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“大ヒット連発!! 2015年はハリウッドの当り年!? 米映像コンテンツ産業への投資を考える”

2015/7/15

今回は大ヒット連発で盛り上がる、米国の映像コンテンツ産業への投資を考えてみます。同産業は世界的に競争力が高く魅力的な投資先です。ただ、主要プレーヤーは大手メディア企業の一部門になっているケースが多く、ストレートな投資がしにくい分野でもあります。そこで、米大手メディア企業の事業内容を整理して、どの銘柄を持つことで映像制作以外のどんな事業も併せ持つことになるのか確認して、映像コンテンツ産業への投資を考えてみます。足元では、「アベンジャーズ」のヒット、スターウォーズの最新作公開、上海ディズニーランドの開業を控えるウォルト ディズニー、「ジュラシック・ワールド」「ワイルド・スピード SKY MISSION」が大ヒットとなっているユニバーサル・ピクチャーズをもつコムキャストが注目できます。

銘柄

株価(7/10)

52週高値

52週安値

116.44ドル

117.21ドル

78.54ドル

63.19ドル

63.55ドル

49.33ドル

88.63ドル

89.21ドル

67.78ドル

33.11ドル

39.27ドル

31.01ドル

33.38ドル

44.99ドル

28.72ドル

1

  大ヒット連発!! 2015年はハリウッドの当り年!?

「ワイルド・スピード」「ジュラシック・ワールド」「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」と今年公開のハリウッド映画が歴代興行収入10位に入る大ヒットになっています。「ジュラシック・ワールド」の日本公開は8月5日ですので、数字はまだまだ伸びそうです。人気シリーズの「ターミネーター:新起動/ジェニシス」(パラマウント)も7月から公開されています。

また、年末にはウォルト ディズニーからシリーズ10年ぶりの新作「スターウォーズ/フォースの覚醒」が予定され、今年はハリウッドの当り年になりそうです。今回は大ヒット連発で盛り上がる米映像コンテンツ産業への投資について考えてみます。

図表1: 世界歴代映画興行収入

  • 注:2015/7/13時点
  • ※各種報道よりSBI証券が作成
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  魅力的な米国の映像コンテンツ産業

ハリウッドを中心とする米国の映画・テレビドラマなどの映像コンテンツは、世界的に競争力が高い産業です。平成25年版の「情報通信白書」によれば、米国の映像産業は12年に1,813億ドルで世界の約半分を占めるとされ、高い競争力がうかがえます。

そのプレーヤーを見ると、映画では図表1にあげた6つのメジャースタジオが中心です。映画の歴代興行収入のトップ20はすべて米国資本による制作であり、その競争力は圧倒的です。また、テレビドラマでは、これらスタジオによる制作に加えて、ABC、NBC、CBSの3大テレビネットワーク、FOXテレビなどが加わります。

次に、その成長性をみてみましょう。図表2は、映像コンテンツを制作しているメディア大手7社(株式時価総額ベース)の映像コンテンツ関連収入の推移を見たものです。個々のプロジェクトは当たり外れのリスクが大きいものですが、業界全体としては年率5〜7%の比較的高く安定した成長を遂げていることがわかります。ブロードバンド回線や4Gなど通信インフラの整備、オンデマンドサービスの普及によって動画コンテンツへの需要は今後も高まる傾向にあると見られます。

一方、このように魅力的な産業ですが、大手のスタジオでも単独で上場しているところはなく、大手メディア企業の一部門となっています。そこで(2)では、映像制作のメジャースタジオがどの企業に保有されていて、仮にその企業の株を保有した場合、それ以外の分野でどのようなエクスポージャーを取ることになるか確認して投資先を検討してみましょう。

図表2: 主要映画会社の配給収入シェア(米国、2014年)

  • ※The NumbersデータをもとにSBI証券が作成

図表3: 映像コンテンツ関連収入の推移

  • 注:ウォルト ディズニー、コムキャスト、タイム ワーナー、21世紀フォックス、バイアコム、CBS、ディスカバリー コミュニケーションズの映像コンテンツ関連収入を合計したものです。
  • ※ブルームバーグのデータをもとにSBI証券が作成。
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  米大手メディア企業の事業内容を検討

