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住宅ローン金利のピークアウトで注目の住宅関連銘柄

2022/12/28
投資情報部 榮 聡

インフレ沈静化が確かなものとなりつつあることから、ピークアウトしている米国の住宅ローン金利が再び大きく上昇する可能性は低いとみられます。足もとの米国住宅市場見通しは厳しいものの、先行指標となる経済変数の変化を受けて、先行きの回復が期待されます。住宅関連銘柄には投資のタイミングが近づいているのではないでしょうか。

図表1 注目銘柄リスト

銘柄 株価(12/27) 52週高値 52週安値
DR ホートン(DHI) 89.27ドル 108.99ドル 59.25ドル
レナー A(LEN) 90.70ドル 116.73ドル 62.54ドル
ホーム デポ(HD) 319.55ドル 417.85ドル 264.51ドル
シャーウィン ウィリアムズ(SHW) 239.42ドル 354.15ドル 195.24ドル
マスコ コーポレーション(MAS) 47.26ドル 71.06ドル 42.33ドル
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

1 住宅ローン金利のピークアウトで注目の住宅関連銘柄

今回は米国の住宅ローン金利がピークアウトしていることを勘案して住宅関連銘柄を取り上げます。

〇米国の住宅ローン金利がピークアウト

2022年に入ってからの「インフレ高進⇒FRBによる政策金利引き上げ⇒米国の長期金利上昇⇒住宅ローン金利上昇」を受けて住宅関連指標が悪化を続けたため、これまで住宅関連銘柄は買いにくい状況が続いてきました。

しかし、インフレのピークアウトが見えてきた現在、MBAの30年住宅ローン金利は10月21日の7.16%をピークに低下に転じていることから、来年に向けて投資のタイミングを計ることができる状況になってきたと考えられます。

本年7月から8月にかけても住宅ローン金利は一度低下してその後再び上昇となりましたが、今回はそのような経路を辿る可能性は低下しているとみられます。

〇NAHB住宅市場指数も低下の勢いが鈍化

米国の住宅市場の状況を敏感に反映する指標として、NAHB住宅市場指数があります。

これは全米住宅建設業者協会(NAHB:National Association of Home Builders)が毎月公表する米国の住宅建設業者の景況感を示す経済指標で、戸建て住宅市場の「現在の販売状況」「今後6ヵ月の販売状況」「見込み客の来訪状況」を総合して指数化したものです。

同指数は図表3の通り、新型コロナのパンデミックが発生した直後の水準まで落ち込んでおり、住宅建設業者の景況感が非常に悪いことがわかります。

一方、最近の7ヵ月間は6月67、7月55、8月49、9月46、10月38、11月33、12月31と推移しており、11月から12月にかけての低下幅は過去6ヵ月で最も小さくなっています。月次の悪化度合いの縮小は底入れの兆しとみることができるのではないでしょうか。

また、同指数を構成するコンポーネントのうち、「6ヵ月先の販売」は11月の31から12月の35に改善していることも、今後の改善の可能性を示唆しているとみられます。

〇新築住宅販売件数と中古住宅販売件数 株式市場で最も重視される新築住宅販売件数、中古住宅販売件数にも底入れが期待される水準まで落ち込んでいます(図表4)。新築住宅販売件数については、ここ半年は年率換算55〜65万戸のレンジで推移しており、底入れしつつあるように見えます。 中古住宅販売件数は、2022年に入ってから急減となっていますが、2008年のリーマンショック直後の底、パンデミック発生後の2020年5月につけた年率換算4百万戸近くまで減少したことから、さらに大幅な悪化となる可能性は小さくなって、底入れを探る動きとなるのではないでしょうか。

以上を総合すると、住宅ローン金利のピークアウトを受けて、住宅市場の悪化度合いが徐々に小さくなりつつあり、市場が底入れする兆しがみられます。新築住宅販売件数や中古住宅販売件数の推移にもその兆しがあります。住宅関連銘柄は投資対象として注目できる局面にあると考えられます。

図表2 米国の住宅ローン金利と米10年国債利回り

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表3 全米住宅建設業者協会(NAHB)の住宅市場指数

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 築住宅販売件数と中古住宅販売件数

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

2 米国住宅関連銘柄の業績と株価の動き

前節では住宅関連銘柄が注目できる背景をご説明しましたが、今節では米国の住宅関連銘柄にどのようなものがあるか、その業績動向と株価動向について検討します。

〇米国の住宅関連銘柄

米国の住宅関連銘柄にどのようなものがあるかについて、iシェアーズ米国住宅建設ETF(ITB)の組入上位銘柄を確認してみましょう(図表5)。

組入上位4銘柄は、いずれも戸建てを主力とする住宅メーカーです。このほか、住宅メーカーが一部の建設資材や作業道具類を調達するホームセンター、塗料メーカーや建設資材メーカーなどがあります。

