生成AI関連で業績にはっきりとしたインパクトが出ているのは、いまのところエヌビディアに限られますが、次に成果があらわれやすいのが、企業向けソフトウェアの分野だと考えられます。その中でも、表面化のタイミングの早さとインパクトの大きさで注目できるのはサービスナウと考えられます。
図表1 言及した銘柄
銘柄 | 株価(9/19) | 52週高値 | 52週安値 |
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サービスナウ(NOW) | 572.33米ドル | 614.36米ドル | 337.00米ドル |
エヌビディア(NVDA) | 435.20米ドル | 502.66米ドル | 108.13米ドル |
コグニザントテクノロジーソリューション A(CTSH) | 70.09米ドル | 72.71米ドル | 51.33米ドル |
アクセンチュア A(ACN) | 317.33米ドル | 330.44米ドル | 242.80米ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
生成AIの分野でエヌビディアの次に注目すべきはソフトウェア株ではないかというレポートを2023年7月26日に外国株式特集レポートとして掲載しました。生成AIとの関連性が圧倒的に高いのは半導体のエヌビディアであることは疑いの余地がなく、これは8月24日に発表された5-7月期決算で、実績・ガイダンスとも売上が市場予想を大幅に上回ったことでも証明されたと言えるでしょう。
一方、エヌビディアの株価は年初来3倍以上に上昇したため利食いも嵩んでおり、また、売上をけん引している用途が設備投資関連(生成AIサービスを行うためのデータセンター向け)であることから、どれくらい持続するかわからないとことろがあることもあり、決算後の株価はもみ合いにとどまっています。
アナリストによる目標株価平均値は645ドルまで上方修正されていることから、いずれ株価は上昇基調に戻るとみていますが、やや時間がかかる可能性があるでしょう。そこで生成AI関連で、エヌビディアの次に注目できるものは何かというのが同レポートの主旨でした。
同レポートで取り上げた関連するソフトウェア株の株価の推移は図表2の通りです。今回はこの5銘柄の中から、生成AIに対する取り組みが売上増に最もつながりやすい銘柄と考えられる、サービスナウを詳しくご紹介いたします。
サービスナウに注目するポイントは以下の3点です。
(1)エヌビディアが企業向けソフトウェアの分野で同社を選んだ
エヌビディアは半導体の会社ですが、AIの分野ではソフトウェアに10年以上の投資を行ってきて、ソフトウェアも熟知しています。そのエヌビディアが生成AIの企業による応用を広げるために、サービスナウを選んだ意味は非常に大きいと考えられます。サービスナウはエヌビディアとの提携後も、以下のように提携関係を広げています。
【サービスナウのAI分野での提携】
・5月17日 エヌビディアと生成AI分野で提携
・6月28日 コグニザントテクノロジーソリューションとAIによる自動化の推進で戦略的提携
・7月26日 エヌビディア、アクセンチュアと企業による生成AI導入推進で提携
また、サービスナウは、2021年1月にElement AI Incを228百万ドルで買収しており、生成AIが注目を集める前からAI機能を取り込むことに注力してきた会社であることがわかります。
(2)ドイツのSAPでCEOを10年間務めたビル・マクダーモット氏がCEO
ビル・マクダーモット氏は米国人ですが、米国SAPのCEOからドイツ本社のCEOに昇進した方で、本社CEO(co-CEOを含む)を務めた10年間(2010年〜2019年)にSAPの時価総額は390億ドルから1,560億ドルに増加して、名経営者として知られています。企業向けソフトウェアの業界を熟知した経営者と考えられ、サービスナウでは2019年からCEOを務めています。
サービスナウは企業向けソフトウェアの分野では、オラクルやSAPに比べてまだ規模が小さく頼りなさがありますが、業界大手でCEOを務めた経験者が会社をリードすることは、大きな安心感を生むと言えるでしょう。
(3)2026年に売上(サブスクリプション収入)150億ドル以上を目指す(2022年実績は68.9億ドル)
会社は中期目標として、「サブスクリプション収入を2026年までに150億ドル以上とする」を掲げています。市場コンセンサスでは、年率20%増の高い増収が続くと予想されており、実現可能とみているようです。
株式投資の一番の醍醐味は、キャピタルゲインだと思いますので、経営者に成長する意欲があるかないかが重要なチェックポイントです。年率20%前後の成長が想定されているということで、その面では十分に魅力的な会社と思います。
図表2 生成AI関連のソフトウェア銘柄
※Bloombergおよび各種資料によりSBI証券が作成
図表3 主要な企業向けソフトウェア企業の売上(前期実績、億ドル)
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
〇企業概要
