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半導体の大相場がくる!?

2017/02/08
投資調査部 榮 聡

半導体株への物色が続いています。昨年5月に半導体製造装置大手のアプライドマテリアルズが、業界の先行きについて明るい見通しを表明したのがきっかけです。IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)など、半導体需要を刺激すると考えられる材料には事欠きません。2000年のITバブル以来目立った相場がなかっただけに、意外に大きな相場になる可能性がありそうです。16年に続き、17年も物色の柱として期待できるのではないでしょうか。

図表1:注目銘柄リスト

銘柄 株価 (2/7) 52週高値 52週安値
アプライド マテリアルズ(AMAT) 35.54ドル 35.64ドル 15.44ドル
テキサス インスツルメンツ(TXN) 76.18ドル 79.47ドル 49.10ドル
ブロードコム(AVGO) 205.91ドル 206.66ドル 114.25ドル
エヌビディア(NVDA) 119.13ドル 120.92ドル 24.75ドル
アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD) 13.29ドル 13.70ドル 1.81ドル
ヴァンエック ベクトル 半導体 ETF(SMH) 75.84ドル 75.85ドル 45.03ドル
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
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半導体株指数の上昇が続く

半導体株指数は過去6ヵ月で+25%と力強い上昇が続いています(図表2)。トランプ相場云々に関わらず継続的に上昇している点も注目できるでしょう。

今回の半導体株の相場は半導体製造装置の世界最大手、アプライドマテリアルズが16年2-4月期の受注急増を発表し、先行きについても楽観的な見方を提示したことがきっかけでした(16年5/19発表)。

5-7月期の受注も増加が続き、「われわれは半導体業界、ディスプレイ業界ともに劇的な技術進歩が起こりつつあるのを目撃している。現在複数年に渡る大きな業界の転換点の初期段階にあって、これが当社の成長を促し、将来の事業機会を創出しつつある」(16年8/18発表)としたことで、さらに物色意欲が強まりました。

詳しくは、16年8/24掲載の外国株式特集レポート「売上増への転換点!?物色の柱として期待の半導体セクター!!」をご覧ください。

半導体株指数の過去20年間の推移をみると、1999年〜2000年のITバルブ時に大きな相場となりましたが、その後は目立った相場はありませんでした(図表3)。同セクターに対する市場の期待は「枯れた」状態が長く続いてきたと言え、意外に大きな相場に発展する可能性があるのではないでしょうか。

銘柄としては何が騰がっているのでしょうか。フィラデルフィア半導体株指数を構成する35銘柄のうち、時価総額が100億ドル以上の16銘柄について2/6(月)までの6ヵ月の株価騰落率を見たのが、図表4です。

この間、S&P500指数の上昇率は5.0%でしたから、14銘柄が市場平均を上回ったことになり、同セクターの銘柄が幅広く物色されていることが確認できます。

上昇率が突出しているAMDとエヌビディアはそれぞれ個別要因での上昇と見られますが、グラフィック・プロセッサ(GPU)を扱うことで共通しています。マイクロン・テクノロジーはメモリー価格の上昇が要因です。一方、唯一下落となったクアルコムは、アップルへのモデム供給喪失や知的財産での提訴などの悪材料が出ました。最大手のインテルは、引き続きPC市場の縮小の影響を受けています。

図表2:半導体株指数が力強く上昇!!

  • 注:フィラデルフィア半導体株指数(「SOX指数」とも呼ばれます)は、フィラデルフィア取引所が発表している米国に上場する半導体メーカー、半導体製造装置メーカーで構成される単純平均株価指数です。
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表3:半導体はITバブル以来の大相場へ!?

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4:何が騰がっているのか?

  • 注:フィラデルフィア半導体株指数の構成銘柄のうち、時価総額100億ドル以上の銘柄の過去6ヵ月の株価騰落率です。買収提案がかかった、NXPセミコンダクター(NXPI)とリニアテクノロジー(LLTC)を除いています。
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
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半導体セクターのファンダメンタルズは?

