バイデン政権の「INVESTING IN AMERICA」(アメリカへの投資)政策の効果が表面化しつつあり、製造業向けの民間建設や公共工事のハイウェイ、道路などの分野で建設支出が増加しています。今回はこうした動きから恩恵が期待される銘柄をご紹介いたします。また、低迷していた住宅建設も底入れの兆しがあることから、建設関連全般に市場の注目が高まる可能性もありそうです。
図表1 注目銘柄リスト
銘柄 | 株価(6/27) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
ロックウェル オートメーション(ROK) | 322.66ドル | 324.76ドル | 192.90ドル |
パーカーハネフィン(PH) | 380.19ドル | 382.13ドル | 235.69ドル |
バルカン マテリアルズ(VMC) | 220.42ドル | 220.90ドル | 137.54ドル |
マーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM) | 452.09ドル | 453.45ドル | 284.99ドル |
ユナイテッド レンタルズ(URI) | 423.27ドル | 481.99ドル | 235.39ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今回はバイデン政権の「INVESTING IN AMERICA」(アメリカへの投資)政策の効果が表面化しつつあることから、その恩恵が期待される銘柄をご紹介いたします。
〇米国内投資額(ホワイトハウス集計)
バイデン政権は、パンデミック後の経済を支える目的や中国への対抗を考えて国内製造業を強化するため、過去2年に様々な米国内の投資を促進する法律を成立させてきました。
「米国救済計画法」(2021年3月)、「インフラ投資雇用法」(2021年11月)、「CHIPS&科学法」(2022年8月)、「インフレ抑制法」(2022年8月)などです。
先週ホワイトハウスは、これら法律の成果として、これまでに表明された投資額を集計したものを発表しています(図表2)。例えば、「半導体&電子機器」の分野では2,140億ドル、143円/ドルで換算して約30兆円と巨額です。
ただ、この額は今後何年にもわたる投資を含むため、足もとで投資がどれくらいのペースで出ているかについてはよくわかりません。そこで手がかりとなる建設支出の動向を確認してみます。
〇米国の非住宅の建設支出は増加
米国のマクロ統計として多くの市場参加者がチェックしている「建設支出合計」は、前月比で1月0.4%増、2月0.3%減、3月0.3%増、4月1.2%増と、顕著な増加は確認できません。しかし、この数値には住宅ローン金利の上昇などを受けて2022年前半をピークに落ち込んでいる住宅建設を含みます。
非住宅の建設支出については、図表3のように安定して増加していることがわかります。今後も表明された投資が順調に出てくるなら、非住宅の建設支出の増加が期待できるでしょう。
次回5月分の建設支出合計は、7/3(月)に発表予定です。4月の前月比1.2%増の後に同0.5%増が予想されており、強いトレンドを示す可能性があります。
さらに、低迷していた住宅建設も、5月住宅着工が前月比21.7%増の163万戸、6/27(火)発表の新築住宅販売件数は前月比12.2%増と、水準が安定する兆しもあります。
幅広い投資家がモニターしている「建設支出合計」の増加が目立つと、米国の建設投資関連には幅広い市場参加者からの注目を集める可能性があるでしょう。
図表2 表明された米国内投資額(10億ドル)
※ホワイトハウスのウェブページより抜粋
図表3 建設支出
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
第1節では、米国の建設支出のうち、非住宅が増加していることを確認しました。さらに、非住宅でどのような分野が増加しているかを探っていきます。
〇製造業向け民間建設と公共工事の道路、ハイウェイが著増
米国の非住宅の建設支出は、民間建設と公共工事に分けられますが、規模はおよそ1.9対1と民間建設が大きくなっています(2023年1〜4月の累計値で計算)。
それぞれについて主要な向け先別の動きをみていくと、民間建設では製造業向けの伸びが飛びぬけて高く、これは中国への対抗のために、半導体工場の建設を急いでいることが要因とみられます。そのほかでも、商業、オフィス、ヘルスケアも2桁の伸びで、全体的に民間建設投資は活発です。
公共工事では、道路、ハイウェイ、下水道、廃棄物処理、上水道など土木系の工事の伸びが高い傾向があります。
前年比の伸びが高く、かつ、構成比も高い、民間建設の製造業と公共工事の道路、ハイウェイの時系列推移を示したのが、図表5になります。これらの増加から恩恵を受ける企業は注目できるでしょう。
〇投資関連の注目銘柄
民間建設の製造業では、半導体工場の寄与が大きいとみられることから、まず投資対象として考えられるのは、半導体製造装置でしょう。ただ、これら銘柄は半導体工場への投資拡大からの連想がしやすく、事業内容も「ハイテク」と捉えられることから、既に物色が進んでいるとみられ、今後の投資妙味は大きくない可能性があるでしょう。
一方、幅広い製造業の設備投資から恩恵を受ける産業機器のメーカーについては、まだ評価される余地がありそうです。そこで、産業オートメーション機器のロックウェル オートメーション、産業用動力制御システムメーカーのパーカーハネフィンが注目できると考えられます。
公共工事のハイウェイ、道路の分野では、ハイウェイの補修に多用される建設骨材(砕石や砂利など)大手のバルカン マテリアルズ、マーチン マリエッタ マテリアルズ、公共工事に限らず、幅広い建設工事の増加から恩恵が期待される、建機レンタル大手のユナイテッド レンタルズが注目できるでしょう。
これらの銘柄について、次節でご紹介いたします。
図表4 民間建設と公共工事の主要項目の動き(2023年1〜4月累計)
注:データは季節調整されていない実額によります。構成比は2023年1〜4月累計によります。
※BloombergデータをもとにSBII証券が作成
図表5 米国の建設支出 民間建設・製造業と公共工事・ハイウェイ・道路