2003年にフレッド・ラリー氏によって創設された企業で、2012年に上場しています。2019年にSAPでCEOを務めた経験のあるビル・マクダーモット氏がCEOに就任、創業者のフレッド・ラリー氏はCTO(チーフテクノロジーオフィサー)を務めています。2018年にはForbes誌の最も革新的な企業の第1位に選ばれています。
過去7年間に四半期のサブスクリプション収入は10倍(2015年1Q〜2023年1Q)、調整後営業利益率は16%ポイント改善(2015年度の10%から2022年度の26%へ)、調整後のフリーキャッシュフローマージンは7%ポイント改善(2015年度の23%から2022年度の30%へ)と、高成長かつ利益率も大きく改善させています。
〇事業概要
企業向けソフトウェアによってワークフローを自動化するサービスを提供しています。ビジネスプラットフォームの「Now Platform」を提供、顧客企業が組織や部門を越えてワークフローを管理できるようにすることを目指しています。
同プラットフォームに載せる製品分野に、「テクノロジー・ワークフロー」「カスタマー&インダストリー・ワークフロー」「エンプロイー・ワークフロー」「クリエーター・ワークフロー」の4つがあります。ガートナー社のマジック・クアドラントでは、ITサービスマネジメントの分野で9年連続「リーダー」のポジションにあると認定されています。
2023年4-6月期の分野別売上構成比は、テクノロジー・ワークフローが58%、カスタマー&エンプロイー・ワークフローが26%、クリエーター・ワークフローその他が16%、地域別構成比は、北米が64%、欧州・中東・アフリカが25%、アジア太平洋ほかが11%です。
顧客は主に大企業からなる7,700社(2022年末)で、年間契約額が百万ドル以上の顧客が1,641社(2022年)あります。競合は、企業向けソフトウェアの分野で世界的大手のSAP、オラクル、マイクロソフト、ワークデイなどです。これら企業と真正面から競合するケースもありますが、同社は各社の企業向けソフトウェアを抱合する“スーパー・プラットフォーム”のポジションを目指しています。
図表4 分野別・地域別売上構成比(2023年4-6月期)
※BloombergデータによりSBI証券が作成
図表5 年間契約額が百万ドル以上の顧客数と顧客当たり年間契約額
注:顧客当たり年間契約額は、年間契約額が百万ドル以上の顧客の平均です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
サービスナウ(NOW) | 時価総額: 1,180億ドル | ||||
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決算期 | 売上高(百万ドル) (前年比) | 純利益(百万ドル) (前年比) | EPS(ドル) | ||
22.12 | 7,245 | 23% | 1,543 | 28% | 7.59 |
23.12予 | 8,908 | 23% | 2,055 | 33% | 9.97 |
24.12予 | 10,832 | 22% | 2,526 | 23% | 12.29 |
25.12予 | 13,188 | 22% | 3,086 | 22% | 15.04 |
株価(9/19): 578.51ドル | 予想PER(23.12期): 58.0倍 |
注:予想はBloombergが集計するコンセンサス予想によります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
〇中期見通し
市場コンセンサスでは、年率20%増の高い増収が続くと予想されています。会社は中期目標として、「サブスクリプション収入を2026年までに150億ドル以上とする」を掲げていますが、市場は達成可能とみているようです。
企業のどのようなデジタル・トランスフォーメーションにおいても欠かせない、ワークフローオートメーションに対する需要拡大の恩恵を受けると考えられます。
また、製品カテゴリーの拡大、高い契約更新率(98%)、約125%のネット・エクスパンション・レート(既存顧客の年間契約額の伸び率)、システムインテグレーターとの提携拡大などによって、業界をリードするオーガニック成長が期待されます。
〇4-6月期決算
4-6月期決算では、サブスクリプション収入が20.8億ドルで前年同期比25%増、売上が21.5億ドルで同23%増、残存履行義務が72.0億ドルで同25%増、年間契約額が百万ドルを超える新規取引が70件で同30%増、年間契約額が20百万ドルを超える顧客が45社で同55%増と、いずれの尺度でも順調な拡大を示しました。
7-9月期のガイダンスは、サブスクリプション収入を前年同期比23〜23.5%増、営業利益率を27%としました。2023年12月期は、サブスクリプション収入を前年比24%増、営業利益率を26.5%として、従来ガイダンスのそれぞれ同23〜23.5%増、26%から引き上げました。
なお、同社は最大15億ドルの初めての自社株買いプログラムを2023年5月に発表しています。
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