来週の株式見通し(2016/11/14〜11/18)
来週(2016/11/14〜11/18)の東京株式市場は堅調か。日経平均株価の予想レンジは17,200円-18,200円。11/9のトランプショックによる下げ幅の倍返しの展開が予想される。
国内企業の決算発表が一巡し、国内発の材料に乏しい週となる。週明け寄り前に7-9月期の実質GDPの発表があるが、米大統領選挙後の材料としての役不足感は否めない。むしろ、トランプ効果による世界株高のムードが残り、ポジティブな方向にボラティリティが高まる公算が大きい。緩む場面では日銀によるETF買いがあることが心理的な支えとなり、大きなイベント通過で売り圧力が弱まることが予想される。円安基調が維持されていれば、決算発表後のアナリスト評価によって反発基調を強める銘柄が続出する可能性が高そうだ。
海外の経済指標では、足元やや景気認識が上方修正されている中国の10月鉱工業生産、10月小売売上高、10月固定資産投資(11/14)などに注目。12月のFOMC(連邦公開市場委員会)までは約1カ月あるが、10月小売売上高、11月NY連銀製造業景気指数(11/15)、米10月鉱工業生産・設備稼働率(11/16)、米10月住宅着工件・建設許可件数、米11月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数(11/17)、米10月CB景気先行総合指数(11/18)など、米国の景気認識を左右する重要指標が多く、上昇基調を強める米長期金利やドル円などに影響する可能性が高い。
ただ、前回指摘したように、日経平均株価とドル円に短期的に強い連動性が出てくるかどうかは微妙だ。10月に発表された9月小売売上高(図表1)は前月比0.6%増と市場予想と一致し、9月の雇用統計で弱まった利上げ期待が再び強まるきっかけとなり、米長期金利が上昇を強めた。足元、トランプ効果で金利上昇が加速し過熱感が強く、弱い経済指標の結果には金利急低下で反応する可能性が高い。そうなるとドル円の上値を抑える要因になる。
つまり、物色動向は米金融株が上昇基調を強めるなか、国内の銀行株が注目されやすい。メガバンクの決算発表も予定されている。また、今回の国内企業の4-9月期決算で好調な食品、建設、通信などの内需株が先行して買われる展開が予想される。内需株優位に先に戻していき、12月に向け後ずれして円安とともに輸出関連株が戻す流れが想定される。
図表1:米小売売上高(2015/1-2016/9)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
米大統領選挙はトランプ候補の勝利に終わった。大統領が誰になっても、長期の景気循環は大きく変えることはできないだろう。ただ、11/9の東京株式市場は結果が明らかになるにつれて、株、為替ともに乱高下したように、目先的には不安定な余韻が残りそうだ。
一方、トランプ大統領誕生でダウ平均の史上最高値更新を通じ、当面は上昇基調が続く可能性が高まったのではないかと思われる。一国のトップが変わる、世界のトップが変わるということは、いろんなことが変化することになるため、短期的には経済を押し上げる効果が高く、その期待値が先行しやすいからだ。来年迎える債務上限問題や景気対策の法案なども共和党主導で敏速に進めることが可能である。外交政策に懸念はあるにしても、そもそも人種の違いや考え方が違うため、いずれにしても難しい問題である。一方、クリントンがもし当選していたら、おそらく市場のポジティブな反応は限定的だったと思われ、期待値はここまで高まらなかっただろう。
この先、当面トランプねた(言動)に市場が気をとられているうちに、FRB(連邦準備制度理事会)は市場の混乱を気にすることなく、12月に利上げをしやすくなる。
今、米国株式市場で比較的元気なのは、ダウ輸送株である。米主要指数がブレグジット直後につけた6/27安値からみると、半導体株指数、銀行株指数に続いて上昇率が高い。ダウ平均の調整が続くなか年初来高値更新が続いており、短期的にはダウ輸送株の方が上昇しやすい株価パターンになってきたようだ。
図表2は、ダウ輸送株をダウ平均で割った相対株価を示したものである。もうひとつは日経平均株価である。相対株価がやや日経平均株価に先行する動きがみられるなかで、相対株価が約3年半の安値の周期(2001.10→2005.6→2009.3→2012.9→2016.1)となる今年の1月安値から、3月につけた0.46倍の戻り高値を上回れば、日経平均株価も同じように底打ちムードがいっそう強くなる公算が大きい。
図表2:米相対株価と日経平均株価(2008/1/4-2016/11/9)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
