来週の株式見通し(2014/7/28〜8/1)
来週(2014/7/28〜8/1)の日経平均株価の予想レンジは14,800円-15,800円。企業決算に対する株価の反動にやや警戒感はあるが、このところ売り込まれた証券株やメガバンク株のリバウンド余地が高まっており、それらの上昇が市場全体の下支え要因となる公算が大きい。地政学リスクに対する市場の反応も次第に限定的になってきた様子だ。7/24に発表された中国7月HSBC製造業PMI(速報値)は52.0(予想51.0)まで回復し、4カ月連続の改善となった。欧州の景気減速懸念からユーロが軟調な点は気掛かりだが、金融緩和期待の高まりを背景に現時点では売られる要因ではなさそうだ。月末恒例のドレッシング買いなどが入る可能性もある。
米国市場では、S&P500は過去最高値を更新。イエレンFRB議長がバイオテック銘柄やソーシャルメディア銘柄などのいわゆるモメンタム銘柄をやや割高と指摘したことで下げる場面もあったが、NASDAQは切り返しが早く、むしろトレンドが強化された可能性がある。
ただ、東京市場は米国市場が堅調でも目の覚めるような上げ幅でもないと、序盤は好感するも戻り売りに屈してしまう相場展開が続いている。円高バイアスが上値を阻んでいるとの見方もできるが、トヨタ自動車が決算を発表する8月第1週までは、業績面での選別物色の流れが続くかもしれない。
8月相場の過去15年間(1999〜2013年)は日経平均の騰落実績で6勝9敗と負け越し。相場の上昇局面では、良好な企業業績・景気指標、政治や金融政策の好転を背景に海外投資家の買いが入るという構図だったが、下落局面では景気減速懸念などからハイテク主導の下落となる構図で両極端の様相を呈している。
また、「45日ルール」と称される海外ヘッジファンドによる換金売りが出やすいとの見方が手控え要因になる可能性もあろう。投資家が9月末にファンドを解約するには、45日前(8月中旬)までに申し出なければならないルールがあるためである。ただ、そうであっても相場の方向性により売りインパクトが限られるほか、必ずポジション調整の売買をするとは限らない。8月は市場参加者が少なく薄商いとなりやすいだけに、振れの大きさが噂を先行させるケースなどもあり、過度に懸念する必要はない。
高値警戒が日増しに強まる米国株と日本株の連動性をどうみるかが重要である。ダウ平均は短期的には17,200ドル前後の節目を超えられるかが焦点だ。日経平均株価の7月高値15,437円を超えられるかと同等の意味をもつだろう。しかし、ダウ平均の直近20年間(1994年-2013年)の月間平均騰落率をみると、12カ月中で8月のパフォーマンス(-1.04%)が最も悪い。
来週の米国では、FOMC(〜30日) 、米4-6月期 実質GDP(7/30)、米7月雇用統計、米7月ISM製造業景況指数(8/1)の発表など、重要なイベントが予定されている。ISM製造業景況指数(図表1)や雇用統計で公表される非農業部門雇用者数(図表2)などは事前予想も上昇基調にある。が、7月までに発表された経済指標は軒並み好調が続いただけに、その反動が出る可能性もあり注意が必要だ。5年間上昇を続けたダウ平均がいったん調整に入ると、日本株も悪影響を免れることはできないだろう。
図表1:米・ISM製造業景況指数(日足、2010/1〜2014/6)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
図表2:非農業部門雇用者数(雇用統計、2010/1〜2014/6)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
国内の経済指標やイベントでは、6月失業率・有効求人倍率、6月家計調査(7/29)、6月鉱工業生産(7/30)、7月自動車販売台数、黒田日銀総裁が内外情勢調査会で「最近の金融経済情勢と金融政策運営」について講演(8/1)などが重要。
決算発表では、JSR、日産自、ニッセンHDなど(7/28)、ガンホー、OLC、日立金、コマツ、日立建機、日精工、オムロン、日野自、ホンダ、シマノ、HOYA、東エレク、大和証G、野村、JR東海、JAL、H2Oリテイル、MonotaRO、クラリオンなど(7/29)、JT、野村不HD、コロプラ、大日住薬、富士フイルム、コニカミノルタ、JFE、三菱電、NEC、カシオ、川重、任天堂、三井住友、アコム、オリックス、JR東日本、ANA、KDDI、関西電、コロプラ、アンリツなど(7/30)、大東建託、三越伊勢丹、王子HD、第一三共、ヤフー、JX、TOTO、新日鉄住、ミネベア、日立、東芝、富士通、エプソン、パナソニック、ソニー、TDK、京セラ、村田製、日東電工、三菱重、マツダ、富士重、リコー、三菱UFJ、りそなHD、みずほFG、三菱地所、ヤマトHD、商船三井、東京ガス、NTTデータ、ベネッセHDなど(7/31)、シャープ、旭化成、イビデン、三菱ケミHD、武田、アステラス薬、ツムラ、セガサミーHD、曙ブレーキなど(8/1)などが注目される。
海外の経済指標やイベントでは、米6月中古住宅販売仮契約(7/28)、FOMC(〜30日) 、米5月S&Pケース・シラー住宅価格指数、米7月CB消費者信頼感指数(7/29)、米7月ADP雇用統計、米4-6月期 実質GDP(7/30)、米7月シカゴ購買部協会景気指数(7/31)、中国7月製造業PMI、米7月雇用統計、米6月個人所得・個人支出、米7月ミシガン大学消費者信頼感指数改定値、米7月ISM製造業景況指数、米6月建設支出、米7月自動車販売台数(8/1)などが注目される。
米企業決算は、UPS、コーニング、メルク、ファイザー、アメリカン・エキスプレス、ニューモント・マイニング(7/29)、スプリント(7/30)などが発表を予定している。
