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2024-11-12 18:52:31

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【エヌビディアの決定版】 エヌビディアのAIを語り尽くす−2024年4月Update

2024/4/3
投資情報部 榮 聡

今回は昨年6月に掲載した「【エヌビディアの決定版】 エヌビディアのAIを語り尽くす」をアップデートいたします。会社から「2023年にAI計算の4割は『推論』向けだった」という重要情報が出ており、これがエヌビディアの株価にどのようなインパクトを与えるかを解説しています。

図表1 言及した銘柄

銘柄 株価(4/2) 52週高値 52週安値
エヌビディア(NVDA) 894.52ドル 974.00ドル 262.20ドル
アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD) 178.70ドル 227.30ドル 81.02ドル
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

1 「2023年にAI計算の4割は『推論』向けだった」が重要なわけ

今回は昨年6月に掲載した「【エヌビディアの決定版】 エヌビディアのAIを語り尽くす」をアップデートいたします(もし、同レポートを読んでいらっしゃらない場合は、併せてお読みいただくことをお勧めいたします)。

同レポートは、エヌビディアに投資する投資家が知っておくべきことをまとめたものですが、その後3回の四半期決算発表と年次技術カンファレンス(GTC)を経て、新たに重要な情報がでてきました。

最も重要な情報は、11-1月期決算発表で会社が言及した「2023年にAI計算の4割は『推論』向けだった」というコメントで、第1節でこれについて解説いたします。第2節ではエヌビディアの予想EPSと予想PERの推移とこれに関する解釈、第3節では2024年後半に投入される新製品についてご説明いたします。

〇AI計算の「訓練」と「推論」

AIに関わるデータセンターでの計算に、「訓練」と「推論」の2つの種類があります。

AI計算の「訓練」(トレーニング)とは、開発されたAIモデルを大量のデータを用いて使えるモノにすることです。「訓練」ではGPU(画像処理半導体)を使った「アクセラレーテッドコンピューティング」が必須で、これをサーバーのCPU(中央演算装置)で代替することは困難です。

一方、「推論」(インファレンス)は、「訓練」されて使用可能になったAIを利用することです。たとえば、「ChatGPT」に「エヌビディアのGTC2024のハイライトは?」というような質問を投げかけ、これに対する答えを「ChatGPT」が計算して打ち出すのがAIモデルによる「推論」です。

従来のAIでは、「推論」は主にCPU(中央演算装置)で行われ、この段階になるとGPUは必ずしも必要ではありませんでした。しかし、生成AIや大規模言語モデルの登場によって、「推論」でもGPUによる「アクセラレーテッドコンピューティング」が使われるようになったようです。

この結果、2023年のアクセラレーテッドコンピューティング(GPUを利用した加速計算)の約4割は「推論」に使われた、とエヌビディアは推定していると11-1月期決算説明会で述べました。エヌビディアのコメントに対して、アナリストから「それはどうやったら推定できるのか?」という質問が出ましたが、エヌビディアはとにかく推定したと答え、詳細については説明されませんでした。

このため客観的な証拠があるわけではありませんが、AI計算の世界を支配しているエヌビディアは様々な独自情報をもっているとみられ、このコメントに沿って市場は動いていくと考えられます。

〇「推論」4割が重要なわけ

上述の「推論が4割を占める」は、エヌビディアの株価を考える上では、非常に重要です。

図表2はAIモデルが大量のデータによって訓練されて利用できるようになり、その後利用されるときの計算量を、イメージ図としたものです。従来は「訓練:推論=9:1」で想定されていたものが、「訓練:推論=6:4」へ変化したことを極めて単純化して示しています。

「9:1」のときには、新しいAIモデルがどんどん登場する段階ではAI計算の需要は増加するものの、AIモデルの増加がピークをつけたあとは、「推論」の計算量が少ないため、計算の需要が急減する怖れがあることがおわかりいただけるでしょう。

一方、「6:4」となった場合には、AIモデルの増加がピークをつけたあとの需要減少が、「9:1」のときに比べて大幅に緩和されると考えられます。株価は中長期の業績見通しを予想しながら動きますので、AIの計算需要が急拡大する中でも、ピークをつけたあとの減少局面を想像しながら織り込んでいきます。

昨年業績が上方修正されるごとに予想PERがどんどん低下していったのは、株式市場が「9:1」と想定していて、需要の急低下局面に備えていたためと考えられます。しかし、「6:4」が実態であるとすると、予想PERの低下は鈍化する、あるいは、上昇する可能性もあると考えられます。

さらに、AIの利用が本格化しているとは言い難い2023年に推論の比率が4割になっているのであれば、今後AIの利用が本格化する中で推論の占める比率は上昇していくと考えられます。推論向けの計算需要がどの程度拡大するかによっては、ピーク後の需要急落をさほど怖れる必要がなくなる可能性もあると考えられるでしょう。

