今回は大ヒット連発で盛り上がる、米国の映像コンテンツ産業への投資を考えてみます。同産業は世界的に競争力が高く魅力的な投資先です。ただ、主要プレーヤーは大手メディア企業の一部門になっているケースが多く、ストレートな投資がしにくい分野でもあります。そこで、米大手メディア企業の事業内容を整理して、どの銘柄を持つことで映像制作以外のどんな事業も併せ持つことになるのか確認して、映像コンテンツ産業への投資を考えてみます。足元では、「アベンジャーズ」のヒット、スターウォーズの最新作公開、上海ディズニーランドの開業を控えるウォルト ディズニー、「ジュラシック・ワールド」「ワイルド・スピード SKY MISSION」が大ヒットとなっているユニバーサル・ピクチャーズをもつコムキャストが注目できます。
銘柄 |
株価(7/10) |
52週高値 |
52週安値 |
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116.44ドル |
117.21ドル |
78.54ドル |
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63.19ドル |
63.55ドル |
49.33ドル |
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88.63ドル |
89.21ドル |
67.78ドル |
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33.11ドル |
39.27ドル |
31.01ドル |
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33.38ドル |
44.99ドル |
28.72ドル |
大ヒット連発!! 2015年はハリウッドの当り年!? |
「ワイルド・スピード」「ジュラシック・ワールド」「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」と今年公開のハリウッド映画が歴代興行収入10位に入る大ヒットになっています。「ジュラシック・ワールド」の日本公開は8月5日ですので、数字はまだまだ伸びそうです。人気シリーズの「ターミネーター:新起動/ジェニシス」(パラマウント)も7月から公開されています。
また、年末にはウォルト ディズニーからシリーズ10年ぶりの新作「スターウォーズ/フォースの覚醒」が予定され、今年はハリウッドの当り年になりそうです。今回は大ヒット連発で盛り上がる米映像コンテンツ産業への投資について考えてみます。
図表1: 世界歴代映画興行収入
- 注:2015/7/13時点
- ※各種報道よりSBI証券が作成
魅力的な米国の映像コンテンツ産業 |
ハリウッドを中心とする米国の映画・テレビドラマなどの映像コンテンツは、世界的に競争力が高い産業です。平成25年版の「情報通信白書」によれば、米国の映像産業は12年に1,813億ドルで世界の約半分を占めるとされ、高い競争力がうかがえます。
そのプレーヤーを見ると、映画では図表1にあげた6つのメジャースタジオが中心です。映画の歴代興行収入のトップ20はすべて米国資本による制作であり、その競争力は圧倒的です。また、テレビドラマでは、これらスタジオによる制作に加えて、ABC、NBC、CBSの3大テレビネットワーク、FOXテレビなどが加わります。
次に、その成長性をみてみましょう。図表2は、映像コンテンツを制作しているメディア大手7社(株式時価総額ベース)の映像コンテンツ関連収入の推移を見たものです。個々のプロジェクトは当たり外れのリスクが大きいものですが、業界全体としては年率5〜7%の比較的高く安定した成長を遂げていることがわかります。ブロードバンド回線や4Gなど通信インフラの整備、オンデマンドサービスの普及によって動画コンテンツへの需要は今後も高まる傾向にあると見られます。
一方、このように魅力的な産業ですが、大手のスタジオでも単独で上場しているところはなく、大手メディア企業の一部門となっています。そこで(2)では、映像制作のメジャースタジオがどの企業に保有されていて、仮にその企業の株を保有した場合、それ以外の分野でどのようなエクスポージャーを取ることになるか確認して投資先を検討してみましょう。
図表2: 主要映画会社の配給収入シェア(米国、2014年)
- ※The NumbersデータをもとにSBI証券が作成
図表3: 映像コンテンツ関連収入の推移
- 注:ウォルト ディズニー、コムキャスト、タイム ワーナー、21世紀フォックス、バイアコム、CBS、ディスカバリー コミュニケーションズの映像コンテンツ関連収入を合計したものです。
- ※ブルームバーグのデータをもとにSBI証券が作成。
米大手メディア企業の事業内容を検討 |
図表4は、大手メディア企業の事業内容を直近の決算期について、部門の売上構成とその内容について整理したものです。(2)で取り上げたメジャースタジオは、これら企業の一部門となっていて、赤字で記してあります。尚、ソニー・ピクチャーズのソニー売上げに占める構成比は、15年3月期に11%です。
