今回はウクライナ情勢の緊張を背景に価格が上昇しているコモディティに関する資料を作成しました。原油をはじめとして世界の輸出に占めるロシアの比率が高い品目がいくつかあり、ウクライナ侵攻で「経済制裁」となる場合には、供給の不安定化から価格が上昇しやすいとみられます。
図表1 主な言及銘柄
銘柄 | 株価(2/15) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
エネルギー セレクト セクター SPDR ファンド | 68.03ドル | 70.50ドル | 45.14ドル |
iシェアーズ グローバル・エネルギー ETF | 33.07ドル | 34.13ドル | 23.08ドル |
シュルンベルジェ | 40.09ドル | 41.04ドル | 24.52ドル |
オクシデンタル ペトロリアム | 39.85ドル | 43.16ドル | 21.62ドル |
中海油田服務[チャイナ・オイルフィールド] | 8.55HKドル | 11.44HKドル | 5.47HKドル |
中国海洋石油[CNOOC] | 9.70HKドル | 10.60HKドル | 7.55HKドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今回はウクライナ情勢の緊張を背景に価格が上昇しているコモディティに関する資料を作成しました。
ロシアがウクライナに侵攻した場合、欧米諸国が「経済制裁」を課すとしています。その場合にコモディティの輸出が多いロシアにとって打撃となる制裁は、これらの輸入制限であると考えられます。
世界の輸出に占めるロシアの比率が高い品目については、供給の不安定化が想定されるため、価格の上昇につながっているとみられます。
そこで、以下の図表を作成しました。短期的な動きはウクライナ情勢次第になるかと思いますが、参考にしていただければ幸いです。
・図表2 世界の輸出に占めるロシアの比率が高い主要品目
・図表3 関連する主要コモディティの値動き
・図表4 関連ETFと米中の関連銘柄
まだ、外交的な努力によってロシアの侵攻が回避される可能性は残っていますが、いまのところ侵攻の可能性は高いと考えられ、それが起こった場合には、ここに取り上げたコモディティの価格は一段高となる可能性があるでしょう。
図表2 世界の輸出に占めるロシアの比率が高い主要品目(%、2020年)

- 注:原油、ガス、石炭は生産量により、それ以外は輸出金額によります。
- ※国際貿易センター、ブリティッシュペトロリアム公表資料などのデータをもとにSBI証券が作成
図表3 関連する主要コモディティの値動き
年初来騰落率(%) | 1年騰落率(%) | |
---|---|---|
石炭(先物、ICE) | 50.6 | 142.2 |
天然ガス(先物、NYM) | 23.5 | 43.3 |
原油(WTI先物、NYM) | 22.6 | 53.5 |
パラジウム(先物、NYM) | 17.9 | -5.6 |
アルミニウム(先物、LME) | 14.8 | 54.4 |
ニッケル(先物、LME) | 12.6 | 26.5 |
プラチナ(先物、NYM) | 5.9 | -20.0 |
小麦(先物、CBT) | 1.9 | 18.7 |
銅(先物、CMX) | 1.5 | 18.2 |
金(現物) | 1.2 | 3.2 |
銀(先物、CMX) | 0.1 | -14.5 |
- 注:NYMはニューヨークマーカンタイル取引所、CMXはシカゴマーカンタイル取引所、LMEはロンドン金属取引所、CBTはシカゴ商品取引所、ICEはインターコンチネンタル取引所です。
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 関連ETFと米中の関連銘柄
コード | 銘柄名 | 事業内容 (ETFの内容) |
年初来 騰落率 (%) |
---|---|---|---|
コモディティ関連ETF | |||
XLE | エネルギー セレクト セクター SPDR ファンド | 米国のエネルギーETF | 23.9 |
IXC | iシェアーズ グローバル・エネルギー ETF | グローバルのエネルギーETF | 21.6 |
IAU | iシェアーズ ゴールド・トラスト | 金のETF | 2.2 |
SLV | iシェアーズ シルバー・トラスト | 銀のETF | 2.5 |
GDX | ヴァンエック ベクトル 金鉱株ETF | 金鉱株のETF | 3.3 |
ERX | Direxion デイリー エネルギー株 ブル 2倍 ETF | エネルギーブル2倍 | 51.8 |
ERY | Direxion デイリー エネルギー株 ベア 2倍 ETF | エネルギーベア2倍 | -36.9 |
GUSH | Direxion デイリー S&P 石油・ガス探鉱・生産 ブル2 倍 ETF | 石油生産ブル2倍 | 31.8 |
DRIP | Direxion デイリー S&P 石油・ガス探鉱・生産 ベア2 倍 ETF | 石油生産ベア2倍 | -30.1 |
NUGT | Direxion デイリー 金鉱株 ブル2倍 ETF | 金鉱株ブル2倍 | 4.5 |
DUST | Direxion デイリー 金鉱株 ベア2倍 ETF | 金鉱株ベア2倍 | -11.4 |
米国個別銘柄 | |||
HAL | ハリバートン | 石油サービス | 42.2 |
SLB | シュルンベルジェ | 石油サービス | 33.9 |
OXY | オクシデンタル ペトロリアム | 原油・天然ガス生産 | 37.5 |
COP | コノコフィリップス | 原油・天然ガス生産 | 24.2 |