図表2 AI計算の「訓練」と「推論」の計算量に関するイメージ図

※各種報道をもとにSBI証券が作成

2 エヌビディアの予想EPSと予想PERの推移を精査

第1節の知見を踏まえたうえで、エヌビディアの予想EPSと予想PERの昨年からの推移を、図表3に沿って検証してみましょう。

[1]の期間

「ChatGPT」のユーザー数が1億人を超え、「生成AI」への市場の期待が高まった時期です。

この間エヌビディアの予想EPSには目立った修正はありませんでしたが、生成AIはあらゆる産業が採用する有望技術との見方が強まり、「AI計算の市場を支配するエヌビディアへの恩恵は大きいはず」との判断から買い進められ、予想PERは大きく上昇しました。

この市場の判断は正しく、エヌビディアの2-4月期決算発表で5-7月期に生成AIを要因として売上が急増する見通しが発表されました。

[2]の期間

この期間には2-4月期、5-7月期、8-10月期の決算発表が含まれ、AIコンピュータの需要急拡大を受けて予想EPSは期初の5.9ドルから20ドルへ大幅に上方修正されました。一方、PERは50倍以上から20倍台前半まで大幅な低下となり、株価は概ね横ばい圏での推移となりました。

業績拡大はポジティブに評価するものの、(1)AIコンピュータの需要拡大がいつまで続くかわからない、(2)AIサービスを始めるための「設備投資」であるため、投資一巡後の需要低下に対する懸念があった、(3)エヌビディアのGPUが奪い合いになっているとされたため、足もとの発注には仮需が含まれているのではとの懸念があった、などが予想PERの低下につながったと考えられます。

[3]の期間

この期間は半導体株全体が買われた時期で、PCやスマホ向け半導体の在庫調整が進み、2024年には半導体市場の回復が期待できることを織り込んだとみられます。

エヌビディアのAI計算需要はそのような半導体市場全体の動きと、さほど関連性が大きいとは言えませんが、2023年の後半に利益確定売りから予想PERの低下が行き過ぎた反動が起きたと考えられます。

[4]の期間

第1節でご説明したように、11-1月期決算でエヌビディアが「AI計算の4割は推論に使われている」との情報を受けて予想PERはジリジリと上昇しています。決算が発表された2/21(水)の予想PERは30.1倍でしたが、4/1(月)には36.7倍まで上昇しています。

米国の機関投資家でも「推論4割」のインプリケーションを直ぐに理解できる人は少ないと考えられ、そういう意味ではその理解が進むにつれて意外高の可能性もあると指摘できるでしょう。アナリストの目標株価平均値は、4/2(火)時点で978.27ドルです。

図表3 エヌビディアの予想EPSと予想PER

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

3 新製品の「Blackwell」で地盤を強化

3/18(月)から3/21(木)にかけて開催された、エヌビディアの年次技術カンファレンスGTC(GPU Technology Conference)で、GPUの新製品「Blackwell」が発表されました。現在主力となっている「Hopper」を更新するものです。

「Blackwell」の能力を「Hopper」と比較するための指標として、トランジスター数は2,080億個対800億個と2.6倍以上となっています。AIに関連する一般的な処理では5倍、特にAIの「推論」では30倍の能力をもつと説明されています。今後AI計算の処理で重要性を増す、「推論」の処理速度をあげるための新製品と考えられます。

過去を振り返ってみますと、2016年に初めてのAIコンピュータを販売したときの「Pascal」(初号機はオープンAIに納入されています)では計算速度は19TFLOPSに過ぎませんでしたが、2024年に投入する「Blackwell」では20,000TFLOPSと、計算処理能力は8年間で1,000倍に拡大していることになります(図表4)。

フアンCEOは、「従来言われていた『ムーアの法則』が限界に達している一方、コンピュータの処理速度はGPUのアクセラレーテッドコンピューティングで進歩している」とよく言いますが、まさにそれが表れていると言えるでしょう。

2個の「Blackwell」GPUとCPUの「Grace」で「GB200」と命名されるスーパーチップを構成し、これによって数兆パラメータ(「パラメータ」は機械学習モデルが最適化する変数)までの大規模言語モデルによるリアルタイム生成 AI を構築および実行できます。

「Blackwell」は今年後半から提供され、Google、メタ、マイクロソフト、オープンAI、オラクル、テスラ、xAI(マスク氏のAI企業)、アマゾン傘下のAWS、デルなど、AIの主要大手がこぞって採用見込みです。

AIコンピュータ市場には、AMDが2023年10-12月期から商用モデルで本格参戦しており、今年どのような成果があがるか注目されていますが、「Blackwell」は急拡大するAIコンピュータの市場でエヌビディアがさらに強固な地盤を固めた印象を与えたとみられます。

図表4  同社GPUの計算能力推移

注:「TFLOPS」はコンピュータの処理速度をあらわす単位の1つで、1秒間に実行できる浮動小数点演算が1兆回であることを示します。
※会社プレゼンテーション資料をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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