日経平均株価は4月安値13,910円で調整が一巡し、1996年6月高値(22,666円)を起点とした右肩下がりの長期の上値抵抗線を上抜けられるかが焦点となる。2013年12月高値16,291円を付ける過程で一時的に上抜ける場面はあったが、4月安値まで売られる過程で下回り、7月に入ってからの高値はその長期の上値抵抗線に頭を抑えられている。上抜けることができれば、13年5月高値15,627円を起点に 13年12月高値を通る右肩上がりの上値抵抗線に向け、上値余地が広がる公算が大きい。上値メドは大体17,155円前後とみている。時間をかけずに上回ることができれば、07年7月高値(18,261円)に向けて一段と上昇余地が広がる公算が大きい。
一方、短期的にリスクがないわけではない。長期の上値抵抗線を超えられなければ、2013年6月安値12,445円を起点に4月安値を通る右肩上がりの下値支持線まで押し戻される可能性が高まる。下げ止まらず4月安値をも下回るようだと、2013年6月安値に向け下落余地が広がる公算が大きい。
図表3は、週足の日経平均株価である。一目均衡表上で遅行スパンが好転(その当時の株価を上回る)できれば、来週は一段高につながる公算が大きい。基準線が下げ止まり、転換線の上昇が続く。遅行スパンの好転と転換線の上昇により株価が押し上げられる展開などを想定し、主力株のリバウンドを意識した戦略もよい。逆に、遅行線が当時安値を付けたタイミングに入ってくるため、足元も基準線(14,687円)までいったん調整を入れる可能性もある。
図表3:週足の日経平均株価 (週足、2013/1〜2014/7/24)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の注目銘柄(2014/7/22〜7/25)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット株価(円) |
注目ポイント |
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3593 |
6,500円 |
5,580円 |
医療用不織布の最大手。消費税駆け込みの反動を受けるも、「オペラマスター」は順調に推移。15年3月期の第一四半期は前年同期比0.3%増収、4.4%営業減益で着地した。今期は「手術管理システム」の提案を強化。「内視鏡操作システム」は今期上市予定。純利益は過去最高益を見込む。株価は6月高値(5,690円)を更新し、じり高基調続く。月足の一目均衡表では8月相場は基準線が上昇する公算が大きく、2013年5月高値6,660円に向けてトライあるか。ターゲット6,500円、ロスカットは5,580円 |
|
6755 |
1,450円 |
1,140円 |
エアコンが主力。南欧の需要回復に加え、中東・アフリカでは建設プロジェクト向けの需要増加とリテール向けに販促強化。北米においても政府や電力会社の補助金対象となる省エネ性能の高いルームエアコンの拡販に努める。情報通信システムの増収効果に加え、全社的なコストダウンや費用効率化も。株価は上場来高値(1,460円)更新に向けて順調にトレンドフォロー。信用売り残・買い残とも低位で安定しており、もち合い上放れには追い風。日足の一目均衡表の基準線上昇で動意付けるかに注目したい。ターゲットは1,450円、ロスカットは1,140円 |
|
8020 |
240円 |
164円 |
電子・食糧などが柱の専門商社。創業125周年。前期は鉄鋼・素材・プラントが業績下支え。今後は北米シェール市場やモバイル分野回復に向け強化へ。前年度からスタートした中期経営計画は順調に進展し、財務改善は着実。最重要課題の復配も実現。M&Aに意欲的。株価は高値圏で強含み。月足の一目均衡表では遅行スパンが抵抗帯を上回り、強気継続サインへ。26週移動平均線の下落基調が止まれば、株価持ち直しは時間の問題か。ターゲットは240円、ロスカット164円 |
|
8316 |
5,000円 |
3,940円 |
大手金融グループ。傘下に三井住友銀行やSMBC日興証券。収益率は大手行でトップ級。貸し出し金の収益は国内低迷だが、海外拡大で補完。アジアでの商業銀行業務拡大へ。航空機ファイナンス事業も強化。株価に値ごろ感あり。週足ベースの一目均衡表で抵抗帯を下回るが、三週目で下げ渋っている。信用買い残の増加は上値の重荷となるも、直近のギャップ埋め(4,100円)なら反騰開始のサイン。6月高値4,480円を上回れば二番底が完成する。ターゲットは5,000円、ロスカットは3,940円 |
|
9735 |
6,900円 |
6,080円 |
警備サービス最大手。賃貸センサー付きシステム警備が主力。法人向けや家庭向けに契約件数は上積み。今期も最高益更新見込み。在宅医療なども展開。海外も強化へ。海外投資家の持ち株比率高い。株価は2005年高値6,470円を上回り、一段と上値余地が広がった公算が大きい。長期的には2003年安値2,655円からの上昇に対するE計算値1万円処もありえる。短期的にも高値圏で強含み、一目均衡表では遅行スパンが好転し、6月高値6,502円奪回に向け上昇期待高まる。ターゲットは6,900円、ロスカットは6,080円 |
- 出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・ 東証1上場銘柄で7/23現在、時価総額が500億円以上、PER20倍以下、PBR2.5倍以下、予想配当利回り1.0%以上、今期増収予想(東洋経済予想)の中から、短期的な売られ過ぎや話題性、需給面などを考慮してピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。