XOM | エクソン モービル | 総合エネルギー | 27.5 |
CVX | シェブロン | 総合エネルギー | 14.4 |
MPC | マラソン ペトロレアム コーポレーション | 石油・ガス精製・販売 | 22.5 |
PSX | フィリップス 66 | 石油・ガス精製・販売 | 22.0 |
FCX | フリーポート マクモラン | 銅生産 | 4.8 |
NEM | ニューモント | 金生産 | 2.0 |
NUE | ニューコア | 鉄鋼生産 | 6.5 |
中国個別銘柄 | |||
02883 | 中海油田服務[チャイナ・オイルフィールド] | 油田サービス | 25.2 |
00883 | 中国海洋石油[CNOOC] | 原油・天然ガス生産 | 20.8 |
00857 | 中国石油天然気[ペトロチャイナ] | 原油・天然ガス生産 | 18.2 |
00386 | 中国石油化工[シノペック] | 原油・石油製品生産 | 11.0 |
01378 | 中国宏橋[チャイナ・ホンチャオ] | アルミニウム生産 | 27.1 |
02600 | 中国アルミ[アルミニウム・オブ・チャイナ] | アルミニウム・アルミナ生産 | 17.6 |
02899 | 紫金鉱業[ツージン・マイニング] | 金・銅生産 | 21.1 |
00358 | 江西銅業[コウセイコッパー] | 銅生産 | 15.2 |
00267 | 中国中信[シティック] | 総合資源 | 13.9 |
01208 | 五鉱資源[MMG] | 総合資源 | 13.6 |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
注:レバレッジ型・インバース型 ETF等(ETN含む)は、主に短期売買により利益を得ることを目的とした商品です。レバレッジ指標の上昇率・下落率は、2営業日以上の期間の場合、同期間の原指数の上昇率・下落率のレバレッジ倍(又はマイナスのレバレッジ倍)とは通常一致せず、それが長期にわたり継続することにより、期待した投資成果が得られないおそれがあります。
上記の理由から、一般的に長期間の投資には向かず、比較的短期間の市況の値動きを捉えるための投資に向いている金融商品といえます。
投資経験があまりない個人投資家の方が資産形成のためにこうしたETF等を投資対象とする際には、取引の仕組みや内容を十分理解し、取引に伴うリスク・コストを十分に認識することが重要です。レバレッジ型・インバース型 ETF等に係る商品の特性とリスクについてはこちらのリーフレットをあわせてご確認ください。
「レバレッジ型・インバース型 ETF 等に係る商品の特性とリスクについて」
北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大に危機感をもつロシアが、ウクライナのNATO加盟阻止を目指して軍事的圧力をかけていることが、今回の事の発端です。
ウクライナがNATOに加盟した場合、NATO諸国とロシアの間に軍事的な緩衝地帯がなくなり、ロシアの首都モスクワへのミサイル到達時間が数分にまで縮まってしまうことが、ロシアが脅威と感じているポイントです。
このような背景を考慮すると、ウクライナがNATOに加盟しないことを確約しない限り、ロシアによるウクライナ侵攻の可能性は高いと考えられています。
欧米諸国はウクライナ侵攻の場合でも対応として「経済制裁」にしか言及しておらず、ウクライナに対する直接的な軍事支援は行わない見込みであることも侵攻の可能性を高めていると考えられます。
侵攻のタイミングについては、当初中国で冬季オリンピックが開催されている2/20(日)まではないと考えられていました。
しかし、2/11(金)に米国政府がロシアがウクライナ侵攻に十分な兵力を集結させたと発表、ウクライナに滞在する自国民に国外退避を勧告、オリンピック期間中にもロシアによる侵攻の可能性があるとしたことから、一気に警戒が高まりました。
さらに、2/14(月)には、米国政府がウクライナの首都キエフにある米大使館の機能をウクライナ西部のリビウに移転すると発表して、侵攻が間近に迫っていると緊張感が高まりました。
一方、2/15(火)にはロシアのメディアがウクライナ周辺に終結している軍隊の一部が演習を終えて基地への帰還を始めたと報じて、金融市場では緊張緩和に対する期待が高まりました。しかし、同日バイデン大統領は、そのような事実は確認できていないと発言しており、引き続き警戒が続いています。
ロシアのプーチン大統領と欧米諸国首脳との交渉が続いていますが、プーチン大統領はロシアが望む回答が欧米諸国から得られていないと繰り返し発言しており、緊張状態が続いています。
ご参考に、ロシアの主な輸出品、輸入品、また、主な輸出先、輸入元のデータを掲載します。輸出品としては、原油・ガスが非常に重要で、輸出先としては、EU、中国の比重が高いことが確認できます。
図表5 ロシアの主な輸出入品目(億ドル、2019年)
輸出品 | 輸入品 | ||
原油 | 1,222 | 医薬品 | 102 |
原油以外の石油製品 | 669 | 自動車部品 | 88 |
石炭 | 160 | 無線通信機器 | 86 |
ガス | 95 | 乗用車 | 79 |
小麦 | 64 | 自動データ処理装置 | 65 |
- ※世界貿易機関(WTO)のデータをもとにSBI証券が作成
図表6 ロシアの輸出先シェアと輸入元シェア(%、2019年)

- 注:四捨五入の関係で合計は必ずしも100とはならない場合があります。
- ※世界貿易機関(WTO)のデータをもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。