ホームセンターの2社は、ホームデポが3,200億ドル、ロウズが1,200 億ドルと時価総額が大きい銘柄ですが、それ以外の関連銘柄はいずれも1,000億ドル以下で、米国市場の基準では中小型になります。住宅メーカーでは、最大のDHホートンでも300億ドル台ですので、投資先としてはややニッチと言えるでしょう。

大手の機関投資家などは、住宅市場の動きを理由に投資する場合には、時価総額が大きいホームセンターの銘柄に投資しているとみられます。

〇大手住宅メーカーの業績推移

米住宅市場の動向を最も敏感に反映する、大手住宅メーカー4社の売上と純利益を集計したものが図表6になります。新型コロナのパンデミックを受けた金利低下で2021年度、2022年度と業績が押し上げられましたが、その反動で2023年度に比較的大きな落ち込みとなり、2024年度はそこから横ばいのイメージが予想されています。

来年の米国株式市場で年前半については、利上げによる景気減速、企業業績の落ち込みの程度を見極めることが主要なテーマになるとみられます。その中で、既に業績の悪化が予想されている住宅メーカーは、“ディフェンシブ”な性格となる可能性があるでしょう。

もちろん、予想されているリセッションが深くなる場合には、住宅の買い控えにつながり、住宅メーカーの業績予想もさらに下方修正されて、ディフェンシブとは言えない状態になる可能性もあります。しかし、いまのところ、リセッションになったとしても比較的浅いものになる可能性が高いと見込まれています。

〇住宅関連の株価の動き

住宅関連銘柄の株価の動きをみるために、iシェアーズ米国住宅建設ETF(ITB)とS&P500指数の比較したものが図表7になります。業績の好調を受けて2020年、2021年は市場平均以上に上昇しましたが、2022年に入ってからの株価下落は市場平均を上回っています。

年初来の株価下落率は、S&P500指数が19.3%に対して上記ETFが26.4%と市場平均を上回っています。さらに詳しくみていくと、米10年国債利回りが1%から3%にまで上昇した4月までの株価下落は市場平均を大きく上回りました。

その後5月から10月にかけてはS&P500指数と同様の動きが続いたあと、11月からはS&P500指数を顕著にアウトパフォームしてます。この時期にはインフレピークアウトの期待とともに景気の先行きへの懸念が高まりました。

来年前半の相場は足もとの状況の延長になる可能性が高いと考えられることから、住宅関連銘柄のアウトパフォームが続く可能性がありそうです。

図表5 iシェアーズ米国住宅建設ETF(ITB)の組入上位15銘柄 ※同銘柄は当社での取り扱いはありません

コード 銘柄名 事業内容 組入比率
(%)
株価
(12/23)
(ドル)
予想
PER
(倍)
DHI DRホートン 住宅メーカー 16.09 89.18 9.2
LEN レナー 住宅メーカー 13.51 90.62 9.9
NVR NVR 住宅メーカー 8.32 4645.00 13.8
PHM パルトグループ 住宅メーカー 6.07 45.79 5.5
HD ホーム・デポ ホームセンター 4.45 318.73 19.0
LOW ロウズ ホームセンター 4.39 201.88 14.4
SHW シャーウィン・ウィリアムズ 塗料メーカー 4.22 242.67 24.6
TOL トール・ブラザーズ 住宅メーカー 3.06 50.80 6.1
BLD トップビルド 建設資材販売 2.96 158.20 10.1
MAS マスコ 住宅設備機器メーカー 2.12 47.13 13.1
BLDR ビルダーズ・ファースト・ソース 建設資材メーカー 1.97 65.30 8.5
MTH メリテージ・ホームズ 住宅メーカー 1.94 92.26 5.4
TMHC テイラー・モリソン・ホーム 住宅メーカー 1.93 30.73 4.3
OC オーウェンス コーニング 建設資材メーカー 1.68 88.23 8.1
WSO ワッコ 電気機器&装置販売 1.68 252.17 18.8

注:組入比率のデータは、12/19(月)時点です。
※BloombergデータをもとにSBII証券が作成

図表6 住宅メーカー4社の業績の動き

注:DHホートン、レナー、NVR、パルトグループの売上・純利益の集計です。2020年度と2021年度は実績、2023年度と2024年度は予想、2022年度については、実績と予想が混在しています。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表7 iシェアーズ米国住宅建設ETF(ITB)とS&P500指数

BloombergデータをもとにSBII証券が作成

3 住宅関連の銘柄をご紹介

DR ホートン(DHI)