図表4は、大手メディア企業の事業内容を直近の決算期について、部門の売上構成とその内容について整理したものです。(2)で取り上げたメジャースタジオは、これら企業の一部門となっていて、赤字で記してあります。尚、ソニー・ピクチャーズのソニー売上げに占める構成比は、15年3月期に11%です。

投資先を検討する際の視点としては、やはり、海外展開できるコンテンツがどの程度を占めているかが重要と思われます。米国市場は巨大ですが成長率は限られます。新興国で増加する中間層に売れるコンテンツをどれくらい創り出せているかがポイントで、その点、我々日本人が目にするコンテンツの比率から判断しても大きな間違いはないと思われます。

ウォルト ディズニーは、映像コンテンツが66%を占めるほか、31%を占めるディズニーランドは映像ではないものの国際的に人気の高いコンテンツであり、メディア企業として総合的に魅力の高い投資先だと言えるでしょう。映画制作自体の比率は15%ですが、キャラクターのライセンスを含めると2割を超えます。

コムキャストは、米国でのケーブルTVサービスが主力で、映像コンテンツの比率は高くありません。ただ、今年はユニバーサル・ピクチャーズが配給する「ジュラシック・ワールド」「ワイルド・スピード SKY MISSION」が大ヒットとなっているため、その点から注目できます。ケーブルTVの足元が堅調のため、映画のヒットは業績の上振れに繋がる可能性が高くなっています。

タイム ワーナーは、ワーナー・ブラザーズの売上構成比が44%で、メジャースタジオへのエクスポージャーを最も高く取れる点で注目できるでしょう。

21世紀フォックスは、20世紀フォックスが映画で14年にトップシェアとなっています。しかし、ひところ勢いのあったテレビ局のFOXの視聴者数が停滞しているようです。人気ドラマなどが出てくる際には、改めて注目できるでしょう。

CBSは、米国内向けのコンテンツが中心のため、成長という面では見劣りしそうです。

バイアコムは、映像コンテンツ100%の会社で注目できますが、このところパラマウント・ピクチャーズのシェアが低下傾向にあるほか、ケーブルテレビ向けで看板番組となっている音楽のMTVでは、インターネットとの競合の影響がありそうです。

ディスカバリー コミュニケーションズは、ドキュメンタリー番組のため大ヒットはありませんが、海外市場への浸透による安定成長が期待できると思われます。

図表4は、ここで取り上げた各社の営業利益の実績およびコンセンサス予想の推移を示しています。米国ではよくあることですが、コムキャスト、ウォルト ディズニーといった大手企業のほうがM&Aも含めて成長しています。タイム ワーナー、21世紀フォックスは、14年度実績までは停滞ぎみですが、15年度、16年度は改善する見通しになっています。一方、バイアコム、CBSは伸び悩みの傾向です。

図表4: 大手メディア企業の事業内容

  • ※会社資料をもとにSBI証券が作成

図表5: 映像コンテンツ主要企業の営業利益推移

  • 注:バイアコムの10年度は、決算期変更のため09年度(09年12月期)の数値によります。
  • ※会社資料、ブルームバーグデータをもとにSBI証券が作成。
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  注目銘柄のポイント

以上の検討を踏まえて、注目銘柄についてポイントをコメントしています。株価が堅調に推移していて、足元で材料のある、ウォルト ディズニー、コムキャストが特に注目できるでしょう。