日経平均株価(図表3)は11/9の急落で9/27安値(16,285円)や8/4安値(15,921円)から形成される下値支持線を下回る展開となったが、11/10には早々に急反発で切り返し、25日移動平均線(17,079円、11/10現在)上を回復した。11/10の急反騰でスパイクボトムのような値動きとなり、むしろ6/24安値(14,864円)を起点とした上昇波動が強化された可能性が高い。大陰線の高値(17,427円)を終値で上回ることができれば、4/25高値(17,613円)を一気に上回る展開が想定される。4/25高値を上回ることができれば市場全体の売買代金も増加することが見込まれ、昨年12/15安値(18,562円)あたりまで上昇余地が広がる公算が大きい。
一方、短期的には不安定な動きをこなしながら、17,500円処のフシを前にしたもみ合い相場なども十分にありえるだろう。ただ、11/10の大陰線形成時の出来高急増が強力な下値サポートになることが予想され、もみ合いを下放れることはなさそうだ。
ただし、これはメインシナリオである。4/25高値を上回れず、8/4安値(15,921円)から形成される下値支持線をもう一度下回る、あるいは11/9安値(16,111円)を下回れば15,500円処まで下げるだろう。
図表3:日経平均株価の日足チャート(2016/1/4-2016/11/10)
- 出所:BloombergよりDZHフィナンシャルリサーチが作成
来週の主要な国内経済指標の発表は、7-9月期実質GDP(11/14)、10月首都圏新規マンション発売、5年国債入札(11/15)、10月訪日外客数(11/16)、20年国債入札(11/17)、10月日本製半導体製造装置BBレシオ(11/18)がある。
企業決算の発表は、光通信、住友ベ、浜ゴム、DIC、京都銀、住友不、東映、北越紀州、電通、そーせい、日本郵政、かんぽ、ゆうちょ、みずほ、アイフル、ソニーFH、サイバダイン、三住トラスト、第一生命、三菱UFJ、三井住友FG(11/14)、ネクシィーズG、日賃貸、あおぞら(11/15)、東京海上、MS&AD(11/18)などが予定している。
一方、海外の経済指標の発表やイベントでは、中国10月鉱工業生産、中国10月小売売上高、中国10月固定資産投資(11/14)、ユーロ圏7-9月期GDP改定値、独7-9月期GDP、独11月ZEW景況感指数、米10月小売売上高、米11月NY連銀製造業景気指数、米10月輸入物価指数、米9月企業在庫(11/15)、英10月失業率、米10月生産者物価指数、米10月鉱工業生産・設備稼働率、米11月NAHB住宅市場指数(11/16)、米10月消費者物価指数、米10月住宅着工件・建設許可件数、米11月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、米10年インフレ連動国債入札、APEC閣僚会合(〜11/18 リマ)(11/17)、米10月CB景気先行総合指数(11/18)などが注目される。
米企業決算の発表は、トランスダイム・グループ、アドバンス・オート・パーツ(11/14)、ホーム・デポ、TJXカンパニーズ、アジレント・テクノロジー(11/15)、ターゲット、シスコシステムズ、Lブランズ、ネットアップ、ロウズ(11/16)、ベストバイ、ウォルマート・ストアーズ、アプライド・マテリアルズ、セールスフォース・ドットコム、ギャップ(11/17)などが予定している。
マザーズ市場では11/18にフィル・カンパニー(3267)が上場する。駐車場上部の空中店舗の開発を支援を手がけている。コインパーキングなどの駐車場を運営するオーナーに対し、空中店舗「フィル・パーク」の企画・デザイン・プロジェクトマネジメント業務、開発調査業務、設計・監理業務、工事請負業務、事業コンサルティングや初期テナント誘致などをワンストップで提供している。
来週の注目銘柄(2016/11/14〜11/18)
銘柄 |
銘柄名 |
目標株価(円) |
ロスカット |
注目ポイント |
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2340 | 1,200円 | 680円 | スーパー銭湯「極楽湯」を展開する。中国でのビジネス展開が絶好調。ただ、10/28に発表された上期決算は市場の失望を招いた。連結営業利益が前年同期比2.4倍の4.8億円と大幅増益ではあったものの、第1四半期からはほとんど伸びておらず、経常利益、純利益に関しては第1四半期比で減少したことが嫌気された。ただ、銭湯の需要増加が期待できるのは、気温が低下する秋から冬にかけてであることを考えると、この押し目は買いだろう。成長著しい中国において武漢に海外3号店がオープンしたことも買い材料。 株価は10/4高値(1,474円)から形成した陰線かぶせ足が調整のきっかけとなったが、25日移動平均線までの戻り高値を形成後に二段下げの局面だ。しかし、下値のフシとなりやすい800円前後から下ヒゲ足を形成しており、値ごろ感からの反発を見込みたいところだ。ターゲットは1,200円、ロスカットは680円 | |