【米国最大の住宅メーカー】

・米国最大の住宅メーカーで、本社はテキサス州アーリントンにあります。米国南部を中心に33州106市場に展開し、1次取得向けから高級住宅まで幅広く取り扱い、戸建て住宅の市場シェアは約15%です。販売価格が35万ドル以下の住宅の売上が54%を占めます(2022年6月までの12ヵ月)。会社規模の大きさや比較的買いやすい住宅にフォーカスしていることから、厳しい事業環境下でも相対的に堅調な業績を達成できるとみられます。

・7-9月期の受注戸数は、前年同期比15%減で4-6月期の同7%減から、受注金額は同10%減で4-6月期の同8%増から、いずれも大きく悪化しています。2023年9月期業績の市場コンセンサスは、売上が前年比17%減、EPSが前期の16.67ドルから9.80ドルへ低下、業績は厳しい局面を迎えることが見込まれています。7-9月期の売上は前年同期比19%増、EPSは同26%増でした。

レナー A(LEN)

【DRホートンに肉薄する大手】

・米国の大手住宅メーカーで、本社はフロリダ州マイアミにあります。米国南部、中西部、西部、西海岸などの26州で事業展開しています。同業の買収を重ねてDRホートンと2強を構成するまでに拡大してきました。マルチファミリー、シングルファミリー賃貸、土地ストラテジーなどの事業を分社化する意向を2021年の初めに発表しています。

・9-11月期は、受注戸数が前年同期比15%減、受注金額が同24%減、受注残の金額は同23%減と先行きの業績悪化が示唆されています。売上は同21%増、EPSは同16%増でした。2023年11月期について、販売個数は前年の66,399戸に対して前年比10%減〜2%減に相当する60,000〜65,000戸のガイダンスを示しています。

ホーム デポ(HD)

【世界最大のホームセンター】

・ホームセンターで世界首位。建築資材、インテリア、家電、園芸用品などを扱います。米国中心にカナダ、メキシコに2,319店を展開しています。顧客別の売上構成比は、プロ向けが55%、個人のDIYが45%を占めると推定されており、プロ向け比率が高いのが特徴です。オンライン販売が成長し、2022年5月にプロ向けBtoBサイトを刷新しています。25年以上連続増配の「配当貴族指数」の構成銘柄です。2022年8月には、150億ドルの自社株買いプログラムを発表しています。

・同社の四半期売上は新型コロナのパンデミック発生時から2022年8-10月期まで約4割も拡大したため、反動による売上成長の鈍化が見込まれています。2023年1月期は前年比4%の増収、2024年1月期は同1%の増収に鈍化すると予想されています。8-10月期決算は、来店客数の減少を製品価格の上昇でカバーして売上、営業利益とも前年同期比6%増と堅調でした。長期的には、断片化されたホームセンター市場でロウズとともに市場シェア拡大による成長が続くと期待されています。

シャーウィン ウィリアムズ(SHW)

【塗料店の店舗網に特徴】

・1866年創業の老舗塗料メーカーで、塗料・コーティング剤で全米首位級です。建築・船舶・自動車・航空機向けなどに広く展開し、海外売上比率が21%(2021年12月期)と今回取り上げた銘柄の中では高くなっています。多数のブランドで事業展開していますが、5,000以上ある北米の自社店舗ではシャーウィンウイリアムズブランドの製品を独占的に扱っています。25年以上連続増配を行っている「配当貴族指数」の構成銘柄です。

・米国の住宅市場の減速と世界的な景気減速の影響を受けて、2023年12月期の売上成長率は前年比4%まで低下の見込みです。2023年の初めについては、製品価格とコストの組み合わせがポジティブとなり、需要軟化の中でも増益が確保できる見通しです。

マスコ コーポレーション(MAS)

【住宅設備機器メーカー】

・世界最大級の住宅設備機器メーカーです。水栓などの配管製品と建築用塗料などを扱う装飾建設製品の2部門からなります。塗料の「BEHR」、水栓・シャワー機器の「Delta」「Hansgrohe」、照明の「Kichler」などの有力ブランドを展開します。同社の最大の販売先はホームデポです。海外売上の構成比が21%(2021年12月期)、主にドイツの水栓メーカー「Hansgrohe」によるものです。

・2023年に予想される住宅市場の落ち込みの中で、住宅関連では比較的少額の製品で、修繕・リモデルで購入されることも多いことから、住宅関連の中では相対的に売上の落ち込みは小さくなると想定されます。同社は長期的な経営目標として、4〜8%の売上成長、若干の利益率改善、平均10%のEPS成長を支える自社株買いの実施をかかげてます。

  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

免責事項・注意事項

  • 本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
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