銘柄名 株価
(7/10)
116.44ドル 予想PER
(倍)
23.0
ポイント
  • 主力のメディア・ネットワークスでは、スポーツチャンネルのESPNがスポーツ放映権高騰の影響を受けて収益が伸び悩んでいますが、その他事業が好調です。
  • パーク・アンド・リゾーツでは、13年までに米国内の増強投資を終え、回収期に入っています。さらに、16年春に上海ディズニーリゾートの開業を控えています。スタジオ・エンタテイメントでは、昨年の「アナと雪の女王」に続いて、今年も5月1日公開の「アベンジャーズ2」とヒットが続いています。年末には12年に買収したルーカスフィルムによる初のメジャータイトル「スターウォーズ(エピソード7)/フォースの覚醒」が公開予定です。
  • 株価上昇によりPERが上昇していますが、今後もメジャーな材料が控えているため維持可能と考えられます。16年9月期予想ベースでは、20.3倍まで下がります。
銘柄名 株価
(7/10)
63.19ドル 予想PER
(倍)
19.1
ポイント
  • 米国のケーブルテレビ最大手で、「XFINITY」のブランドで、ビデオ、インターネット、音声のサービスを提供しています。14年末の加入世帯は2,700万に上ります。14年2月にタイム・ワーナー・ケーブルの買収を提案しましたが、当局が難色を示して15年4月には断念、この面での不透明感は払拭されました。
  • 15年1-3月期決算は、売上が前年同期比3%増(15年のスーパーボウル、14年のソチ五輪のイベントを除くと同8%増)、営業利益は同9%増と好調でした。
  • 4月公開の「Furious 7」(邦題:「ワイルド・スピード SKY MISSION」、6月公開の「ジュラシック・ワールド」(日本公開は8月7日)が歴代興行収入でトップ10入りの大ヒットとなっており注目されます。主力のケーブル事業の売上が1-3月期に前年同期比6%増と堅調なため、映画のヒットは業績の上振れに繋がる可能性が高くなっています。
銘柄名 株価
(7/10)
88.63ドル 予想PER
(倍)
19.1
ポイント
  • 1990年にワーナー・コミュニケーションズとタイム・インクが合併してできた会社です。その後、2000年にAOLと合併しましたが、AOLの業績悪化で09年に分離、さらにケーブルテレビ事業のタイム・ワーナー・ケーブルを分離して現在の体制に至っています。
  • メジャースタジオであるワーナー・ブラザーズの売上構成比が米メディア企業の中で最も高い点に注目できるでしょう。
  • 15年1-3月期決算は、売上が前年同期比5%増、調整後営業利益が同12%増と堅調でした。
銘柄名 株価
(7/10)
33.11ドル 予想PER
(倍)
17.9
ポイント
  • ルパート・マードック氏が率いるニューズ・コーポレーションのメディア部門が13年6月に分離独立してできた会社です。日本でも人気の出た「Xファイル」「24」「プリズンブレイク」はFOXの制作によります。イギリスの衛星テレビ局BスカイBの39%、オンデマンドビデオHuluの33%を保有しています。イタリア、ドイツの衛星テレビ局は14年中に売却しています。
  • 15年1-3月期決算は、売却した衛星テレビを除いたベースで、前年同期比1%増収、3%の営業減益と低調でした。テレビ局のFOXは一時視聴者数で3大ネットワーク(ABC、CBS、NBS)に並ぶ勢いでしたが、最近は不振です。FOXの回復が見えてくれば、改めて注目できるでしょう。
銘柄名 株価
(7/10)
33.38ドル 予想PER
(倍)
17.9
ポイント
  • ノンフィクションを得意とする番組制作会社です。ドキュメンタリー番組のディスカバリー・チャンネルをはじめ、科学・技術・歴史などの番組制作・販売をグローバルに行います。ディスカバリー・チャンネルの視聴可能者数は、14年末に米国で9,700万人、海外市場で2億7,700万人に上ります。売上のうち、45%が番組販売、49%が広告収入、5%がその他によります。米国売上は50%です。
  • ドキュメンタリー番組は、フィクションの映像コンテンツに比べて、当たり外れのリスクが小さいと考えられ、視聴可能者数の増大とともに安定した成長が期待できます。14年の売上は、「ユーロスポーツ」買収の効果を除いて、主に海外部門が牽引して前年比4%増でした。

※株価日足チャートは、2015/7/10時点のものです。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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