3193 | 4,500円 | 2,390円 | 居酒屋焼き鳥店「鳥貴族」の運営。280円均一が基本コンセプト。上場に加え、マスコミ露出で知名度向上。月次売上も堅調に推移している。11/7に発表した10月度は直営店の既存店売上高が前年同月比1.2%増となった。低価格志向ニーズを追い風に勝ち組の評価は高い。新規出店は下期に偏る傾向があり、今後は関東圏を中心に出店を進めていく方針。株価は出来高増加を伴い上値抵抗線を強気にブレーク。連続陽線によって13週移動平均線が26週移動平均線を上回るゴールデンクロスを示現し、押し目があれば積極買いのスタンスで望みたい。視野に入った上場来高値3,180円を上回れば、下げの倍返し4,500円処まで上値余地は拡大する公算が大きい。ターゲットは4,500円、ロスカットは2,390円 | |
5631 | 2,250円 | 1,870円 | 11/7発表の上期決算では連結営業利益が前年同期比46.5%増の73.5億円と、従来計画50億円を大きく上回って着地。産業機械事業で、樹脂製造・加工機械、レーザーアニール装置の販売が増加したほか、コスト改善も寄与した。しかし、決算を受けた翌11/8の株価は12%安と急落した。通期計画の据え置きが失望を誘った可能性が高いが、同社はその前の四半期の連結営業利益が同6.7倍と業績が著しく改善していたぶん、期待値も高まっていたものと思われる。ただ、足元は決算銘柄のボラティリティが高まっており、決算直後の株価の反応は鋭角的となりやすい地合いである。同社の決算を受けた初動の反応は明らかに売られ過ぎ。しかも、トランプショックの下げも圧力として加わっており、その反動が短期的に見込めそうだ。通期見通し据え置きとはいえ、計画に対する進ちょくは61.2%と高い。ターゲットは2,250円、ロスカットは1,870円 | |
6312 | 1,790円 | 1,430円 | 医薬品生産向け機械装置を手掛ける。コーティング装置の国内シェアは首位。ジェネリック医薬品メーカーによる設備投資増加は追い風となる。内部留保と株主還元にバランスあり。高齢化社会を背景にディフェンシブ性とバイオ成長性を兼ね備えている。海外事業は中東向けやブラジルをはじめとする南米向けが苦戦している一方、北米向けは底堅い。株価は今年に入ってから急伸。過熱感はあるが、成長性を考慮すればPERに特に割高感はない。10月高値(1,875円)を起点に連続陰線で一気に75日移動平均線割れまで調整した。1,800円処までのリバウンド狙いでも十分な利幅が見込めそうだ。ターゲットは1,790円、ロスカットは1,430円 | |
6875 | 2,500円 | 1,820円 | カスタムLSIなどの提供をファブレスで展開する。10/28に上期の決算を発表。従来計画では6億円の営業赤字予想であったのが、3,000万円の赤字にとどまった。売上高も計画を超過達成したことを受け、決算発表後の10/31の株価は急伸した。ゲームソフト向けの格納用LSIの需要が堅調に推移している。任天堂銘柄として動意づくこともあるが、株価は今夏以降強い動きが続いている。10月は調整色を強めたが、決算確認で大きく上に振れたことを受け、上昇再開のタイミングと判断したい。株価は2011年以降の戻り高値を一気にクリア。2,000円台前半の高値のフシが視野に入ってきた。相場全体の不安定な動きが予想されるなか、高値もみ合いを続けられる実用のある部類だろう。一目均衡表では抵抗帯(雲)上方で推移しており、出直りは早そう。直近の信用倍率は0.12倍と極めて低く、需給妙味もある。ターゲットは2,500円、ロスカットは1,820円 |
出所:DZHフィナンシャルリサーチが作成
- 注目銘柄採用基準・・・ 東証上場銘柄で11/9現在、時価総額が100億円以上、PBRが6.0倍以下、配当利回りが0.3%程度以上、200日移動平均線が上昇基調にあり、株価が5日移動平均線を下回っている中から、テーマ性、話題性などを考慮してピックアップした。
- 「目標株価(円)」・・・一目均衡表分析の値幅観測やフィボナッチ、株価の過去の節目などを基準に総合判断。
- 「ロスカット株価(円)」・・・一目均衡表や移動平均線、株価の過去の節目などを用い総合判断。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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