半導体業界のファンダメンタルズを確認してみましょう。

世界の半導体売上高は、絶対値では16年4月に259億ドルで底入れして、16年8月には前年比1%増へプラスに転換、16年12月には同12%増まで急回復となっています(図表5)。

半導体株への物色を裏付けるファンダメンタルズがあると言えそうです。ただ、この売上回復は半導体の幅広い分野の増加というよりは半導体メモリーの価格上昇が大きく寄与しました。

中国のスマホメーカーが高機能機の生産を増やしたほか、データ量の増加を背景にデータセンターへの投資が増えたことで、半導体メモリーのDRAMが品薄となり、16年5月に1.5ドルまで低下していた4ギガビット品のスポット価格が直近では3ドル近くまで上昇しています。

それでも各社の決算リリースを見ると、メモリー以外でも業界全般に改善の兆しが見られ、特に自動車向けの半導体が好調を続けているほか、産業向けでも底入れの動きが見られます。

世界半導体市場統計(WSTS)の市場予想では、17年の分野別売上について、16年6月分から16年11月分にかけて、図表6のように上方修正されています。メモリーの修正が大きいものの、その他の分野でも上方修正となっていて、業界全体に明るさが出てきていると言えそうです。

自動車への半導体の搭載増加、インターネットビデオの普及によるデータの急増、IoT(モノのインターネット)や人工知能の普及進展、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の応用分野の広がりなど、半導体需要を刺激すると考えられる材料には事欠きません。

アプライドマテリアルズが言うように「複数年に渡る大きな業界の転換点の初期段階」にあるのなら、今後の動向にはまだまだ期待できるのではないでしょうか。

図表5:世界の半導体売上高は16年後半から急回復

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表6:17年の予想半導体売上の修正状況(16年6月から16年11月にかけての予想修正率)

  • ※世界半導体市場統計(WSTS)資料をもとにSBI証券が作成
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半導体セクターの主力企業をご紹介

半導体セクターへの投資を考えるにあたり、フィラデルフィア半導体指数の主要構成銘柄について、各社がどの分野を主力事業としているかを整理しています(図表7)。

デジタル半導体は、デジタル信号の処理のみを行う半導体、アナログ半導体は現実世界のアナログ信号とデジタル信号の両方を扱う半導体です。

これをもとに各分野から代表的な銘柄を選んで、注目ポイントをご紹介いたします。

アプライド マテリアルズ(AMAT)・・・・世界最大の半導体製造装置メーカーで、半導体、フラットパネルディスプレイ向けを手がけます。半導体市場の売上回復に加え、中国の国策による半導体産業立ち上げ(半導体の内製化を狙い、5年間に5兆円の投資と言われています)からも恩恵を受けるため、ここに挙げた銘柄群の中で先行きの需要増が最も堅いと考えられます。日本の半導体製造装置メーカーの業績上方修正が相次いでいますが、同じような事業環境にあります。また、最近報道された家電各社の有機ELテレビ発売計画からも恩恵を受けると期待されます。同社の11月-1月期決算は2/15(水)に発表予定です。

テキサス インスツルメンツ(TXN)・・・・米国の半導体大手です。アナログ半導体で世界シェア1位のほか、マイコン、コネクティビティ半導体も手がけます。自動車向けが引き続き好調で、業績の足を引っ張っていた産業向けおよび通信インフラ向けがプラス成長に戻りつつあり、業績モメンタムが改善基調にあります。センサーが捉えた信号を処理するアナログ半導体やマイコンの売上構成比が高く、幅広い電子機器メーカーと取引関係があることから、「IoT(モノのインターネット)」との関連性が高く中期的な成長が期待されます。

ブロードコム(AVGO)・・・ヒューレットパッカードの半導体部門が起源のアバゴテクノロジーズと通信用半導体大手のブロードコムが16年2月に合併してできた会社です。クアルコムの株価下落により、通信用半導体分野では時価総額最大になっています。売上構成は、有線通信用半導体(セットトップボックス、ケーブルモデム向けなど)50%、無線通信用半導体(モデム、Bluetoothなどコネクティビティ、Wi-Fi向けなど)32%、エンタープライズストーレージ14%、産業向け他4%です。通信分野の成長性は相対的に高く、業界平均を上回る成長が期待されます。