※BloombergデータをもとにSBII証券が作成
◆ロックウェル オートメーション(ROK)
【オートメーション機器の大手】
・制御機器大手。産業オートメーション機器のほか、IoTなど生産プロセス効率化ソリューションを提供します。2022年9月期の売上構成比は、インテリジェントデバイスが46%、ソフトウェア&コントロールが30%、ライフサイクル&サービスが24%です。製造業の投資増加から恩恵を受ける可能性が高い企業と考えられます。
・1-3月期業績は、売上が前年同期比26%増、調整後EPSは同81%増、部門営業利益率は21.3%へ前年同期比5.6%ポイント改善と好調でした。バイデン政権の政策による効果に加え、サプライチェーン問題の緩和による事業環境の改善が好調な業績の背景とみられます。受注についても48億ドルと強く、キャンセル率も一桁台前半と低いとコメントしています。2023年9月期のガイダンスは、売上を前年比11〜15%増から同13〜17%増へ引き上げ、調整後EPSの中央値を7%引き上げています。
◆パーカーハネフィン(PH)
【産業用動力制御でトップ】
・産業用動力制御システムメーカーで、産業機器向けの油圧機器、フィルター、配管継手、ホース等を扱います。1,350億ドルの動力制御業界で約13%の市場シェアを保有、No1の地位を占めます。部門別売上構成比は、北米インダストリアルが47%、海外インダストリアルが30%、エアロスペースシステムが23%です。製造業の工場を建設する際には、同社製品が多く使用されると期待されます。2022年9月に英国の航空・防衛機器のメギットを買収しています。
・1-3月期の売上は前年同期比24%増で、M&Aなどを除くオーガニック成長率は同12%増で、10-12月期のそれぞれ22%増、10%増から伸びが加速しています。北米事業の売上は同16%増と好調です。2023年6月期のオーガニック売上成長の見通しを従来の前年比6〜8%増から同約10%増に引き上げています。ただ、受注に関しては全体が同2%増、北米インダストリアルは同4%減と低調でした(メギット買収による影響を除く伸び率)。
◆バルカン マテリアルズ(VMC)
【砕石、砂利等の建設骨材が主力】
・米国最大の建設資材の会社で、砕石、砂利等の建設骨材、アスファルトや生コン等の建設資材を手掛けます。高速道路の補修での使用が多く、また、その他の土木工事でも使用されるため、インフラ投資と関連性の高い会社と言えるでしょう。足もとの建設骨材需要量はやや低調に推移しているものの、2021年11月に成立した「インフラ投資雇用法」は2026年までのハイウェイ投資プログラムを約60%押し上げると見込まれ、中期的な事業環境は良好と期待されます。
・1-3月期決算は、製品価格の引き上げによって売上は前年同期比7%増、調整後EPSは同30%増と好調です。建設骨材の数量は前年比2.5%減でしたが、平均価格は同20%増でした。通期の見通しは、1-3月期に行った製品価格引き上げを考慮して、純利益を8.15〜8.95億ドルに引き上げました。年間の平均価格は前年比約15%増と見込んでいます。
◆マーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM)
【建設骨材の大手】
・米国南東部ノースカロライナ州に本社を置く、骨材(砂利、砕石)、セメント・コンクリートなど建設資材を供給する企業です。南東部、南部、中西部を中心に28州およびカナダなどに事業展開しています。足もとの建設骨材需要量はやや低調に推移しているものの、2021年11月に成立した「インフラ投資雇用法」は2026年までのハイウェイ投資プログラムを約60%押し上げると見込まれ、中期的な事業環境は良好と期待されます。
・1-3月期決算は、製品価格の引き上げによって売上は前年同期比10%増、調整後EPSは同5.5倍に大きく改善しています。2023年12月期のガイダンスは、建設骨材の数量が前年比2%減〜同2%増、平均価格が同13〜15%増の想定のもと、売上は前年比7〜11%増です。
◆ユナイテッド レンタルズ(URI)
【建機レンタルの最大手】
・米国最大の建機レンタルの会社で、架空リフト、空気圧縮機、圧縮機、コンクリート機器、地ならし機、フォークリフト、発電機などを提供しています。米国49州に1,400以上の拠点を展開し、2022年の米国市場のシェアは17%のトップで、2位はサンベルトの13%、3位はハークの4%です。用途別の売上は、非住宅建設(インフラ建設を含む)と産業その他が主で、住宅建設向けは小さいです。
・今後の成長要因として、インフラストラクチャ法、EV関連投資、半導体製造、北米のLNG基地投資、インフレ抑制法などをあげており、中期的に事業環境は良好と考えられます。足もとの事業環境は良好で、2023年12月期の売上ガイダンス中央値は前年比約20%増の見込みです。中期の目標として2028年12月期に売上200億ドル(2022年12月期実績は116億ドル)をかかげています。
図表6 注目銘柄の投資指標
銘柄(コード) | 株価 (6/26) (ドル) |
予想PER (倍) |
今期予想 EPS (ドル) |
来期予想 EPS (ドル) |
時価総額 (億ドル) |
---|---|---|---|---|---|
ロックウェル オートメーション(ROK) | 318.04 | 25.2 | 12.11 | 13.05 | 365 |
パーカーハネフィン(PH) | 375.47 | 17.4 | 20.87 | 21.82 | 482 |
バルカン マテリアルズ(VMC) | 214.77 | 32.4 | 6.52 | 7.78 | 286 |
マーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM) | 442.78 | 27.5 | 16.06 | 18.40 | 275 |
ユナイテッド レンタルズ(URI) | 412.78 | 10.5 | 39.12 | 42.37 | 284 |
※BloombergデータをもとにSBII証券が作成
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