投資先を検討する際の視点としては、やはり、海外展開できるコンテンツがどの程度を占めているかが重要と思われます。米国市場は巨大ですが成長率は限られます。新興国で増加する中間層に売れるコンテンツをどれくらい創り出せているかがポイントで、その点、我々日本人が目にするコンテンツの比率から判断しても大きな間違いはないと思われます。
ウォルト ディズニーは、映像コンテンツが66%を占めるほか、31%を占めるディズニーランドは映像ではないものの国際的に人気の高いコンテンツであり、メディア企業として総合的に魅力の高い投資先だと言えるでしょう。映画制作自体の比率は15%ですが、キャラクターのライセンスを含めると2割を超えます。
コムキャストは、米国でのケーブルTVサービスが主力で、映像コンテンツの比率は高くありません。ただ、今年はユニバーサル・ピクチャーズが配給する「ジュラシック・ワールド」「ワイルド・スピード SKY MISSION」が大ヒットとなっているため、その点から注目できます。ケーブルTVの足元が堅調のため、映画のヒットは業績の上振れに繋がる可能性が高くなっています。
タイム ワーナーは、ワーナー・ブラザーズの売上構成比が44%で、メジャースタジオへのエクスポージャーを最も高く取れる点で注目できるでしょう。
21世紀フォックスは、20世紀フォックスが映画で14年にトップシェアとなっています。しかし、ひところ勢いのあったテレビ局のFOXの視聴者数が停滞しているようです。人気ドラマなどが出てくる際には、改めて注目できるでしょう。
CBSは、米国内向けのコンテンツが中心のため、成長という面では見劣りしそうです。
バイアコムは、映像コンテンツ100%の会社で注目できますが、このところパラマウント・ピクチャーズのシェアが低下傾向にあるほか、ケーブルテレビ向けで看板番組となっている音楽のMTVでは、インターネットとの競合の影響がありそうです。
ディスカバリー コミュニケーションズは、ドキュメンタリー番組のため大ヒットはありませんが、海外市場への浸透による安定成長が期待できると思われます。
図表4は、ここで取り上げた各社の営業利益の実績およびコンセンサス予想の推移を示しています。米国ではよくあることですが、コムキャスト、ウォルト ディズニーといった大手企業のほうがM&Aも含めて成長しています。タイム ワーナー、21世紀フォックスは、14年度実績までは停滞ぎみですが、15年度、16年度は改善する見通しになっています。一方、バイアコム、CBSは伸び悩みの傾向です。
図表4: 大手メディア企業の事業内容
- ※会社資料をもとにSBI証券が作成
図表5: 映像コンテンツ主要企業の営業利益推移
- 注:バイアコムの10年度は、決算期変更のため09年度(09年12月期)の数値によります。
- ※会社資料、ブルームバーグデータをもとにSBI証券が作成。
注目銘柄のポイント |
以上の検討を踏まえて、注目銘柄についてポイントをコメントしています。株価が堅調に推移していて、足元で材料のある、ウォルト ディズニー、コムキャストが特に注目できるでしょう。
銘柄名 | 株価 (7/10) |
116.44ドル | 予想PER (倍) |
23.0 | |
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銘柄名 | 株価 (7/10) |
63.19ドル | 予想PER (倍) |
19.1 | |
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ポイント |
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銘柄名 | 株価 (7/10) |
88.63ドル | 予想PER (倍) |
19.1 | |
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ポイント |
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銘柄名 | 株価 (7/10) |
33.11ドル | 予想PER (倍) |
17.9 | |
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ポイント |
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銘柄名 | 株価 (7/10) |
33.38ドル | 予想PER (倍) |
17.9 | |
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ポイント |
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※株価日足チャートは、2015/7/10時点のものです。