エヌビディア(NVDA)・・・画像処理に使われるグラフィック・プロセッサ(GPU)を得意とする半導体メーカーです。ゲーム、プロ向け画像処理PC、データセンター、自動車の主力4分野とも売上が増加しています。主力のゲーム用PC向けグラフィックカードが新製品の投入やPCゲームのeスポーツ化で需要が増加しているほか、同社のGPUが人工知能のトレーニングに欠かせないものとなったことで、データセンターなどでの需要が伸びています。また、任天堂が17年3月にリリースする新ゲーム機「Nintendo Switch」に同社のTegraプロセッサが採用され、売上の押上げが期待されます。2/9(木)の引け後に11月-1月期決算の発表が予定されています。

アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)・・・PC、サーバー向けのインテル互換CPU、グラフィック・プロセッサ(GPU)、ゲームコンソール(プレイステーションとXbox)向けのシステムオンチップなどを手掛ける半導体メーカーです。14年から16年まで営業赤字に落ち込んできましたが、足もとでゲーム用PC向けGPU市場が伸びているほか、17年1-3月期からPC、データセンター、ノートブック向けに順次投入を予定するCPUの新製品「ZEN」への期待が高く、17年は黒字化が予想されています。17年の予想EPSは0.03ドル、18年でも0.23ドルのため、13ドル超の株価はかなり先行気味ですが、新製品の市場での受容動向が注目されます。

ヴァンエック ベクトル 半導体 ETF(SMH)・・・個別銘柄のリスクを取りたくないという方には、半導体企業の株価に連動するETF(上場投資信託)も利用できます。同ETFは、「マーケット・ベクトル米国上場半導体25インデックス」への連動を目指すETF(上場投資信託)です。組入れ上位銘柄は、インテル、台湾セミコンダクター、クアルコム、エヌビディア、ブロードコムなどです(2/7時点)。

図表7:半導体セクターの主要企業(米国市場上場)

主力事業 株銘柄
コード
銘柄 特徴 売上高
(億ドル)
純利益
(億ドル)
株主資本
純利益
率(%)
時価
総額
(億ドル)
デジタル半導体 プロセッサー INTC インテル PC、サーバー向けが主力 593.9 115.7 16.0 1,719
NVDA エヌビディア グラフィックプロセッサーに強い 50.1 7.8 24.5 632
XLNX ザイリンクス プログラマブルICでトップ 22.1 5.5 24.2 145
AMD アドバンストマイクロデバイセズ ゲーム機向けが主力 42.7 -2.2 - 126
マイコン MCHP マイクロチップ・テクノロジー マイコン大手 21.7 3.4 2.1 149
メモリー MU マイクロン・テクノロジー DRAM主力でフラッシュも 124.0 -2.1 - 268
アナログ半導体 通信用 AVGO ブロードコム 有線・無線とも手掛ける 132.4 0.0 - 824
QCOM クアルコム 無線通信規格の強力な特許 154.7 56.5 15.9 781
SWKS スカイワークス・ソリューションズ 無線通信用が主力 32.9 9.5 25.1 170
アナログ TXN テキサス・インスツルメンツ アナログ主力でマイコンも 133.7 37.2 33.5 762
ADI アナログ・デバイシズ 同業のリニアテクノロジーと統合へ 34.2 9.2 16.8 233
MXIM マキシム・インテグレーテッド・プロダクツ アナログの専業大手 21.9 3.4 23.3 127
半導体製造装置 ASML ASMLホールディング 露光装置に特化して高シェア 67.9 14.8 16.2 537
AMAT アプライド・マテリアルズ 世界シェア20%で幅広く手掛ける 108.3 17.8 23.2 380
LRCX ラム・リサーチ 世界4位でエッチング装置で高シェア 58.9 9.2 16.7 191
ファウンドリー TSM 台湾セミコンダクター※ 世界最大のファウンドリー 294.2 103.7 25.6 1,601
  • 注:台湾セミコンダクターは取扱がありません。
  • ※Bloombergデータ、会社資料をもとにSBI証券が作成
  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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