェイボーのユーザーがほぼ中国国内に限定されるからである。とはいえ、将来の成長余地についてはまだまだ心配をする必要はなさそうだ。図3をご覧頂くとわかるように、中国国内のモバイルインターネットユーザーは昨年12月の時点で5億人に達しており、しかも今後は割安なスマートフォンの登場やLTEインフラの整備などがさらに普及を後押しすると考えられているからである。月間アクティブユーザー数の伸びが急に止まることは、まず、ないだろう。
また、図4のアクティブユーザー1人あたり広告収入の推移は興味深い。ユーザー1人あたりの広告収入の大きさは、月間アクティブユーザーの多い順に並んでいるのだ。ユーザー数が圧倒的に多いフェイスブックの方が広告効果が高いからだと素直に見ることもできそうだが、ツイッターやウェイボーは広告ビジネスに注力するタイミングをあえて遅らせて、ユーザー数の獲得やインターフェースの整備に集中していたことも一因だろう。だとすると、後発2社の1人あたり広告収入にはまだまだ伸びる余地があると考えるべきだろう。事実、10-12月期のツイッターの1人あたり広告収入はそれまでよりも大きく伸びている。
このように見ていくと、10-12月期のツイッターの決算は、ほぼ想定通りの順調なユーザー数の伸びと、想定以上の広告収入の伸びによる良好な内容であり、特に不安材料が顕在化したわけではなさそうだ。直近の株価の下落は、あくまでも期待が高まりすぎて株価が先行して上昇した分の是正であり、ツイッターの成長シナリオが崩れたわけではないと考えてよいだろう。
図3:中国のインターネットユーザー推移
図4:月間アクティブユーザー1人あたり広告収入
(上場申請書類、各社開示資料を基にSBI証券作成)
最後に、現在の株価について考察してみたい。なお、ウェイボーはIPOの仮条件(17-19ドル)の上限、他社は4/14の株価をそれぞれ適用している。
以前もご紹介させて頂いたが、高成長だが利益水準の安定しないインターネット企業の評価として、もっとも手っ取り早い目安となるのがPSR(株価÷1株当たり売上高)である。この数字は、成長に対する期待の高さによって異なってくるため一概には言えないが、通常の場合であれば10倍を超えている銘柄は割安とは言い難い。
公募価格が26ドルに設定されたツイッターの株価は一時70ドルを超えていたが、その頃は2014年度ベースのPSRが30倍を超える水準になっていた。これは中期的なユーザー数/広告収入の伸びを先に織り込んでしまった状態だったと考えられる。
一方、本日新規上場を果たす予定のウェイボーの株価だが、IPO仮条件の上限(19ドル)を適用すると13年度ベースのPSRは20.5倍。ただし、14年度には売上が倍以上に伸びる可能性が高いことを踏まえると、今年度ベースのPSRは10倍を割り込み、ツイッターの18.7倍、フェイスブックの13.4倍をかなり下回る水準になりそうだ。当銘柄特有のリスク(中国銘柄であるゆえの監査リスク、政府の方針一つで競争環境が変わるリスク)を無視することはできないが、この株価であれば他のSNS銘柄よりも値ごろ感があるのではないだろうか。
(新規公開銘柄への注文時の注意点についてはこちらをご一読ください)
表1
銘柄 |
コード |
時価総額 |
株価 |
売上高 | PSR | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
12年 |
13年 |
14年予 |
13年 |
14年 |
||||
WB |
3,866 |
19.00 |
65.9 |
188.3 |
n/a |
20.5 |
n/a |
|
TWTR |
23,175 |
40.87 |
316.9 |
664.9 |
1,240.7 |
34.9 |
18.7 |
|
FB |
152,742 |
58.89 |
5,089.0 |
7,872.0 |
11,392.3 |
19.4 |
13.4 |
|
P |
4,909 |
25.27 |
274.3 |
637.9 |
892.3 |
7.7 |
5.5 |
|
LNKD |
19,795 |
165.78 |
972.3 |
1,528.5 |
2,115.7 |
13.0 |
9.4 |
|
AMZN |
145,364 |
315.91 |
61,093.0 |
74,452.0 |
89,909.6 |
2.0 |
1.6 |
|
GOOG |
362,455 |
532.52 |
50,175.0 |
59,825.0 |
53,603.2 |
6.1 |
6.8 |
(Bloombergデータを基にSBI証券作成)
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